クイーンズ・ブラッド大会



「第八神羅丸恒例のクイーンズ・ブラッド大会!今、すべてのカードバウターが揃いました!果たして栄光のトロフィーは誰の手に渡るのか!司会は、船長のチトフでお送りいたします。皆様、大いに楽しんでいって下さい!」





チトフ船長がマイクを手に船内を盛り上げる。
遂に、クイーンズ・ブラッドの大会が始まった。

レッドXIII…は可哀想だったけど、仲間の皆も参加してる。

よーし、頑張るぞ!
あたしは厳選したカードデッキを手に、意気揚々と大会に繰り出した。





「ナマエ選手、見事勝利!素晴らしい戦いを見せてくれました!」





ランダムでピックアップしているのか、チトフ船長が勝利選手の名を実況してくれる。

今、あたしの名前がスピーカーから流れた。

こういうの、ちょっと気分いいな。
今の試合も、思い通りの流れで戦えたし。





「じゃあ、ありがとうございました!」





あたしは今戦った相手にお礼を言って、席を立つ。
そうして勝利報告をするために受付に向かった。

そういやマムやアニヤンも乗ってたみたいで、しかもこの大会にもちゃんと参加してたんだよね。
見かけた時、ちょっと…いやだいぶびっくりした。

さっきアニヤンとクラウドが戦ってるの見たけど、どうやらクラウドが勝ったらしい。

勝つことが出来れば、次の試合に進むことが出来る。
あたしは、今ので三勝目。

そろそろ決勝戦も見えてきた。
クラウドとファイナルラウンド本当にやれるかも!なんて。

でも、そうして迎えた第四試合。





「お、お見事…」





終わった盤面。
それを見て思わずそう呟く。

すると、目の前に座る相手はクスッと笑った。

第四試合。
あたしは勝利を逃してしまった。

相手はかなり強かった。

これに勝てたらファイナルだったんだけど…。

ファイナルラウンドだけはスタッフさんが席まで案内してくれるらしく、相手は迎えに来たスタッフさんに連れられて行った。
うーん、残された敗者はちょっと寂しいものである。





「クラウド、どうしたかな…」





椅子にもたれかかりながら呟く。

バレット、ティファ、エアリスはもう敗退してしまったと聞いた。
クラウドだけはまだ残ってたはずだけど。

もしかしたらまだ試合、やってるかな。

そう思い立ち、あたしはクラウドを探しに席を立った。





「あ、やっぱりやってた!…って」





ちょっと賑わっている方に向かったら、デッキにある席で試合をしているクラウドとチャドリーくんを見つけた。

まさかの相手、チャドリーくん!!

でもチャドリーくんなら確かにちょっと強そう。
勝ち進んでるのも納得の相手かも?

あたしはクラウドたちの席に近づき、その盤面を見に行った。

するとふたりがあたしに気が付く。





「ナマエ」

「あ、ナマエさん!」

「あはは、見に来ちゃった。どうぞ続けて」





軽く手を振り、続けてと促す。
だってギャラリーもふたりの試合、興味津々で見てるし。

見たところ、今はチャドリーくんが優勢?

でもあたしは知っている。
クラウドはこういう盤面でも、いつの間にかひっくり返してる。

そういう目、何度遭ったことか…!

クラウドとのバウトを思い出して、なんか悔しい気持ちになる。

そしてその通りに、クラウドは見事、最後に盤面をひっくり返して見せた。





「流石クラウドさん!いつもながら、見事な勝利です!優勝まで、応援していますよ!」





試合終了。
チャドリーくんは清々しい顔でクラウドにエールを送った。

いや本当、クラウド強いな…。

流石という言葉。
チャドリーくんもクラウド相手だから、ちょっと楽しそうなのかもしれない。

席を立ったクラウドは、あたしの方に振り向いた。





「ナマエ、負けたのか?」

「あはは…うん、残念ながら」





あたしは苦笑いしながら頷いた。
するとクラウドは意外そうな顔をする。





「あんたが負けるのか。強いな、相手」

「んー…まあ、それなりには自信あったけど…。うん、相手、すっごく強かった。次のクラウドの決勝の相手がそうだと思うよ」





この試合に勝ったことで、クラウドはファイナルラウンドに進む。
となれば、あたしが戦った相手と戦うことになるわけで。





「そうか、なら、俺がカタキを取る」

「へっ」





するとそれを聞いたクラウドはそんなことを言ってきた。
思わず間抜けな声が出る。

あたしの、カタキ討ち…?





