兵どもが夢のあと


 すでに日はだいぶ傾いていた。そよぐ風は昼間に比べて冷たくひんやりとしてきた。風に乗り時折耳に届くのは微かな虫の音だ。橙色の光がそこに居合わせた皆の顔を照らす。両軍は戦いを仕掛ける機を逃すまいとジリジリと陣を動かしているだけだ。

 敵陣の中心でこちらを見ながら不敵に笑う大将を見た。アイツに人望なぞまるであるまいと践んでいたが誤算だった。ヤツの近くにいる数人を除いては使い物になるまいと思っていたが、その戦術は軍全体に徹底され皆がよく統率されている。烏合の衆だとタカを括っていたが、烏合の衆なのは自分たちかもしれない。甘くみていたとここで悔いてももはや手遅れで、この状況をなんとか打開する手立てを考えるほかない。敵も同じだが手駒は限られている。効率よく小駒を潰して行った方が勝つ。

 ドドンと睨み合う両軍を急かすよくに太鼓が鳴り響いた。

「テメェら! 敵につられて動くんじゃねェぞ!」

 ドドン、と再び太鼓が鳴り響く。

 先に動いた方が負ける。それは向こうも同じらしい。ジワジワと距離を詰めながらも動く気配はない。チラッと斜め前方を見る。何を考えてんだかわからない表情で敵陣を見ているアイツが果たして何騎分に相当するのか……。それよりも他のヤツらが敵につられなくともアイツにつられる可能性が拭いきれない。だいたい戦う気があるのかすら怪しい。戦力ではこちらが劣るかもしれない。どう考えても大駒が足りない。大将の囲いは他のヤツらに任せて自分が出るしかないかと考えた。

 じわりじわりと陣は近づいているが互いに動きはない。どこで仕掛けるかと考えていると耳をつんざくようなピィーッという高い音が辺りに響き渡った。

「あー、あー、マイク入ってる? あ? 入ってる。あ、そう。あー、オマエら。自分たちが何やってんのかわかってますかー? 敵の大将の鉢巻きを取った方が勝ちっていうとってもわかりやすい単純なゲームをやってまーす。ゲームはいつになったら始まって終わるんでしょーか? 日も暮れてきて先生も他のみんなも帰りたがってます。つうか、飽きたし帰ェるぞ。聞いてんのかー? 高杉ー。土方ー」

「うるせー! 銀八!」

「アイツだけには負けらんねーんだよ!!!」



(なんとなく3Zで騎馬戦)






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