プレゼントがなくたって
 

火神くん誕生日小説!



































「おじゃましまーす!」


今日も火神くんの家にやって来た。


「あっついー。クーラー!」
「ついてるだろ」
「下げようもうちょっと」


そんな会話をしながら火神くんの家に上がり込む。
やっぱり家で遊ぶとなったら一人暮らしの火神くんの家。


「…そこにリモコン置いてる」
「18度ぐらいにしていい?」
「バカ言ってんじゃねぇよ」


火神くんと二人きりな訳だから、私も自分の家にいるみたいでリラックスできる。

同棲とかってこんな感じかな。

何度も火神くんの家に入らせてもらったおかげですっかり慣れてしまった。


とは言っても、まだ付き合って4ヶ月ぐらいだけど。


「今お茶入れるな」


思えば高校に入学して、すぐにお互い恋に落ちた。

この4ヶ月の間にケンカは1、2回あったけど、こうして夏休みも会って、関係は好調だ。


「あっ、火神くん、聞いて聞いて!あのね、駅にね、すごい身長高い人見つけたよ」


ふとさっき見かけた人を思い出して、冷蔵庫の中を見る火神くんに近寄る。


「えっと、火神くんの目ぐらい!その人!身長!」
「まあいるだろ、それぐらい」


火神くんの返答にそうかなあと返して、なんとなく冷蔵庫の中へと視線を向ける。

そこに何か箱のようなものがあった。


「…この箱…ケーキ?」
「ん?…ああ」


火神くんはコップにお茶を注いでいる。

なんだ、ケーキなんて用意してくれていたのか、いつ出してくれるんだろう。とその姿を見て思った。


「今日俺の誕生日」
「ええっ!?」


火神くんの言葉に、開いた口が塞がらくなった。


「えっ、え?」
「別に、このケーキは自分で買った訳じゃ…」
「知らなかった!」
「あ、あぁ、だって言ってねぇし」


そんな、全く知らなかった。
彼氏の誕生日を、知らなかった。今初めて知った。

しかも今日。何も用意してない…。


「う、嘘、言ってよ!」
「自分からなんて言いにくいだろ、流石に」
「そ、そんなぁ !」


確かに今思えば、誕生日の話なんてしたことがない。
しまった、聞いておかなければならなかった…。


火神くんは何も気にしていない様子で、冷蔵庫を閉めて私にお茶を渡しソファーに座る。


「私何も用意してない」
「いいって、知らないだろうなとは思ってたしよ」
「でも」


何かしてあげられないだろうか。

料理…なんてあの火神くんに作ってあげる自信はない。


「気にしてねーって」
「私は気にするの!」


お茶を机の上に置いて、ソファーの前に立った。


「やっぱり何かしてあげたいもん」
「…」


火神くんは髪をガシガシと掻いて、私から目をそらす。


「俺は、千晴と誕生日にこうして過ごせるだけで…いいけどな」


火神くんの頬は赤くなっていき、だんだんと声が小さくなっていく。
そんなに照れながら言われると、私まで照れてくる…。


「……千晴、いいから座れよ」
「……」


火神くんは自分の隣をポンポンと叩く。
まだ納得はいかないが、しぶしぶ火神くんの隣に腰を下ろす。


「ねえでもやっぱり」
「まだ言ってんのかよ…」
「……」
「あーじゃあ」


ここ座れよ、と言って火神くんが指すのは、自分の膝だ。


「今日だけ俺の言うこと聞いてもらう。それでいいだろ?」
「えっ」


…それは嫌な予感しかしない。


「ほら、座れって」


まあ、今日だけだし、…いいか。何もしてあげないよりかはまだましだ…。

私はおもむろに立ち上がって、火神くんの膝に座ろうとした。


「違ェよ、向き合うんだよ」
「えっ」


わかったよ、と小声で言って、火神くんと見つめ合いながら膝に座る。

後ろに倒れてしまいそうなバランスだったので、思わず火神くんの両肩を掴んだ。


「わっ、」
「キス」
「え?」
「千晴からキスしてくれよ」


…やっぱりこういうことを頼んでくるのではないかと思っていた。


「…」


キスなんて、私からしたことがない。
いつもしてるのに、自分からするとなると、どうやってすればいいかわからない。


「何だよ、してくれねぇの?」


火神くんはそう意地悪に笑いながら、私の太ももをさり気なく触る。
短パンだから直に足を触られて、驚きでピクリと体が反応した。


「ちょ、ちょっと…」
「やめては無し」
「そ、んなの…ずるい…!」


いつもは意外にヘタレで何もしてこようとしないのに、こういう時だけ…


「す、するからやめて、キスするから」
「んー?ほんとか?」
「ほんとだよ」


火神くんの手つきが何だか…

触られていると抱かれている時を思い出してしまって…どうしようもできない。


戸惑う私を見て笑っている火神くんに、ぎゅっと目を瞑って思い切って一瞬だけのキスをした。


「…し、したよ」
「あーーー」


そしたら、そのまま火神くんに抱きしめられた。
火神くんの大きな体に簡単に包まれてしまう。


「クソ……かわいい、千晴」
「…!」
「細くてちっせえ…かわいい……」


火神くんの胸に熱くなっていく顔を埋める。


「火神くん」
「ん?」
「……誕生日、おめでとう」
「おお、サンキューな」


それからしばらく抱き合っていると、千晴、と静かに名前を呼ばれて火神くんの顔を見上げるとキスをされた。

そして、「こんなに幸せな誕生日は初めてだ」と火神くんは照れながら私にそう言った。


「あっ、でもやっぱり、プレゼントはあげるからね!」
「まだ言ってたのか」




また来年もこんな風に、火神くんの誕生日を祝えてますように。

















≪END≫
火神くんHappy Birthday!
だいぶ過ぎた、ごめんなさい…。すっごい幸せなあまーいカップル目指しました。これでも。










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