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「別にいいよね?」

友人は話がある、と徐に私を誰もいない廊下の隅へと腕を引っ張っていった。誰もいないことを確認した友人は
「トムの事好きじゃないんだよね?」
と確認をし始めた。別に私はリドルの物でものないし、リドルは私の物でもないと毎回はっきり言っているのにどうしてこうもこの友人は疑り深いか。それとも私が信用されていないんだろうか。
『だから、ただ友人だって』
「なら、別にいいよね。トムにこの私の気持ちを伝えて」
そう人身満々に言うと「今更ダメって言っても遅いんだからね。」と私を牽制しながら友人は小走りで廊下の奥へと消えていった。なぜ友人はあたかもリドルと絶対同じ思いと言わんばかりの自信があるのだろうか。確かに友人はスリザリンの中では性格もいい方だし、顔も整っている。友人が選ばないだけでそこらへんの男子生徒は友人にハートの目を浮かべている。そう、まるで惚れ薬に魅了されているかの如く。いつだかこの友人は生まれながらに惚れ薬の効果のフェロモンを持っているんじゃないかと本気で考えたことはあったが、この学校一の人気者のリドルには効果が全くなかったのであのフェロモンの話を本気で考えた自分が恥ずかしくなったのを覚えている。なぜ友人が私にリドルの事で了承を得に来たと言うと、リドルとは入学以来から妙に気があってそれからは共に行動することが多々(ほぼ)あるのだ。それのせいでよくリドルに好意を寄せている女子生徒から「付き合ってないの?」とうんざりする程聞かれる。もういい加減にしてよ!と自分の背中にリドルとは恋仲の関係ではない!と張り紙をしたいぐらいにうんざりしていた。けれど私が何百回と否定しても何故だかそう尋ねてくる生徒は一向に減らない。皆記憶力が皆無なのかな。
「名前。どこいたの」
『少し呼び出しされてさ…』
「またあの呼び出し?」
『んーん、違うよ。』
「そう、ならよかった。次は薬草学だ。ほら行くよ。名前と同じ授業はいつも遅刻気味になるんだから。」
リドルは自然に、いつも通りに私の右手に指を絡め歩き出した。そう、これなのよ。
『リドル。これのせいなんだよ。女生徒が私たちの間柄を疑う理由』
「なに、やめて欲しいの?」
凛としてそう言い放ったリドルに私は即座に返事をすることは出来なかった。別にリドルの事はなんとも思っていないけど、ここでやめて欲しいと言ってしまったら、もうこの柔らかい綺麗で暖かい手を握れなくなってしまう事がどうしようもなく嫌だった。
『…ううん、やめないで』
「そう、」と優しく笑うリドルは握った私の手をより一層強く握った。それに応えるかのように私もしっかりとリドルの手を握った。
『あのね、リドル。今日誰かに呼び出されたりしなかった?』
「……したよ。大丈夫。ちゃんと断ったから。あの子の気持ちには応えられない。」
『そっ、か』
リドルが友人の気持ちに応えられないのは確実に分かっていた。けどリドルにフラれた友人が私に泣きついて来ることが少しばかり面倒だ。なんと言って慰めよう。慰めの言葉を考えるの面倒だ。
『リドルのせいだからね。めんどくさい』
「…名前には特になにもしてないけど」
『してなくても巡り巡って私が被るのよ。知らないでしょうけど。』
「はいはい。それは悪くかったね。僕のせいだ。ごめんごめん」
『はぁ?なにその謝り方。もっと誠意込めて謝ってよ!』
もう繋いでる手を振りほどこうと考えたけど、どうしても手は離したくなかった。そしてリドルも離さなかった。それが嬉しくて体が少しだけ火照った。この感情はなんと言うか誰か教えてくれないかな。

20201120