「クラウド選手、おめでとうございます!決勝会場へは私がご案内します」





さっきのあたしたちの席と同じように、スタッフさんがクラウドも元へやってきた。

クラウドはあたしを見て、ふっと笑う。





「見るだろ?」





そう言われて、あたしも笑った。





「うん!勿論!じゃあカタキ討ち、お願いします!」





クラウドは「ああ」と頷いてくれた。

こうしてスタッフさんに案内されるクラウドについていき、決勝会場へと向かった。

流石はファイナルラウンド。
注目度は抜群で、大会に参加した人、そうでない人も沢山集まってきてる。

そしてその中心にあるテーブルに先に座っていたピンクの髪の彼女。

彼女こそ先程、あたしが戦った相手、レジーだった。





「あんたがトップのバウターか?」

「私よ。レジー・ケーニギン。皆は天才レジーと呼ぶわ。あら、そっちの子、さっきの?」

「あはは、先程はどうも」





クラウドが声を掛けて、名乗ったレジー。
その時レジーはあたしにも気が付いてくれた。

あたしは軽く手を振り、応える。

するとレジーはあたしとクラウドの顔を交互に見てきた。





「なに?その子、あなたの彼女なの?」

「かのっ…違う違う!違うよ!?」





あたしはぶんぶん手と首を振ってすぐさま否定した。

いやだってそんな誤解はさせちゃいかんでしょ!?
あたしは…そりゃちょっと嬉しいけど、でもクラウドの為にそんな勘違いは速攻解きます!!

とにかく全力否定!!

そうしてクラウドを見たら、なんか眉間にしわを寄せて、なんとも言えなさそうな顔をしていた。

…え。その表情は一体何。





「ふーん。ま、なんでもいいけど」





レジーはそう言って小さく笑い、自分のネイルを見ていた。





「確か、ナマエだっけ。まあ、貴女の手も悪くはなかったけど、私から見たらまだまだね。先に言っておく、私、負けたのこと無いの」





レジーの言葉は強気だ。

負けたことがない、か。
確かにあれだけ強ければ、それも納得できる気がする。





「負けて泣くなよ」





クラウドも強気で言い返す。
うん。その無敗記録も、もしかして今日で終止符、かもしれないよ?





「クラウド、勝ってね」

「ああ、任せておけ」





最後に一言応援。
クラウドはそれに応えてくれて、席に着く。





「そっちこそ泣かないでね、カードバウト!」





レジーの声が響く。
こうして観客たち大注目の中、クラウドとレジーのクイーンズ・ブラッドファイナルラウンドが始まった。

ふたりの戦いは接戦だった。

読み合いが凄く、どちらも相手の思い通りにはさせないと譲らない。

そんな勝負の結果、女神さまが微笑んだのは…。





「ありえない、こんなの…!」





勝敗は決した。
レジーは俯き、テーブルの下でぎゅっと拳を震わせる。

クラウドは、見事レジーに勝った。

勝った…!クラウドが勝った!!





「クラウド選手、まさかまさかの勝利です!予想を超えた勝利に、会場も大盛り上がりを見せています!」





ファイナルラウンドだけはチトフ船長が目の前で実況してくれていた。
その言葉通り、会場の盛り上がりは凄い。

クラウドは席を立つと、こちらに振り返る。
そしてフッと笑みを見せてくれた。





「カタキ討ち、完了だな」

「うん!クラウドすごい!すごいすごい!!やったー!!」

「!」





あたしは、かなり興奮してた。

だって、レジーの強さは身をもって知ってたし。

クラウド、本当に勝てちゃった!!

あまりにテンション上がって、両手を広げてクラウドに抱きつきかけた。
でも、すぐにハッとして手を引っ込めた。

や、やばいやばい。
つい我を忘れて…。

クラウドも多分ビックリしてた。

目を丸くして、咄嗟に受け止めようとしたのかちょっと手を広げてくれて…。
ご、ごめんなさい…。

まあ、クラウド以外の皆だったら…抱きついて喜んでたかもしれない。

でも流石にクラウドには出来ない。それはやばい。
しかもこんな大勢の前で。

でも、やっぱりすごい。その気持ちは変わらない。

あたしは引っ込めた手をぐっと握り、クラウドに賞賛を贈った。





「おめでとう、クラウド!」





その言葉にクラウドも小さく微笑んで頷く。

こうしてクイーンズ・ブラッド大会決勝戦は幕を閉じたのでした。



To be continued


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