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影踏み鬼




「先輩、好きです」

 突然の告白は部活終わりの帰り道。
 傾いた太陽が俺達の影を長く長く伸ばして弄んでいた。
 恋人同士みたいだ、と、二つ並んだ影を見て思う。
 前を歩く先輩は珍しく小春先輩と一緒ではない。
 用事があるとかで早くに帰ってしまった小春先輩のことを想い、少しふて腐れていた様子の先輩を無理矢理誘って、一緒に帰らせてもらっている。

「好きなんです」

 もう最近から可笑しかったのだ。
 好きだという感情に歯止めが利かなくなっていて、小春先輩がいない今がチャンスだと、告白までしてしまっている。

「さよか」
「はい」

 先輩はその場でぴたりと足を止めたが、後ろを振り返ろうとはしなかった。
どうかしている。
 結果が目に見えている話をわざわざ切り出すなんで、なんて、自分らしくもない。

「でもな、俺、小春のことが好きやねん」

 だから、こんなこと、分かりきっていることで、絶対に言うつもりなんてなかったのに。
 日が沈むのが早くなった季節、前を歩く先輩の背中がオレンジから濃紺に染まっていく様を見ていた。
 前を歩く先輩の影を必死に追いかけ続けていたら抑えていたものがむくむくと溢れだして、いつの間にか止まらなくなってしまっていた。

「知ってます」
「そっか」

 ああ、そんな風に俺に背を向けないで。
 こっちを向いて欲しいのに、今先輩の顔を見ればどうなるだろうか。

「なら、一緒やな」
「…はい」

 全身にぐっと力を込めて、今すぐにでも逃げ出したくなる重い足を一歩前に出す。
 先輩は先程とそう変わらずに前を歩く。
 短くなった先輩の影を踏みながら、遅れないように後ろを歩いた。






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暗くなると影は短くなっていって、アイツとの距離も少しだけ縮まっているような気がする。
片思い同士、相手の気持ちは良く分かるつもりだ。

なんかこんな文章前にも見たことある、と思ったら自分で書いていた。
とはいえ、あっちは随分前に書いた文章。
片思い系は王道ですよね。



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