今日はいつもより早く目が覚めた。

コーヒーを作り、不慣れな同居人のためにいつもの和食ではなくスクランブルエッグとマッシュポテト、冷凍したフランスパンを出して解凍する。

コーヒーなんていつぶりだろう。

自分ひとりだとご飯は適当にすませられるが、同居人がいるとなると話は別だ。

こういう時にめんどくさがりな自分を実感する。

しばらくするとコーヒーの香ばしい香りが部屋中に広がった。

奥の部屋で物音が聞こえる。ーーー同居人が目覚めたようだ。

(私もコーヒーの匂いで目覚めてみたいもんだわ,,,,)

そんなことをポツリと考えながら同居人の名を呼んだ。

のそりのそりと起きてきたスネイプは昨日にも増して不機嫌だった。

低血圧なのだろう。

眉間のシワが昨日よりも深く刻まれている。

温かみの無い黒い目とねっとりとした髪が乱れ、寝起きだということをより一層連想させられた。

『はい』

リナは出来立ての朝食とコーヒーをスネイプに渡し、相手は無言で受け取る。

ありがとうは無いんかい、と心の中でツッコミを入れたいところだが、こういう口下手なタイプに一般的な常識は通用しないということをリナはよく知っていた。

(こういう時は社会人を経験した後でよかったって思うけど)

リナはチラリとスネイプをみると黙々とマッシュポテトを食べている。

気に入ったのだろうか。

そう思うと自然と口角が上がる。

『あの、スネイプさん、今日の予定覚えてます?』

うずうずする気持ちを隠しきれないリナにスネイプは小さくため息をついた。

「それは我輩が魔法を教えるといったことですかな?」

嫌味が含まれた昨日までと違う丁寧な口調に苦笑した。

『知りたいと思う知識欲はいけないことでしょうか』

そういってリナが右眉をあげるとスネイプは悔しそうに舌打ちする。

「・・・・私は中途半端な覚悟で学びたいと思うものに時間を使う気は無いが、、、本当に学ぶ意欲のあるものには多少手を差し伸べる。」

不器用な彼にプハッと吹き出してしまった。

不機嫌そうに皺が増えるスネイプを見てリナはごめんなさいと謝る。

謝ったものの、信用していないと顔に書いているスネイプにリナは

『本気で学びたいと思っています。今のままの小さなカゴに閉じ籠っている自分を変えていんです。』

そういって両手と頭を床につけた。

「・・・・・何をしている」

不思議そうに両眉を釣り上げるスネイプに、これが日本の最大級のお願いや謝罪の意を示す行為だと説明した。

その情けない格好が気に入ったのか、ハッとバカにしたようにスネイプは笑った。

「よかろう」

スネイプはリナに紙とペンを用意するように促すと不思議そうにペンを一瞥した後、懐の杖を取り出した。

何やら呪文を唱えると、彼は日本語で空中に文字を書き出した。

古代ルーン文字、数占い、天文学、箒飛行訓練、魔法生物飼育学、妖精の魔法、呪文学、闇の魔術の防衛術、占い学、薬草学、魔法史、マグル学、魔法薬学、古代ルーン文字学、変身術、、、、

数えきれないほどの科目をスネイプは宙に書き出していく。

「Ms.ヒイラギ貴様はまだ全く魔法の知識がない。よってホグワーツ魔法学校の1年で習うものから順に教えていくことになる。一部私から教える気は無いものも多いが、呪文学と闇の魔術の防衛術、あとは魔法薬学についてここでは教えていく。」

猫なで声で聞きずらいなんて言えないリナは神経を集中させながらスネイプの声に集中した。

『魔法薬学ってスネイプさんが教えている教科ですよね?』

「さよう。魔法薬学では杖を振り回すような馬鹿げたことはやらん。そこで、これでも魔法かという輩もいるかもしれん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち上る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力。・・・貴様がこの見事さを真に理解することは期待しておらん。私が教えるのは、名声を瓶つめにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法であるーーーーただし、我輩がこれまでに教えてきたウスノロたちよりも貴様がまだましであればの話だが」

普段無口な彼が、つらつらと饒舌に話す様は彼が教師であることの証明だった。

嫌味を交える様に苦笑したいところだが彼は今自分の先生だ。

上下関係は心得ている、大人だから文句は言わない。

しかし子供に彼の教育は不人気であると一目瞭然でわかった。

『あの、スネイプさん・・『スネイプ教授だ、今は授業中のはずだが?』

話を遮って、不快そうにリナをみるスネイプに小さく『すみません』と謝る。

『今日は呪文を?それとも魔法薬学を?』

「・・・・魔法薬学は高等で予習なしなど許されん。今日は呪文学を教える。」

『スネイプさ・・・教授が持っている杖のようなものを私は持っていないのですがどうしたらいいでしょうか?』

彼のカンに触らぬよう、困ったような表情で彼を見つめるとスネイプはため息をつき、彼の懐から何本も入った杖の袋を取り出した。

「杖は本来専門の店に行き、自分に合ったものを購入するものだ。私の杖は少々貴様にとって扱いづらいものだと思うが、、、まあ期待はしていない」

そういって勢いよくリナの目の前に杖を差し出すと、リナは苦笑してお礼を言った。

それからはとても速かった。

浮遊魔法、呼び寄せ魔法、口封じ魔法、修復魔法など今日1日で10個の魔法を覚えた。

リナは昔から耳がよく英語の発音はよくアメリカ人の英語の先生に褒められていた。

英語の弁論大会で優勝したこともある。(ただし発音がいいからと言って英語の点数がいいとは限らない)

魔法に関しても、どうやら才能があったようでスネイプは両眉をあげて無意識に小さく頷いていた。

気がつくと朝だった空が、漆黒になり、時計は23:00を刻んでいた。

「・・・集中力は及第点だな」

彼なりに褒めているらしい。

嬉しそうにリナはありがとうと満面の笑みを浮かべると慣れない様子でスネイプは体を強張らせた。

「魔法薬学の知識を貴様が呪文を学んでいる間にまとめて置いた。明日からきちんと予習しておくように」

そういうとリナは嬉しそうに微笑んだ。




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