濃鼠
どうしたら彼女に伝えることが出来るのか。すっかり眠り込んでいる名前を抱きしめながら、思う。
好きだから、抱きたいと思う。男としては当然の感覚である。世の中には確かに性欲だけで抱く男もいるが、それは一部の人間で。
少なくとも俺は、好きでなければ、愛してなければ、抱きたいとは思わない。
幾度となくその思いは伝えてきたつもりである。
けれども、それでも彼女の中の不安を完全には消してあげることは出来なくて。
それがどうにも、やるせなくて。
もっと早く出会って、彼氏になって、…初めての相手になれていたら。違ったんだろうか、なんて思う。
心の中に溜まったものを吐き出すようにため息をつけば、名前が身動ぎした。
俺に背を向けるように姿勢を変えたその身体を、起こしてしまったかと眺めていたけれども、変わらず規則的な寝息が聞こえてきて、俺は静かに息を吐いた。
空いた隙間を埋めるように、後ろから名前を抱き締める。
ぎゅっと、少しだけ力を入れた。
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