冬に食べるチョコレートみたいに甘い
【新しい靴を履いて】
靴屋で見つけた赤いエナメルのピカピカした靴には小さなリボンがついていてちょっとだけ踵が高くてお姉さんっぽい。可愛いナって思っただけで別に欲しい訳じゃない。
たまたま銀ちゃんと街をブラブラ歩いていると、靴屋の前で銀ちゃんが立ち止まった。そして、「神楽ァ、お前の靴そろそろ新しいの買うかァ? もうボロボロだろ?」とショーウィンドを覗いた。私が「そうかな? まだ履けんじゃネ?」と答えると、銀ちゃんは私の言うことなんかおかまいなしに「アレとかは?」とあの赤い靴を指差す。私が「似合わないョ」とぶっきらぼうに言うと、銀ちゃんはなんでもないように「履いてみりゃそうでもねぇかもよ。履いてみれば?」とズンズンと店の中へと入るので慌ててついて行った。
そうして私の足元を飾っているのはあの赤い靴で、ちょっとだけ高い踵は背伸びしているみたいでなんだか恥ずかしい。まだピカピカの真新しい靴を眺めながら嬉しくてコッソリ笑ってたら「悪くねぇじゃん」と銀ちゃんの声がした。
*
【誰よりも好き】
銀ちゃんの隣にいるとポンポンと頭を撫でられることがある。それはだいたいなんでもないようなときで、銀ちゃんを見上げると銀ちゃんは私の頭に手を乗っけたまま「ん?」って何か訊くような顔をする。何かあるのか訊きたいのは私の方ダロと思うけどそのポンポンは心地よくて、まぁいいかって気分になる。
たまに姉御が「お兄さんと妹みたいでいいわね」とかって言うことがあるけどあんまりピンとこなくて、それが褒め言葉なのかどうか迷ってどんなふうに応えればいいのかわからなくて困る。だって私の兄貴と言えばあのバカだけで、銀ちゃんは兄貴じゃない。でも困るのはそれだけじゃなくて、そう言ったときの姉御はとってもやさしい顔で笑っているけどちょっと寂しそうでもあることを知っているからだったりもする。銀ちゃんはモテないモテないってよく言ってるけど、知り合いの女の人たちが姉御と同じあの寂しそうな顔で銀ちゃんを見てることを私は知っている。それはたぶん、銀ちゃんはすっごくやさしいクセに素っ気なくするからで、女の人たちは近づけなくなっちゃうんだろうなと思う。
銀ちゃんが私の頭をポンポンとしたり、私が銀ちゃんの腕にしがみついたりできるのは、一緒に暮らしているからなのか、それとも私が単に子どもだからなのか、どっちなんだろうってことをふと思った。銀ちゃんのことは大好きで。ホントに誰にも負けないぐらい大好きで。あのポンポンが私だけの特別なものだったら嬉しいなぁって思ったら、銀ちゃんはどうなんだろうってふと思って、そうすると何故だか胸の奥の方がキュウッとした。
(『みみこさんは8RTされたら、好きなCPで【新しい靴を履いて】と【誰よりも好き】のお話を書きます。 http://shindanmaker.com/393707 』というお題から神楽と銀ちゃんで)
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