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主要都市について書かれた一般的な書物(商業都市ルナール)


 したたかで賢い狐の双眸、商業都市ルナール。
 この都市は黄昏をほとんど感じさせない。常に人々が都市内部を駆け回り、世界のことなど考えている暇はないといったように忙しなく働いている。
 出世を目指す者、世界を翔けて仕事をしたい者、夢のために資金を集める者、他人に興味がない者、黄昏のことを考えたくない者などがこの都市には集まる。
 銀灰の地面、立ち並ぶのは深い緑や青の家たち。どこにいても人々が騒ぎ立てる声が聞こえてくるのに、まるで自分一人しかこの場所にいないかのような、ルナールは何処かよそよそしい雰囲気の都市であるが、この雰囲気を気に入る者は意外にも多い。
 黄昏よりも、財産を! 世界よりも、この都市を! 他人よりも、まず自分を! どうせ滅びる運命ならばと、彼らは今日もルナールを走り回る。自分の心を満たすために。




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