小説 | ナノ


あれから三年。時の流れは早いもんだなってしみじみと思う。
ガキたちとの出会いやダークシグナーとの戦い、シティとサテライトの統合。色んな事件や変化が通りすぎていったが、残念ながら乙撫とオレとの関係はそのまんまだった。あえて変わった点を挙げるなら、普通に話せるようになったってことと、強い信頼関係を築けたってとこか。
情けないがずいぶんと長い間、うまいこと会話できなくってよ。乙撫からすればよそよそしく見えたらしい。そりゃそうだ。未だに嫌われてるのかと思って地味にへこんだんだよー、と苦笑しながら話してくれたのは、乙撫がだいぶ立ち直ってからのことだ。結局、思春期特有の照れだったって解釈されたらしい。なんつーか、オレとしてはすっげぇ複雑だった。乙撫にとってオレは弟みたいなもんでしかないんだろう。
つくづくみじめなもんだよな。オレもいい加減諦めりゃあいいものを、ズルズルと引きずり続けている。年数にしておよそ10年。ホント、我ながら大したもんだぜ。
でも、ここらが潮時なのかもしれない。
だからオレは最後に、悪あがきをすることにした。当たって砕けろってやつだ。せめて、告白して盛大に散ってやらぁ。鉄砲玉のクロウ様を舐めんなよ!
っつーわけで、まぁ、あれだ。WRGPで優勝したら、告白する。意気地無し?ああなんとでも言えよ、オレぐらいのレベルになるとなぁ、砕けるにも心の準備と後押しがいるんだっつーの。

そんなこんなで遊星・ジャックと、途中でブルーノっていう仲間を得て、オレたちはWRGPに備えつつ日々を過ごしていた。
そして予選を間近に控えていたあの日、オレとマーサハウスに暮らしている乙撫の元それぞれに、御影さんと牛尾が訪ねてきた。そして知らされる。ピアスンが誰かに殺されたかもしれないって可能性を。
乙撫はすぐにガレージまで来た。心配していたより、乙撫は冷静だった。
オレたちはこの事を知らせるため、すぐにボルガーに会いに行った。久々の再会を十分に噛み締める暇も惜しんで、オレはボルガーにピアスンの死に関与したカードについて心当たりがないかを聞いた。だけど返ってきた答えに、オレも乙撫も耳を疑うことになる。
忘れるんだ、と。
あろうことかボルガーはそうぬかしやがったんだ。
頭にきたオレは、乙撫を連れて立ち去ろうとした。ボルガーだってピアスンの世話になっただろうに、そのピアスンの事を忘れろだ?恩知らずにも程がある。
一秒だってこんなところにはいたくなかった。でも、ボルガーはオレたちをひき止めた。デュエルで勝ったら、ピアスン殺しの犯人を教える。もし負けたら、オレが持ってるBFDのカードを寄越せと。
正直オレはBFDなんてカードは持ってなかった。でも乙撫のためにも、死んだピアスンの無念を晴らすためにも、ピアスンを殺した奴を突き止めたくて――オレはデュエルの申し出を受けた。

勝敗の先にオレと乙撫を待ち受けていたのは、あまりにも悲しい事件の真相だった。
ピアスンを殺した犯人は、他でもないボルガー自身だったんだ。
乙撫は、ボルガーを罵ることも責めることもしなかった。ただ一発、平手をかましただけ。
それだけだった。



「ピアスンのこと、大好きだった……死んだ時は悲しかったし、辛かった。赤ちゃんがダメになった時は、私なんかが生きてても仕方ない、死んで二人に会いに行きたいって思ったくらい」

日暮れ時。
ガキたちの顔と乙撫の様子を見にマーサハウスへ立ち寄ったオレは、乙撫から散歩に誘われて、今旧サテライト地区の路地を歩いていた。

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