月に謳いし(プロローグ)

小さいが美しい街があった。

その街の領主の家で、1人の子供が産まれた。
皆から祝福されたのも束の間、その子供の父親は、妻に対して怒鳴った。

「なぜ私達の間に銀髪の子が産まれるのだ!?」

領主も、その妻も、ともに黒髪であった。
しかし、産まれてきた子供の髪は不思議なことに銀色だったのである。

「お前は、私の知らない所で浮気をし、そいつの子供を身篭り、さも私との子供であるように偽ったのだな?」

領主が問い質すと、妻は泣き叫んだ。

「それは違います!まったくの誤解です!この子は正真正銘、貴方様との子供でございます!」

妻は最後までそう言い張った。

「私はこの屋敷から出ることなど一切ありません。何より、周りの者がそれを証明してくれます。どうやったら外に抜け出し、他に男を作ると言うのですか?」
「お前が外に行かなくても、商人たちがこの屋敷に訪れることがあるではないか!お前はそれを利用したのではないか?」
「そんなことは絶対にありません!神に誓って……」

結局、その子供は間違いなく二人の子供であることは判明したものの、領主はその子供を「不幸を呼ぶ」「悪魔」だと言って殺そうとした。

しかし、妻が必死で止めたために、殺しはしないまでも、屋敷の離れ小屋に隔離して、まるで「初めから居なかった存在」のように扱った。
その子が例え泣いても、病気になっても、一切構うことはなかった。


やがて、時が経ち、その子は12歳になった。

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