愛の許へ行く/α
咲き匂う 天の桜と 地の詩と

愛の許へ行く/α

「……ぅーん」

駅のホームで、小さく唸ってみる。

『爆ぜろったら爆ぜろ 楠 海』
「これじゃなくて」
『今から向かうから待っててねー 天爛』
「これでもなくて」
『……ごめん、遅れる』

携帯の保存BOXから、書きかけの文面を見つけ出す。

「…どーしよ」

次の電車が来るまで、5分。
完全に遅刻だ。

自分が天爛に会いたい、会いたいって言っているのに、遅刻だなんて。
馬鹿みたいで、申し訳なくて、もう泣きたいくらい。
でも、きゅっと我慢して、お気に入りのヘッドホンを耳にかける。

電車に乗り込んで、ウォークマンから流す一曲目は『恋愛サーキュレーション』。

『♪ふわふわり ふわふわる あなたが名前を呼ぶ それだけで 宙へ浮かぶ』
『ごめんっ、ちょっと遅れる(;o;)』
『メール送信中』
『♪神様ありがとう 運命のいたずらでも』
『送信しました』
『♪めぐり会えたことが しあわせなの』
「……はぁ」

そうだけど。
今、すごく幸せだけど。
だけど──。

圏外になってしまった携帯の表示に、少し肩を落とす。

「……天爛ぁ」
『♪あなたの中の 私の存在は まだまだ 大きくないことも 分かってるけれど』

(…分かってるけどさぁ)

『♪今この同じ 瞬間 共有してる 実感』
「!!!!」
『♪ちりもつもればやまとなでしこ!』
『メール受信中』
『♪略して? ちりつも やまとなでこ!』

もう、音楽なんか耳に届かなくなってくる。

『そんなに焦らなくて大丈夫だよ(^ω^) 駅に着いたらそっちに向かうね』
「!!……うん!!」

小さく小さく呟く。
そして顔を上げたら、目の前でドアが開いた。

「よっし!!」

ヘッドホンを外して、ウォークマンをカバンに突っ込んで、気合いを入れて走り出す。
でも全速力じゃなくて小走りで、無理はしないで。
だって、少しくらい、天爛に私のこと想ってもらえる時間が増えたって、いいんじゃないかなって思うから、
私ばっかり天爛を想ってるなんて、なんだか……なんだか、ずるいから。

少しでも、彼が私を想ってくれる時間が増えたら──、
きっと想い合える時間の始まりになる。

「……詩羽!!」

大好き、を空に描いて、
あなたの許に届けよう。

「天爛──っ!!」

特別な人へ、この愛しい想いをありがとう。
I love you,天爛。

──弥代の許に 届く爛なり


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