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#キン曜日はキンブリーデー 提出用
バレンタイン目前なのでそういう話

* * *


「バレンタイン、ですか。」
「私も聞いた話でしか知らなかったが、遂にこの国にももたらされたようだな。」
 雪もちらつく2月のアメストリス。国軍庁舎の一室にて、1組の男女が神妙な面持ちで会話をしていた。
 とある東の島国では、2月14日を“バレンタインデー”と称し、女性が意中の男性にチョコレートを贈る、という。アメストリスには全く縁のない文化であったが、シン国との国交が盛んになった現在、その他東の国々との交流も芽生えている。そんな中で突如波及した若者好みするイベントに、アメストリス中が色めき立っていた。
 一方でその流れについて行けず困惑する者も一定数いる。国軍中将の苗字名前と、その部下ゾルフ・J・キンブリーもまたその一定数側であった。
「母の故郷の文化だから、おいそれと馬鹿にすることも出来ないが…なんというか、平和だな。」
「まったくです。今朝私も庁舎に入った途端に女性から小包を頂きましたが、そういうことでしたか。」
「これはこれは、色男様は違うねぇ。」
「茶化さないでください。」
 おおよその仕事が済んだ午後4時。日はまだ高く、春が近いことを感じさせる。それでいて気温はまだ2桁を見ることはなく、鼻の先が冷える感覚がもの悲しい。
「少し遅めのティータイムでもするか?」
「いえ、見知らぬ人間から渡された物を口にするのは危険ですから。」
 ごとん。
 断絶の音が、彼の足下のゴミ箱とぶつかって響いた。
 好意もただでは手に入らないというのに、愚かな男だ。そう名前は思ったが、口には出さない。出したところでキンブリーの価値観が覆るほどの決定的な一撃など、今の名前にはないのだ。
「気の毒だなあ。」
「しかしそれなりに可愛らしい方でしたから、なにも私でなくても、じきにいい人が見つかるかと思いますよ。」
「いや、男を見る眼がないことが、ね。」
 名前のその言葉に、どの口がそれを言うのか、とキンブリーは問い詰めたくなった。
3月の君にスターチスを贈ろう

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