要塞都市ジュノン



プリシラの協力により、あたしたちは上のジュノンに到着することが出来た。
ひとり操作室で船を上げてくれたクラウドとも無事に合流する。

全員が揃ったところで、様子を見ながら行動を開始した。





「警備はそれほど厳しくないな」





基地内を眺め、クラウドは言う。

あたしたちが潜入したのは、街中ではなく神羅の基地内。
まあ神羅の所有する船から乗り込んだから、それはそうだろうって感じなんだけど。

でもひとまず、そこまで警戒はしなくても大丈夫らしい。





「パレードの準備中かな?」

「はっ、俺たちに構ってる暇はねえってか」





首を傾げたエアリス。
バレットはどこか気に食わなそうだ。

警備手薄、いいじゃんね。





「私たちにとっては好都合だね」

「うん。ラッキーだよね、ツイてるツイてる!」





ティファとあたしは顔を合わせて頷いた。
するとレッドが辺りを見渡して言う。





「しかし、広いな。黒マントを探すのも一苦労だ」

「ここにはいないようだ。街へ行ってみよう」





クラウドはそう言って歩き出す。

クラウド、全然迷いなさそうだな。
結構慣れてそうな感じ。

神羅にいた時、ジュノンでも仕事してたのかな。





「わー、でっかい…!」





歩いて、ジュノン空港まで来ると何やらデカい乗り物が空に浮かんでいた。

あたしは思わず足を止めて見上げる。
するとティファがクラウドに聞いてくれた。





「ねえ、クラウド。あれは?」

「ハイウインド。神羅が威信を掛けて完成させた、最新鋭の高速飛空艇だ」

「飛空艇…!!」





クラウドの説明に目が輝いた。うん、自覚ある!

あれが飛空艇…!
話はちょっと聞いたことあったけど、実物見るとこれ凄い…!!





「船やめて、アレを頂くか」





本気か冗談か、バレットはそんなことを言う。
でもクラウドは無理だと首を横に振った。





「飛空艇を操縦できるのは限られたパイロットだけだ。乗組員も必要になる」





まああれだけの乗り物、そんな簡単に動かせるわけないよね。

もしもアレで自由自在に空を飛びまわれたら、きっと凄く快適だろうけど。

ううん、ていうか、一度でいいからいつか乗って見たいな〜、なんて。
まあ、そんなのは絶対叶わない夢だろうけどね。

とにかく、現実的なのは船だ。

あたしたちは空港を抜け、引き続き街に向かって進んだ。





「クラウド、ジュノンは詳しい?」





エレベーターに乗っているとき、エアリスがクラウドに聞いた。

皆の視線がクラウドに集まる。
クラウドは知っている知識を話し始めた。





「ここは、海底に魔晄炉を有する軍事都市。有事の際には、都市全体が要塞となり、海からの敵を迎え撃つ役割を担っている。空路と航路の拠点でもあり、神羅にとってはミッドガルに次ぐ重要な街だ」

「おおー、流石の知識ー」





あたしは素直に感心した。

流れるような説明。
いや普通に凄いなと。

褒めたらクラウドはちょっと得意気に笑った。

でもエアリスが聞きたいのはそういうことではない模様。





「へえ〜。美味しい食べ物とか、観光スポットとかは?」

「それは…知らない」

「そっか、クラウドらしいね」





エアリスはくすくす笑った。

さっきの得意げな顔はどこへやら。
クラウドは眉を下げた何とも言えない顔になっていた。

それを見たらあたしもちょっと吹き出した。

でも、微妙な顔しているのはクラウドだけではない。





「エアリス。観光しようなんて企んじゃいねえよな?」

「ま、まさか〜!」





怪しむようなバレットの視線。
エアリスは慌てて誤魔化していた。

あたしも出来るならジュノン観光はちょっとしてみたいけど。
だってミッドガルに次ぐ主要都市なら、ショップとかも色々期待出来そうじゃん!

ま、それ言ったら確実にギミックアームで頭ぶっ叩かれるけどね。





「あ、見て!あそこ」





エアリスは今度、エレベーターの下を指さした。

その声に皆で端に集まり、先を見下ろす。
するとそこには整列した神羅兵たちの姿があった。

なにやら指揮官?みたいな女の人が話しているのを聞いてる?

このエレベーターは箱型ではなく、欄干がついてるだけのタイプだから、周りも見えるし声も聞こえた。





「いいか、社長賞は我々ミッドガル第七歩兵連隊が頂く!ミッドガル流の洗礼されたフォーメーションをジュノン勢に見せつけてやれ!」





よく通る声。
兵士たちも「イエッサー!!」と威勢よく応える。





「ミッドガル…第七歩兵連隊…?」

「パレードの為にミッドガルから来たんだろうな」

「クラウド」





眺めて首を傾げたら、クラウドが隣に来て答えてくれた。

わざわざミッドガルから…。
そりゃまあご苦労様です、って感じ?

