ついで!

「名無しさんーッ」

勢いよく玄関のドアが開いた音がしたと思ったら、私を呼ぶ声が聞こえ
ドタドタとした音の後に私の部屋の扉が勢いよく開けられた

「漫画読ませて!!」

それだけ言うと、本棚から一冊取り出し
私のベッドに寝転びながら読み出した


『悠一郎には遠慮ってもんがないよねー』


ぼそっと呟いた私の声なんて届くはずもなく、私は勉強を始めた


悠一郎が野球をしてるからって、野球漫画ばかり買ってしまった自分もどうかしてる
でも、練習が休みの日になると読みに来る悠一郎もどうかしてると思う

『…ねぇ、悠一郎』

「んー…??」

視線は漫画に向けたまま私に返事する

『別にさ持って帰ってもいいんだよ??
ちゃんと返してくれるなら』

「えー!!名無しさんは俺が邪魔だってこと言いたいの??」

悠一郎は漫画を置き、私の方を見て眉を上げながら言った

『別に、邪魔じゃないけど…』
なら、いーじゃん
そぅ返事が返ってきた

でも私はあんたのこと好きだから緊張するっていうか…
だから、2人の空間がヤバいんだよッッ
あんたにとっては、ただの幼なじみなのかもしれないけど…


もぅいいや…
勉強に集中しよう

置いていたシャーペンを握りしめたとき


「それにさ…」

まだ話続いてたんだ、と悠一郎の方を向く

「ここに来たら名無しさんに会えるだろ!!」

ニカッと笑顔で言うもんだから、私の顔は今真っ赤なのだろう
『そ、それはッどういう…』

一瞬、椅子から落ちそうになりながらもバランスをとり、立て直す


ゆっくりと私に近寄ってくる悠一郎に、心臓は速度を速めていて


「俺が漫画読みに来るのは、名無しさんに会いに来るついで!!!」

そう言って、私を抱き締めて


「げんみつに名無しさんが好きだから!!!」


ムードも何もないだろうけど私の頭はぐちゃぐちゃで
うなずくことしか出来なかった

ついで!!


(ついでなら、漫画はもぅ読まないでいいよね??)
(それは嫌だ!!)
(は!??)
(うそうそ)


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