カームの宿にて
星。古代種。フィーラー。運命。
そして、かつて英雄と呼ばれた男…。
様々な出来事に触れた。
脅かされる、星の命。
救いたいという願い。因縁の相手。
そんな、大切な人たちの想い。
あたしは、自分にも出来ることがあるなら、支えになりたい、力になりたいと思った。
そうして仲間たちと共に出た、星を救う旅。
魔晄都市ミッドガルを旅立ち、最初に辿り着いた場所は、カームという街だった。
「さーて、聞かせてもらおうか。お前さんとセフィロスの因縁をよ」
宿の一室。
椅子に腰かけたバレットが少し身を乗り出しながら言う。
「ティファ。全部話すぞ」
「うん。私は、大丈夫」
気遣いながら、確認するクラウド。
ティファは俯き気味に、でも気にしないでというように頷く。
日が暮れた頃、辿り着いたカームの街。
あたしたちはまず宿に向かい、二部屋を押さえた。
でもひとまずは全員が同じ部屋に集合し、話をすることになった。
エアリスとティファは二人掛けのソファに腰かける。
そのすぐ傍の床にレッドXIIIは寝そべり、バレットはテーブルの椅子を引いて座る。
あたしは、バレットと同じように椅子を引いて、背もたれを前にして肘をついた。
クラウドは、窓際の壁に寄りかかって立っていた。
クラウドを囲むように、顔を合わせた面々。
これから聞く話。
それは、クラウドの過去。
「5年前。俺は16歳だった。もうソルジャーにはあまり出番がなくて、あっても、気の乗らない任務が多かった。そんな中、命令が下ったんだ。英雄セフィロスが一緒で…俺は、はしゃいでいた」
英雄セフィロス。
それは、まず名前なら誰でも一度は聞いたことのあるであろう神羅の最強のソルジャー。
クラウドはそんな英雄と、深い因縁があるのだという。
それは一体何なのか。
いくつもの片鱗は見てきたけれど…話をちゃんと聞いたことが無かったから。
旅をはじめる前に、きちんと聞いておきたいと。
それが今こうして集まっている理由。
舞台は5年前。
クラウドとティファの故郷である、ニブルへイムという小さな村だった。
「ニブルへイムといやあ、世界初の魔晄炉があるところだ」
「えっ、ニブルヘイ厶ってそうなの?」
バレットの豆知識。
魔晄炉があるのは知ってたけど、世界初とは知らなんだ。
思わず反応すれば、ティファはこくんと頷いてくれる。
「うん…。5年前の9月…魔晄炉の様子がおかしいって、大人たちが騒ぎだして、見たことのなかったモンスターが村の近くで目撃されて…それが、はじまり」
「村は自警団を作ったが手に負えず、神羅に事態の収拾を依頼した。そこに派遣されたのが、俺たちだった」
モンスターと魔晄炉調査の為に派遣された、セフィロスとクラウド。そして数名の神羅兵。
クラウドはその時の情景を覚えている限りで色々と話してくれた。
セフィロスは久しぶりの故郷はどんな気分かと尋ねてきた。
自分には故郷がないからと。
クラウドは「両親は?」と聞き返す。
そこでセフィロスが口にした母親の名前は―――ジェノバ。
「ちょっと待て。ジェノバって、神羅ビルのあれか?」
「ああ。でも、あとで話す」
ジェノバ。
それを聞いて話を止めたバレット。
でもあたしも思った。
ジェノバって、宝条博士の研究施設で見たアレだって。
アレが、セフィロスのお母さん…?
