フェロモン
 




ミーンミーン、とあちこちから蝉の声。
真っ青な空は、雲が全くなく太陽を隠してくれなさそうだ。

外へ出て10分も経たない内に、もうだらだらと汗が流れてきた。
夏の体育は本当に死にそうになる。

カンカン照りの中、止まらない額の汗を拭いながら御堂と木の日陰に入っていた。


「暑すぎる……」
「だな…」


この暑い日に外でハードルなんて、絶対に誰か一人は熱中症で倒れそうだ。


「…俺ちょっとトイレ行ってくるから…先生に言っててくれないか」
「あ、おう」


俺は御堂にそう言って、木の日陰から出た。


手でパタパタと自分を仰ぎなから校舎へと向かう。

その途中で、バッタリ千晴に会った。


「あ、千晴」
「皆見」


偶然、と千晴が笑ったので、自然と足も止まり俺もつられて笑った。


「どーしたの?」
「ちょっとトイレ」
「あは、私も」


千晴も汗をかいていて、ほんのりと頬が赤い。
女子の体育は体育館なのだが、やっぱり体育館も相当暑いのだろう。


「女子って今なにしてるの?」
「今はバスケ」
「うわっ、あっついな」
「外よりましだよ」


夏にバスケか、それはきつい。
それに体育館の方が熱がこもって、外よりもある意味暑いのではないだろうか。

そんなことを考えていたら、ずいっと千晴の顔が近づいてきて、一瞬ドキリとして一歩後ろに下がる。

汗をかいているはずなのに、ふわりと千晴のいい匂いがした。


「え、なに?びっくりした」
「皆見ってさ、なんか、えろい」
「え?」


じっと顔を見られて、真剣な表情の千晴にそう言われた。


「皆見の今の前髪が、いつもより大きく分かれてるからかな…眉毛とおでこが普段よりもよく見える」


さっき額の汗を拭ったから前髪が乱れたのか…と思いながら、何だか小っ恥ずかしくなったので前髪を手で適当に直した。


「あっ、なんで直すのー」
「えろいとか意味がわからない」
「だって…ほんとだよ」


フェロモンってやつ?と小声で言いながら、まだ俺の顔を凝視してくる千晴。


「あ、あとその腕時計もえろい」
「腕時計?」
「うん、その半袖にその腕時計はえろい」


えろいってなんだ。カッコイイって意味なのか。
と言うことはこの場合、喜んでも良いのだろうか。


「よく分かんねぇけど……そうかな?」
「あーーー……うん、何言ってんだろ?私」


そしたら千晴はふいっと俺に顔を背け、ゴホンと咳払いをした。


「…じゃあ、私行くね」
「…うん」
「皆見もトイレ!早く行きなよ」
「あ、そうだった」
「おいおい」


千晴はあははといつものように笑って、そそくさと校舎内へと入っていった。





「………」


そんな千晴の後ろ姿を見ながら、ぼんやりと思う。



汗で首筋にひっつく髪、熱くて赤くなっている頬、汗で若干濡れてるシャツと肌。


俺にとっての千晴も、相当えろい。























≪END≫
そろそろ夏なので、夏の小説を書いてみました。

最近暑くなってきましたね…。










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