護衛の為に屋上へ向かっていく最中(やましい気持ちなんて一切ないわ!本当の本当だから)ずっとずっと不良がギャンギャン吠えていた。
うるさくてイライラしてたのに、それを更に増長させるのは無駄に爽やかなこの男。
おもしろいのなー、何組なんだ?、強いんだな!なんてことを何回も言うものだから余計にイライラが募る。
なにだっていうの…!私はツナと話して、側にいて、それでもって守らなくてはいけないっていうのに…なんで邪魔をするのよ!!
その苛立ちを表すかのように睨めばツナが怯えてしまうし、もう!悪い方向にしか進まないのが嫌になる。
でも、イライラするのは終わり。
なんでって、それは屋上に着いたから。
これでツナが笑ってくれたら嬉しいわ!
「着いたー!!早くお昼食べよう!!」
「はい!!10代目のおっしゃる通りに!!」
「ははっ!相変わらずだなー獄寺」
嬉しそうに笑うツナを見て私の気持ちは一気に高揚する。
ただでさえ可愛くて優しいツナが輝いて見えてしまう。
ああ、なんて素敵なの…!?
ましてや素敵な彼の前では、周りの雑草なんて視界にも入らなければ、言葉すら聞こえない。
お昼が待ちきれないのか嬉しそうにお弁当を広げる彼を見ると余計におかしくなってしまう。
そんなツナの横には当然だと言わないばかりに居る不良…!?
「って!!なにツナの横に座っているの!!??」
「ああ!?オレは10代目の右腕だからいいんだよ!!」
「いいわけないでしょ!!ツナの横は私の場所よ!!」
「てめぇこそわけわかんねーんだよ!!!」
「2人とも落ち着いて…!」
ツナが必死に私を止めるけれど、それでもこれだけは決して譲れないわ。
不良ごときがツナの横に我が物顔で座られてしまうなんて納得できない…!
私がツナの横に座るって決まってるんだから!
不良がギャンギャン吠えるものだからイライラも募っていくし…なんにもいいことがないわ。
もう、そう考えると余計に苛立ちが燃え上がるからついにトンファーにまで手が伸びてしまっていた。
−−カチャッ
「いちいち喚かないで不良」
「っ!!(なんて殺気だ…!)」
「思わず−−咬み殺したくなるわ」
「っ、上等だ!!!」
止めようしない殺気を不良に浴びせていれば、倒れることなく私にまっすぐ刃向かってくる。
−−おもしろい。
今までの貧弱な人たちは私の殺気を浴びて失神してしまっていたのに、彼は違う。
兄さんじゃないけど、こういう相手はぐちゃぐちゃに咬み殺したくなるわ。
ましてやダイナマイトを使うなんて、普段じゃ滅多に会えない相手だから。
戦闘狂ではないけど、地に伏せさせたい。
ここで負けたくはないわ。
それに、ツナの横に座った罪は深い。
普段の煩さで溜まったストレスもここで発散する…!
そう考えたらゾクゾクするわ。
絶対にぐちゃぐちゃにして、二度と私とツナの邪魔をしたいと思わないようにしてやる。
ボコボコにしてあげるわ不良!
「へ、え!?ふ、2人とも!?」
「止めないで下さい10代目!」
「待っててねツナ。直ぐに終わるから」
「んなぁーーっ!!??(殺る気だ!!!)」
「いくぞ狂暴女!!」
「いいわ不良!」
お互いに武器を取り出して行こうとした刹那、思わぬ邪魔が入った。
「ストップ!!喧嘩はよくないぜ!!」
私たちの間に割って入ってきた野球少年。
しかも手には私たちの攻撃を防いだ刀が握られている。
それを見て、一瞬にして今まで感じていたゾクゾクが消えてしまう。
だけど、イライラはどんどん膨らんでいく。
私の楽しみを奪ってヘラヘラ笑ってる彼。
なにが喧嘩なのかしら。
私はただ今から相手をグチャグチャにしようとしていただけなのに。
これは喧嘩じゃなくて決闘みたいなものよ。
それを邪魔するなんて…この野球少年は絶対に許さない。
「邪魔する者は咬み殺す!!」
「へ、あ、お、おいっ!!」
相手の制止もお構いなくいっきにトンファーを振り下ろせば、野球少年は直ぐさま避ける。
これを見た限り戦闘経験がないというわけではないみたい。
そう思うと嬉しくて、柄にもなくペろりと唇を舐める。
そういえば兄さんもよくやってたわ。
こういうところは兄妹みたい。
でも今は全く関係ない。
この野球少年も、後ろの不良も私がグチャグチャにする。
ツナとの至福の時間を邪魔した罪は重いのよ…!
「お、落ち着こーぜ!!」
「問答無用!!」
「野球馬鹿どけっ!!!」
もう一度野球少年を殴ろうとしてトンファーを動かせば、彼は不良の声と共に視界から消えた。
代わりに見えたのは不良の顔と投げられたなにかだった。
瞬間、防御しようと腕をクロスさせたが、投げられたなにか−−ダイナマイトは有り得ないことに真っすぐ私に向かってきた。
ダイナマイトって本来は空中や地面にばらまくもので…改良されたものだとは私も直ぐには気づかなかった。
思わず冷や汗をかいて、くるであろう痛みにギュッと目をつぶったが、そのダイナマイトの爆音は私の左右から聞こえただけだった。
あの不良が外すわけがないと思って、つぶっていた目を開ければ目の前に広がる−−黒。
それは毎日見ているもので見間違うはずのないもの。
そう、兄さんの学ランだ。
思わぬ登場に私もポカンとしてしまったが、見れば彼らも同じようだった。
「僕の妹になにをするんだい、獄寺 隼人」
不機嫌そうに、低く呟かれた台詞に今までポカンとしていた私の意識が戻ってくる。
「兄さん…」
「大丈夫かい紫媛?怪我は?」
「ないよ…」
心配そうに振り返った兄さんにため息がでる。
相変わらずの過保護ぶりに嫌気がさしたのも事実。
私はそんなに弱くないからそういうの止めてほしいんだよね。
兄さんはわかってくれないみたいだし、本当、嫌になる。
けれど、そんな私と兄さんの空間を裂くように叫ばれた。
それは言わずもがな、不良だ。
「て、てめぇーら兄妹!!??」
「ははっ!そういや似てるのなー」
「それじゃいけないの?」
「って、兄さんと似てたらなんかあるの?」
「ねーよっ!!!!」
イライラしながら問い掛ければ、ぎゃんぎゃん吠える不良。
ああもう!!静かじゃないから余計にイライラするわ。
もういっそのことボコボコにしちゃおうと思って前に出ようとすれば、それよりも早く動いたのは兄さんだった。
「君たち」
「んだよ」
「紫媛に手をだした罪でここにいる全員−−咬み殺す!!」
「んなっ!!??」
「や、やばいのなー」
過保護な兄がキレた。
さすがに私も瞬時に理解したわ。
けれど、どうすることも出来ないから放置しようと思ったけど、ツナが居ることを思いだし急いで彼に走り寄る。
兄さんにツナがボコボコにされてる姿なんて見たくないわ!!
「逃げようツナ!」
「え、でも…」
「いいから!ああなった兄さんは止められないわ!いきましょう」
「う、うん(ごめん!獄寺君、山本!)」
手を引いて屋上から逃げるようにして出ていけば、後ろから聞こえる爆音や金属音。
逃げて正解だったわ。
絶対にツナは私が守るんだから!!
小動物保護活動中!(守るのは私の使命でしょ?)20110830
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[mokuji]