エレベーターが下に着く前に彼らは解散していったけど、なんだ色々気になるかもだ。





「さっきの人たち、パレードに出るのかな?」





エレベーターを降りながら、ティファが兵士たちが出ていった方を見つめる。





「新社長にいいところを見せたいってか?ケッ!」





バレットは相変わらず面白くなさそうな顔で不機嫌丸出しだった。
でも不機嫌の理由はどうやら今のことだけではない様子。





「大事になりそうで黙ってたが、やっぱり無理だ」

「なんだ」





クラウドが聞く。
するとバレットはあたしたちの顔を見渡し、その不満をぶちまけた。





「ルーファウスが近くにいるってのに、素通りなんて面白くねえとは思わねえか!」

「ああ…」





クラウドは言い分に納得したものの、その反応はえらく淡泊だった。
で、バレットは逆にヒートアップ。





「暗殺とは言わねえが、ひとことふたこと言ってやって、ついでにぶん殴るくらいしてやりてえ!」

「あ、いちぶ、賛成!」





すると、そんなバレットの言い分にエアリスはそう言って手を上げた。

いちぶ…?
皆が疑問の顔でエアリスを見る。





「タークスは、私たち、もう追わないって言ったのに、バイクの人は、保護するとかなんとか。ハッキリして欲しいな!」

「ああ、そういや…。それは確かに…そうかも」

「そうだよね」





あたしとティファはその意見に成る程と思った。

タークスは見逃すと言っていた。
でもローチェは、なんだっけ…エアリス救出特命部隊…?とかなんとか。

どっちだよ!とは確かに思う。





「でも、社長に会うなんて出来るかな…」





ティファは当然の疑問を口にする。

いやあまず無理だよね…。
直接話なんて出来るはずがない。

皆が黙ったその時、その沈黙を破ったのはクラウドだった。





「策はある」

「へっ…」





あまりにハッキリ言う。

あたし思わず間抜けな声が出た。
え、あ、あるの!?

皆も期待の目でクラウドを見る。





「パレードに乱入すんだろ!」

「いや、参加者はほとんどが兵士だからな。敵に回すには数が多すぎる」





意気揚々と乱入を口にしたバレットはバッサリ。
いやま乱入とかは流石にないでしょとは思ったけど…。





「パレードの一員として、ルーファウスに近づくんだ。それなら、ギリギリまで騒動にはならない」





クラウドの提案もなかなかのぶっ飛んだ策だった。

まさかのパレードの一員…!?
ってことは、神羅兵になりすますとかそういうことだよね?





「本気?」

「もちろん」





ちょっと笑いながら聞き返したティファに、クラウドは良い声で答える。

なんか今のカッコよかったぞ…。





「クラウド、名案!」

「悪かねえな」





エアリスとバレットはなかなか乗り気だった。
いやでも、確かにちょっと面白そうではあるかも…。





「うん、あたしも乗った〜!」





あたしも「はーい」と手を上げた。
クラウドは頷いてくれる。

そして意見がまとまったところで、クラウドはバレットとレッドXIIIに指示を出した。





「バレットとレッドは港までの経路と警備状況を確認してくれ。そしてもちろん、黒マントの捜索」

「おいおい!」





折角乗り気だったのに、別任務を言い渡されたバレットは不満を言い返す。
でもクラウドのその判断は至極真っ当な理由だった。





「神羅の制服を着ることになる」





そう言われれば、バレットは押し黙った。

まあ、大柄なバレットじゃ…それは難しよね、と。
そして当然、それはレッドも。





「妥当な提案だ」

「うるせえ」





レッドはすぐに納得。
バレットも渋々了承してた。





「じゃあ、行ってくる。まずは制服の調達だ」





クラウドはそう言って背を向けて歩き出す。

その後ろに、あたし、ティファ、エアリスはニコニコしながらついて行った。
それに気づいたクラウドは「え」と振り返る。





「興味、しんしん!」

「やる気、マンマン!」

「気合、じゅうぶん!」





ティファの言葉に、エアリスとあたしも続く。

うんうん!
あたしたち、張り切っちゃってますよー!って!





「あっちかな?」

「うん!」

「いこいこっ!」





3人でクラウドより先に歩き出す。
クラウドは若干呆気に取られてたけど、多分止めても無駄だと判断したのかそのまますぐについてきてくれた。

うん、その判断は正しいです!

こうしてあたしたちはパレードに潜入すべく、制服調達に繰り出したのだった。



To be continued


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