だけどクラウドはその話は後回しにした。
何か順序があるのかな。
順を追って話してくれるなら、急かす理由もない。
じっと見ているとクラウドと目が合って、あたしはちゃんと聞くからどーぞと目だけで言ってみた。
伝わったかはわからないけど、クラウドはちょっとだけ頬を緩ませたから多分おおよその意味は伝わったと信じている。
そうして全員で再び、クラウドの話に耳を傾けた。
セフィロスは村長に呼ばれた。
その間、日暮れまで、クラウドは好きに過ごしていいと言われた。
懐かしい村の光景。
色々と見て回る。
村の給水塔。
村の、懐かしい料理。
それから、実家のことや、ティファの家に立ち寄ったこと。
「俺の実家は、事件には関係ない」
「でもよ、興味あるぜ」
「私も!」
「はいはい!あたしも気になる!」
「うん…、聞きたいな」
皆から聞きたいと言われれば、流石のクラウドも折れる。
クラウドの家はお父さんは早くに亡くなり、お母さんがひとりで住んでいた。
お母さんは明るくて、元気な人。
2年ぶりの息子の帰郷をとても喜んでくれたらしい。
でも、思い出すのは少し辛かったのかな。
断片的に話して、そう多くは語らなかった。
「私のうちにも行ったの?」
「ティファがいると思って…」
次は、ティファの家の話。
幼馴染みとは聞いていた。
けど実は、ふたりの家は隣同士だったという。
「なんだよ、お前ら。お隣さんじゃねえか」
「そうだけど、あまり行き来はなかったよね」
「色々あったからな」
「へへ、ははは!やらかしたな、クラウド」
バレットにニヤニヤ笑われて、顔をしかめるクラウド。
やらかした…って、何をやらかすって言うんだ…。
だけどちゃんと、幼馴染みらしいエピソードもあった。
ティファは猫を飼っていた。名前はマル。
クラウドはちゃんとその名前を憶えていて、ティファは懐かしそうに顔をほころばす。
そんな様子を見ていて、思う。
「おおー、幼馴染みーって感じ!」
「…なんだその感想」
「んー?そういう共通の思い出、いいなーって思っただけ」
クラウドにへらりと笑う。
同郷の幼馴染み。
そういう昔からの思い出話はなんだかほっこりする。
でもそういえばそう言う話、あんまりしてるの見なかったなとは思ったのかもしれない。
それから宿屋では、ティファの格闘のお師匠様の話。
ティファの師匠の名前はザンガン。
まあよくザンガン流って言ってるよね。
子供たちに武術を教えながら、東へ西へと旅をしている人らしい。
お師匠様はティファを褒めてくれた。
あの子はセンスがいい、強くなるぞと。
でもそれに対してクラウドは「まさか」と返す。
その反応、ティファは聞き捨てならなかったらしい。
「まさか?」
「クラウド、見る目ないね」
「5年前だぞ?」
「えー、でもあたしも最初疑われたよー?ティファもビッグスもウェッジも、みーんなのお墨付き!皆強いって言ってくれてたのに!」
「…………。」
エアリスとふたり、ティファに加勢する。
そうそう。あたしも目の前で戦うまで、どうもクラウド信用してくれてなかったよねー。
本当に戦えるのか?みたいな視線ひしひしだったっていうか。
3人がかりで責めれば、クラウドは黙った。
へへへ〜、あたしたちの勝ち〜♪
3人で顔を合わせて笑った。
まあ、そんな逸れた話はともかくで。
この辺りから、そろそろ本題。
「あの時は気付かなかったけど、今になって思えば、村に着いた時からセフィロスの様子は変だったかもしれない」
一夜明け、翌日。
朝早く、クラウドたちは魔晄炉調査に向かうことになった。
魔晄炉は村の奥にあるニブル山の中にある。
魔晄炉へのガイドは、ティファが務めたのだと言う。
向かう前に3人で写真撮影をしたり、そのスタートは朗らかなものだった。
「ずいぶん、楽しそうじゃねえか」
「そうだね…うん、この時はね」
そう言ったティファの声は、暗かった。
この後に待ち受ける悲劇。
実はあたしは、少しだけティファから聞いている。
あまりティファも話したくないことだろうから、全部は知らないけれど。
ただ、断片…。
もう帰ることが出来ないと、そういうことは聞いているから。
「魔晄炉はニブル山の中腹にある。寒々とした山の空気が懐かしかった」
クラウドは山の景色を語る。
クラウド達はモンスターを片付けながらニブル山を登り、魔晄炉を目指していった。
To be continued
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