three of us番外編1 | ナノ





three of us番外編1

 司は洗濯物をたたんだ後、祐と真斗の部屋へ入り、クローゼットの中にある衣装ケースへしまう。司の服は祐のほうが空きスペースが多いという理由から、彼の部屋へ置かせてもらっている。
 木曜と金曜の夜は真斗がオーナーのショットバーで働き始めて、半年ほど経った。季節はいつの間にか五月へと変化していた。
 網戸にしている窓からは心地よい風が入ってくる。元彼に貯金を持ち逃げされた時は、悲嘆に暮れ、どうしようかと思ったが、そのおかげで新しい出会いがあった。
 祐と真斗、二人を愛していると言うのは、少し傲慢な気がするものの、実際に司は二人とも好きだった。自分が同性愛者だと自覚してからは、家族と距離を置いている。困った時に頼れるのは、元彼か同じように同性しか愛せない仲間だけだ。
 初めて真斗を見た時、彼が自分と同じだとすぐに分かった。彼もそれを見抜き、親しげに肩へ腕を回してきた。声をかけ慣れている感じで、だが、軽薄さがなく、親しみやすい。それが真斗の第一印象だった。
 その日のうちに抱かれたのは、無一文という状態で自棄になっていたのと、彼に気に入られれば、短期間でも部屋に置いてもらえるかもしれないという打算からだった。あとになって祐から、真斗は今まで一度も部屋で誰かを抱いたことがないと聞くまで、司は真斗にとって自分は遊びの延長にいると考えていた。
 祐は真斗が自分のことを好きだと思っているようだが、司は何となく気づいている。自分はあくまで二番目だ。三人で一緒に暮らすようになって、そのことが分かった。同時に二人から抱かれることはないものの、真斗は祐が司を抱く時、いつも見ている。祐はたいてい行為に集中するから気づかない。司は真斗の立っているほうを見たことがある。彼の視線の先には祐がいた。

 買い物を済ませた司は、珍しく出かけていた真斗が帰ってきたところに居合わせた。真斗はちょうど鍵を開けようとしており、「おかえりなさい」と声をかける。
「おう、ただいま。買い物?」
「はい。足りない物だけ買ってきました」
 中に入り、キッチンへ進む。今晩はトンカツを作る予定だ。
「今日、出勤ですか?」
 最近はもう一人のオーナーである幸継に任せることが多く、真斗は時おり、仕事上がりの後もどこかへ寄って帰ってくる。
「いや、今日は行かない」
 真斗はシャツを脱ぎながら、シャワーを浴びる準備をしていた。バスルームへ向かう前にキッチンへ入ってきて、頭にキスをくれる。真斗がくちびるへキスをすることはあまりない。司は自分が二番目の存在だと分かっても、嫌な気分にはならなかった。ただ、居場所を用意してくれた真斗の気持ちを思い、自分が間に入り、祐との仲を取り持つことができないか考えてみた。
 祐は寡黙なタイプであまり話をしてくれないが、真斗から二人が血の繋がっていない兄弟であると聞いている。二人を隔てる壁は、自分と同じく同性愛者であるという点だけだと思えた。
「真斗さん」
 ボクサーパンツ一枚だけになっている真斗を呼びとめる。
「んー?」
 真斗はゆっくりと振り返った。司は一瞬ためらった後、口を開く。
「祐さんに好きって言ったら、きっとうまくいくと思います」
 司の言葉に目を丸くした真斗はすぐに吹き出した。
「別にケンカしてないけど」
「そうじゃなくて……」
 何と言っていいのか考えていると、真斗が髪をすいてくる。彼は、「煙草が吸いたくなってきた」と苦笑した。
「ちゃんと言ってる。だけどな、兄貴はおまえが思うような感情で俺を見ない」
 伏せられた視線を追う。真斗はトンカツの衣をつけるためのつなぎを見ていた。
「おまえはあれみたいなもんだ」
 真斗の瞳の色が寂しい。司は慰めを口にしようとした。だが、真斗のくちびるによってふさがれて、言葉は出なかった。つなぎだと言われても、辛くはない。司は真斗の熱い体温を感じながら、足の間へ中心を押しつける。真斗が笑った。
「ずいぶん積極的だな。だいたい……俺が祐と寝たら、おまえは放置されるぞ」
 声を立てて笑う真斗だが、そんなことはあり得ないと分かっているのか、自身の言葉を否定するような嘲る調子の笑みだ。司は両手を真斗へ伸ばし、彼の頬を包んだ。
「もし、そうなったら」
 俺も真斗さんみたいに見てます、という続きは言えなかった。
「ならない。おまえは俺達から愛されてればいいんだ」
 後頭部を押さえられ、もう一度くちびるへキスを受けた後、そのままキッチンで行為に至った。乱れた衣服を整えた司は、菜箸を使い、つなぎをかき混ぜる。
「二人をつなぐ存在、か……」
 かき混ぜていた手を止めて、司は小さく息を吐いた。

10 番外編2(真斗視点)

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