波乱盤上パロ(年齢操作 連絡が途絶えた。 メールを送ってもエラー。 電話だって繋がらない。 連絡をする手段がなくなってしまった。つまりはこう。 繋がる筈のない番号とアドレスをいつまでも消せずにいるのも、大量のスパムにもめげずに中学以来アドレスを変えずにいるのも、少しだけ期待しているから。 そのうち、あの頃みたいに突然呼び出すメールが来るかもしれないから。 携帯が鳴る。メールの着信音だ。きっと先輩からのものだろう。 時刻は12時。勿論夜。 この時間にメールをしてくる人なんて、あの人しかいない。 返信はメールでなく電話で。その方が早いから。 「なんですか、先輩」 『財前!あんなー小春がなー』 こんな話の相手にさせられるばかりだから、メールでいちいち返信してやるより電話の方が早いのだ。 明日も朝練はある。正直言えばもう寝てしまいたいけれど、それでも律儀に相手をしているのは、部活を終えても、放課後を過ぎても、こうして先輩と話が出来ることを楽しんでいるからだった。 のろけ話でも、なんでもいい。 自分にしかない特権が嬉しかった。 その特権も、今日からは本当に特別なものになった。 「先輩、もうええですか、寝たいんすけど」 のろけ話もひと段落したころ、そう切り出した。 いい加減本当に眠くなっていたし、特権とは言え、のろけ話を聞いているのは辛い。 でも、先輩は切らせてくれなかった。 「先輩?」 電話口でうなるような声がする。 呼んでも返事はない。 やっと『う』以外の言葉が聞けたと思ったら、それは予想外もいい所の言葉で、なんの心の準備もしていなかった俺はその大事な言葉を見事に聴き逃していた。 「え?」 『だからっ!好きってゆっとるやろ…』 確かに聴こえた、特別な時間の特別な言葉。 返事はもちろん決まっている。 「俺も、好きです」 なのに、卒業と同時に分かれようと言われて、高校を卒業するころには連絡すら取れなくなった。 他の先輩に聞いても無駄。誰もかれもユウジさんの話になると言葉を濁す。 この人たちは知っているのだろうか。自分だけあの人の中にはいられないのだということには変わらないのだけれど。 半年と持たなかった二人の時間にいまだ未練たらしくすがっていることに、もう呆れられているのかもしれない。 ピリピリピリ… 携帯が鳴る。メールの着信音だ。 時刻は12時。勿論夜。 この時間のメールだなんて、またスパムか何かだろう。 見知らぬメールアドレスに、もう胸を高鳴らせることはない。 --------------------- 久しぶりに書いたらハッピーエンドにはならなかった。 続きものとして考えていたものです。 もしかしたら続くかもしれない。何よりこれじゃあ報われない。 けれども昔の彼氏が忘れられなくてぐだぐだしている彼を書くのも新鮮でいい。 反省点は、現在と過去の描写。 分かりづらくてごめんなさい。 会話文(電話で告白部分)は過去描写です。 ところで程よくクズ臭のする彼のスペックは 25歳・フリーター・一人暮らし です。 イケメンですけどこんなんなので恋人には恵まれない。 イケメンですけど昔の彼氏引きずりまくって周囲をドン引きさせるクズメンをイメージ。酷い。 |