俺なりの行動!





昨日の夜ずっと考えていた。
でも、その考えていたことは俺の小さな脳みそでは解決出来ないようなことだ。
いや、俺だから解決できねーんだろうな。

きっとこれが幸村部長なら笑って安心させられる。
真田副部長なら葛を入れつつもお互いに悩む。
柳先輩ならあらゆるデータを調べ尽くして答えをくれる。
仁王先輩ならおちゃらけながら相手をからかいつつ場を柔らかくしてくれる。
柳生先輩なら相手を不安にさせることなくフォローをする。
丸井先輩なら食えねーのにうまいもんくわしてやる!って必死に慰める。
ジャッカル先輩なら同じように考えて、優しく笑ってくれる。

先輩たちがしてくれることなら沢山思い付くのに俺の出来ることが思いつかねぇ。
俺がしたいことじゃなきゃ意味がねーから、余計に他人と一緒じゃいけねぇ。
俺ってなにが出来るんだ…?なんて情けなくなる気持ちをもって俺は就寝するのだった。


********


朝、今日から昨日の罰で始まった鍵開けがあるため、必死に苦手な早起きをした。
けど実際は色々と違う理由が有るために起きたのも事実。
普段の俺じゃありえない5時30分という時間に起きて慌てて準備をして家を飛び出る。
走りながら思うことは、昨日の夜必死に色々考えたこと。
結局、俺なりの答えは出なかったんだけど。
けど、どうしたいかだけはでてきたんだ。
走りながら笑う俺は一体他人にはどう見えてんのかな?

6時。
普段じゃ有り得ないほど早い時間に部室に着いた俺。
当然鍵を開けるために来たのだから一番乗りじゃないと困る。
じゃなきゃ、真田副部長がまた「たるんどる!」って怒鳴っちまうからな。
って鍵を開けたのはいいけど先輩たちを待つ間なにをすればいいんだ。
暇過ぎて困っていれば普段なら絶対に進んでやらないようなことが思い付いた。
いや、別に一年の頃はやっていたからなんの不思議なことじゃねーんだけど。
二年に成ってからっていうのがみそなんだよな。


「…………(たまには…してもいいよな)」


普段の俺なら「えーっ!!!」とか言って絶対にすることはないけど、あの梅林先輩のことを思うとやろうっていう気持ちになる。
別に先輩が言ったとか、好きになってほしいとかじゃなくてただ…先輩がやりたいことをやり残したことが後悔だって言っていたから、俺もそうなりたくないだけだ。
いつもめんどくさいとか思ってたけど、こう考えると一つ一つ大事なことなんだよな。
そう思っちまえば嫌なことなんかなくて、早速それに取り掛かった。
ホウキを持って昨日したように床を掃いていく。
かといって昨日も掃除したから汚くはないんだけどな。
それが終わったら次はボールをコートへと運んでいく。
運びながらわかったことは、一年の頃俺は遅刻が多くてろくにこういったことしていなかったということだ。
ってことは…こんな罰も悪くないよな。(もちろん真田副部長の説教と鉄拳制裁は嫌だけどな!)


「赤也?」

「あ!幸村部長、真田副部長、柳先輩!おはようございます!!」

「これ、全部赤也がやったのかい?」

「そうっス!!」


あまり時間なんて気にしてなかったから後ろに幸村部長たちがいたことには驚いてしまった。
だけど、そんな俺の驚きにも負けないほどに幸村部長たちも驚いている。
あ…確かに普段の俺からじゃ想像つかないからそうなるよな。
一人納得をしていれば、なんだか普段よりも嬉しそうな幸村部長たちが俺の側へと寄ってきた。


「ふふっ。まさか赤也がこんなにも真剣に取り組んでくれるとは思わなかったな」

「そうだな精市。俺のデータでも真面目にやる確率は21パーセントだった。その上遅刻をしないなんていうことはもっと低い確率だったな」

「普段からそのような心掛けが大切だ赤也!」

「うぃっス!!!」


なんか三強が言ってることがあまりに酷いような気もしないでもないけど…褒められたことは嬉しいし気にするのはやめよう。


*********


「ふ〜ふ〜ふ〜ん」


朝のことがあまりに嬉しくてスキップするような勢いで鼻歌を歌いながら歩いている俺。
三強と呼ばれる先輩たちから褒められたことは確かに嬉しかったんだけど、まさか丸井先輩や仁王先輩たちからも褒められるとは思ってもいなかったからすげー幸せだ!
やってよかったってこういうこと言うんだろうな。


『なんだ少年。今日はとても幸せそうだな』

「あ!梅林先輩!!」

『いいことでもあったのかな少年よ』

「そーなんスよ!!いいことがあったんですよ!!」

『ほー。それはよかったな』


いつものように突拍子もなく出てきた先輩に俺は驚くこともなく昨日と同じ応対をする。
だが、二ヶ月も俺たちを観察していた梅林先輩には些細な変化も読み取れるみたいで、すぐに俺が幸せだと気がついた。
相変わらず鋭いんだよな梅林先輩。
そういったことに幸福を感じてしまうのだが、まずはそれよりも言わなくちゃいけないことがある。
昨日ずっとずっと考えていたことを彼女に言わなくちゃいけない。


「梅林先輩!」

『ん?どうしたんだ少年?』

「これからは昼飯とか放課後とか空いた時間は話ししましょーね!!」


昨日と今日足りない頭で必死に考えついた答え。
それは俺は俺らしい態度で先輩に話しかけることだった。
変に気を使ったりすれば俺の行動でわかっちまうみたいだから、そんなことは絶対にしねぇ。
俺は俺らしく真っすぐにすんのが大事だって思ったのは、ま、それしか思い付かなかったってことなんだけど…もしかしてダメだったかななんて気持ちで先輩を見る。
だけど、んな心配必要なかったみたいだ。


『ああ』


今までで見た中で1番綺麗な笑顔で先輩は俺を見ててくれた。
なんか、昨日の胸のもやもやがとれたような気がする。



20120721

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