皆既日食










「十代くん!起きてっ、起きて!」


休日。朝から舞姫が部屋に上がり込んできて騒ぐ声が聞こえて額に手を当てながら身体を起こした。

珍しい。いつもの舞姫ならオレが起きていなくても、リビングで兄の二十代と話してオレが起きてくるのを待つのに、今日に限って部屋に入ってくるとは。Tシャツとズボンで寝ているからいいものの、これがパンツ一丁だったらどうするんだ。

恥ずかしいだろ。


「ねぇ、十代くんってばー」


オレの膝の上に乗り上がり、まだ覚醒しきらないオレの耳元で名前を呼ぶ舞姫。頼むから、もう少し声量を下げてくれないだろうか。なんてことは、舞姫が可愛すぎて言えない。むしろ、超覚醒状態のときならいくらでもその声量で名前を呼んでくれ。


「ん、おはよ、舞姫」

「おはよう」


そっと髪を撫でて朝の挨拶。すると舞姫はさっきまでオレが中々起きなくてふてくされていた顔を満面の笑みに変えた。


「で、朝っぱらからどうしたんだよ。それに麦わら帽子なんか被って…どっか出かけんのか?」

「テレビ見なかったの?今日、皆既日食が見れるんだよ?」

「日食…?あぁ、そう言えばニュースで言ってたっけ。日本じゃ、8割ぐらい太陽が隠れるとかなんとか」

「そうそう。だから十代くんと一緒に見ようと思って…でも熱いからパパが帽子かぶっていきなさいっていうから、麦わら帽子被って来たの」


今日の服装は白いワンピース。それに麦わら帽子か…あと、周りを走り回る犬とかいたら完璧だな。何がって、清楚な夏のお嬢様コーディーネートだよ。

舞姫なら絶対似合う。


「外にシロちゃん待たせてるんだー。二人と一匹で、日食見よう!」


犬いんのかよ。完璧じゃねーか。あ、ちなみにシロとは舞姫の隣に住んでる遊戯さんとこで飼われてる犬だ。


「はいはい、じゃ、とりあえず…着替えるから。外に出てて」

「はーい」


嬉しそうに手を上げて、子供のように楽しそうな表情を浮かべて部屋を出て行く舞姫。相変わらずかわいいな。

少しだけ苦笑して舞姫が出て行ったのを確認してTシャツに手をかけたその瞬間、またドアが開いてオレはTシャツを脱ぐためにかけた手を止めた。


「あ、そだ。十代くん」

「ちょ、舞姫!オレ着替えるって言っ…」

「早く着替えてきてね、日食もうすぐだから…。舞姫、この日をずーっと楽しみにしてたからっ、十代くんと見るって決めてたから…ちゃんと一緒に見ようね。……えと、失礼しました」


そう言って少しだけ顔を赤くした舞姫はまたドアを閉めて廊下に出て行った。


何これ。ちょっと、すっげー嬉しいんですけど。マジで。

しまった今のセリフ、レコーダーにとっておけばよかった。




皆既日食

だいぶ前ですけど皆さん見ました?日食。Rの住んでる愛媛県ではあいにくの曇り空でしたが、雲の隙間から微妙に見えました。最初は肉眼で見てたんですけども、近所の子供たちが、日食用の黒い下敷き?的なものを持って来てくれて、それで見るとすっごく見えやすかったですよ。次回は26年後らしいですね…26年ていったらもうおばさんじゃん…やばすやばす。

とりあえず、小説では凡骨娘と十代くん二人に日食を見せたかっただけです。はい。









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