阿部 隆也

『暑い』

「あぁ」

星が瞬き初め、夏の大三角形も出来てるんじゃないかと思う


『あ、隆也の星座じゃない??
ほら…射手座』

「あぁ」


適当に空を指差してみるが、彼はその先を見なかった
それどころか真正面しか見ずに、返事もずっと「あぁ」としか返ってこない
カラカラと自転車をひく音だけが虚しく響く

…わかっているんだろうか
こうして、部活後に帰るのは今日で最後だということを


なんだかムカついてきたから
勢いよく隆也の背中を叩いた

バシーンってきれいに音がなった


「っってぇー!!!!!っにすんだ馬鹿っ」

『馬鹿はどっちよ!!!さっきから…ぼーとしてさっ
分かってんの??部活後に帰るのは今日で最後なんだよっ!!?』


一気に言ったせいで、息が苦しくなった
隆也は無言で私を見ると私の手をとり
そのまま、進み初めた


『ちょ…』


「……俺さ、なんか3年間を振り返ってたんだ
だから、ぼーってなった
野球やって、お前がマネージャーになって…
一緒に帰って…
でもさ、別に一緒に帰ること事態は最後じゃねぇだろ」

『…』


何も言えなくなってしまった私に
隆也は続けた

「練習が終わって、めちゃくちゃ疲れてるはずなのに
帰り道の間だけは元気が出た
3年間ずっと…」


そこで、隆也が歩くのを止め
私の方に向き直り、腕を引っ張られた


「お前のおかげたかんな」


そして、少し汗臭い隆也の心地いい匂いの…
厚い胸板が目の前にあった

「お前が、元気をくれるんだ
部活後に一緒に帰らなくったらその必要がなくなるのは
少し残念だな……」


片手で私を抱きしめ
耳元で話された
と、とたんに罪悪感がこみあげてきた

『…なんか、ごめんなさい』

「は??」


『明日は試合なのに…変なことで怒ったり……叩いたり…』


むー、と落ち込んだ私を見て
隆也は笑って私の頭をグシャグシャに撫でた


「んなこと慣れてるよ
…ほら、帰るぞ」


差し出された手は、ごつごつしていて
握ると、これまでの隆也の野球への思いが伝わってきた
まだ、野球続けるかは分からないけど
もし続けるのなら、疲れたときは元気分けるからね

隆也の頑張ってる姿が、私の元気に変わるから





(隆也顔真っ赤だ♪)

(うっせー!!!あ、手形ついてる…)

(えっ!!!??ご、ごめんっ)

(嘘だよ)

(…バシッ)

(いってー!!!)





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