葡萄染
視界がクラクラとする、それなのに何故だか不快感はなくて、支えてくれる腕に身を預ける。
私の体も熱かったが、支えてくれる腕も熱かった。
火照る体を感じながら、私はゆっくりと目を閉じた。



久しぶりに立海のテニス部メンバーで集まろう、と飲み会が開かれた。
幹事は柳くんで、スケジュール決めから会場決めまでスムーズに行われ、皆が揃い、それはもう盛り上がった。
まるで会っていなかった期間があるなど思えないほど、中学の時の様に騒いだ。
みんな成長して大人になっていてかっこ良さを増していた。それなのに中身は相変わらず変わらないままで、笑い合った。

お酒が強くない私は、始めはセーブして呑んでいた。ちゃんとお水も飲んでいたし、ゆっくりと呑もうと心掛けていた。
けれども、飲み会が進むうちに、女でビールや日本酒呑めるのは珍しい(多分みんなの前で女の子は遠慮して飲まないだけだと思うんだけれども)と、みんなに進められるがままに呑んでしまった。
そうして呑んでいるうちに、水を飲むことも忘れ、ただただ楽しんで飲み続けてしまった。
柳くんや真田くんと呑む日本酒や焼酎は美味しいものだったし、柳生くんのおすすめしていたワインも美味しかった。
調子に乗って、赤也くんとテキーラのショットまで呑んでしまった。

幸い、酔っても吐かない体質であり、彼らに迷惑をかけずに済んだと唯一思っている部分である。
酔ったからと変に騒いだり泣いたり笑ったり怒ったりもしない。
そういう部分では大丈夫なのだが、体の力が抜けてしまうのだ。
ふらふらとしながらも歩けるうちはいいのだが、より酔うと、ほんとに立てなくなる。
…そんなこんなで、調子に乗った結果、立てなくなってしまったのだった。
飲ませた自分達が悪い、と言う彼らに、申し訳ない気持ちになった。
「ごめんれ」そう呂律の回らないまま言うと、幸村くんに頭を撫でられた。
そしてそのまま、「名前は俺が送っていくよ」と彼に支えられながら立ち上がって、皆に再び謝ったあと、柳くんが電話でタクシーを呼んでいる声を聞きながら、彼の腕のなかで瞼を落としたのだった。



ふ、と目を開けると、そこは知らない部屋だった。
「起きた?気分はどう?気持ち悪くない?」
私が目を覚ましたことに気が付いた幸村くんに、問いかけられる。
部屋着になっている彼を見て、ああここは彼の部屋なのか、と気がつく。
「ん…ちょっと寝たから大丈夫、でもまだ体に力入らないかも…」
私がそう答えると、「水を飲んだ方がいいね」と別の部屋に消えた。
クラクラしてる感覚は、もう消えていた。
ただ、火照った体と、力の入りにくさがまだ残っている。
体を沈めている布団から、幸村くんの香りを感じて、なんだか余計に火照る。
水を手に戻ってきた幸村くんが何かを言う前に、私は言う。
「幸村くん…体が熱い」
「まだお酒が残ってるのかな」
コップを一旦置いて、私を起き上がらせそうと回された腕に、次の言葉を言うかどうか迷う。
少しだけ戻ってきた理性が邪魔をする。
けれども、気付けば私は彼にキスをしていて、腕を回していた。
幸村くんは、今まで見たことのないような妖艶な笑みをして、私を抱き直すと、どちらからともなく、深い、キスをするのだった。
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