just the way you are 番外編3 | ナノ





just the way you are 番外編3

 午前中だけで講義が終わると、直太は夏輝より先に部屋へ帰ることができる。料理はできないが、洗濯物くらいは、と乾いている衣服を取り込み、テレビをつけてアイロンをかけ始めた。大学の専攻は就職に強いという理由だけで、工学部機械工学課を選んだ。夏輝も理系のため、時おり、教科書を開いて読んでいる。大学受験の時もそうだった。一緒に試験勉強をしていた。
 一度だけ、高卒認定の受験を勧めたが、夏輝は首を横に振った。こっそり通帳を見たら、あの金はまだ満額で残っていた。引越し費用等で一度は減ったが、彼は給料から足していた。彼自身のために使えばいいのに、と思うが、無理強いするものでもない。
 アイロンを動かしなら、テレビから聞こえた言葉に視線を向ける。政務活動費不正取得という言葉より、その渦中にある人物の名前に耳を疑った。西城友則の父親が会見をしている映像が流れる。それは何日か前のもので、最初は謝罪会見だったが、その後、辞意表明の会見に変わった。解説者が、「政活費の不正取得だけじゃなく、ほかにも色々とまずいことしてたんでしょうかね」と他の解説者へ話しかけた。
 アイロンの注意喚起を促す音で、我に返った直太は、アイロンの電気を切り、テレビのコンセントも抜いた。急いでノートパソコンを立ち上げて、彼に関するニュースを追う。
 予想通り、政務活動費のこと以外の情報が出てきた。息子である友則の違法行為等を、もみ消したことも書かれている。だが、その中にある未成年との淫行、という言葉に、直太はマウスを持つ手を離した。事実の中にほんの少し嘘が混じっても、すべて本当のことのように思える。手切金に渡したとされる金額は、夏輝が口座に残している金額と同じだ。未成年、と書かれているため、この内容は友則とのことではなく、夏輝が彼の父親との間にそういう関係を持ったと取れる。
 決して大都市ではない。あの高校にいた連中なら、誰のことか分かるだろう。その中に悪意を持った人間がいた場合、その中の誰かがまだ動画や画像を持っている場合、次に何が起きるのか、直太は考えて、頭を抱えた。

 キッチンに立ち、夕飯の準備をする夏輝を見ながら、直太は何度めか分からない検索を繰り返した。夏輝の名前で検索して、動画や画像が上がってこないか確認する。何もないことに安堵して、自分は人を疑い過ぎなのか、と自問する。彼に口ですることを強要した連中も、直太と同じように成人となっている。過去の行為を悔やんで反省しているはずだ。
「なお、運んで」
 直太は立ち上がり、夏輝が焼いたハンバーグと春雨サラダが乗せられた皿を運ぶ。
「土曜に金沢さんとパンケーキ食べに行くね」
 普段からニュースやインターネットを見ない夏輝は、何も知らないようだ。夕食を食べながら、他愛ない会話をして、シャワーを浴びる。直太が浴室から出ると、彼はテレビをつけようとしていた。
「何か見たい番組、あるんですか?」
「別にないけど、なおが夜のニュース見ると思って。でも、何か全然反応しないんだけど、壊れてる?」
 リモコンの電源ボタンを押しながら、夏輝がこちらを見上げた。笑ってリモコンを受け取り、テレビの裏にあるコンセントをさし直した。
「え、そこだった?」
 夏輝が驚く様子に、「すみません。アイロンかけた時に間違えて、抜いてたみたいです」と話す。すると、彼は声を立てて笑った。苦笑しかできなかったのに、最近はよく笑ってくれるようになった。
 十六歳の時とはちがう。それなのに、夏輝を傷つけないために何をすればいいのか分からない。リモコンを置いて、夏輝を抱き締めた。キスをしながら、話すべきか、話さないべきか、考える。
「あ、なお、今朝、泣いてたみたいに見えたけど、大丈夫だった? 話、聞こうか?」
「……何でもないです。何か夢見て、たぶん、そのせいです」
 続きを再開すると、今度は、「ずっと前だけど、」と夏輝が切り出す。
「金沢さんのこと、紹介した時、俺がきれいってこういう人のことだって言ったら、何て言おうとしたのか覚えてる?」
 直太は話すべきかどうか、判断できないこたえを諦めて、すぐにこたえることができる問いに返事をする。
「覚えてますよ。俺にとって一番きれいなのは先輩ですって言いたかったんです」
 夏輝のシャツを脱がせて、直太は彼の白い肌へくちづけた。


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