ミスリルの採れる洞窟



湿地帯の奥には旧国営のトンネル、ミスリルマインがあった。
そのトンネルはジュノンエリアへと通じている。

あたしたちは、ミスリルマインに足を踏み入れた。





「…あっ」





踏み入れた瞬間、クラウドが何かに反応した。
その様子を見たレッドXIIIが声を掛ける。





「セフィロスがいるのか」

「わからない」





クラウドは首を横に振る。

セフィロスは、この場所を通ったのかな。
でもあの黒マントの人たちは、何人かこの場所に入っていくのを見た。





「モンスター、いそうだね」

「いかにも」





エアリスが嫌そうに奥を見て、その言葉にティファも頷く。

薄暗く、人の気配のない洞窟。
それはまさにモンスターが好みそうな場所だろう。





「雑魚は適当にあしらう。深追いは禁物だ」





クラウドはあっけあかんとそう言ってのけた。
するとそれを聞いたエアリスが顔をしかめて言う。





「雑魚なんていないよ。私には、ぜーんぶ強敵」

「私も」

「ああ、俺もだ。クラウド、何とかしてくれ」





エアリスの言葉にティファとバレットも便乗した。

あたしもー、って言ってもいいかな。
いやでも何か「はあ?」みたいな顔で見られそうな気もする…。

あ、うん、何か凄く想像できるそれ…。

まあ完全に言いそびれたな…。
なんて思っていると、クラウドはこんな風に返す。





「2000だな」





なんと。
金とるんかーい、みたいな?

しかも結構いいお値段。

その返答にティファはくすりと笑い、バレットは眉間にしわを寄せる。

そしてエアリスは…。





「極上と普通の、間くらい?」





極上と、普通の…間?

一瞬何のことかわからなかった。
けど、すぐにハッとした。





「ああ…確かに!」





意味が分かったあたしは確かにと手を叩く。
エアリスはそんなあたしを見て「ふふっ」と笑った。

でもきっとその意味がわかったのは、あたしとエアリス、そしてクラウドくらいなものだろう。





「なんの話?」

「「もみ!」」





首を傾げたティファに声を揃えて答えたあたしとエアリス。

いやでもごめん。
これでも多分わからんよね。





「もみ?」





当然ティファは聞き返し、そして今度はクラウドの方を見る。

クラウドは反応に困っていた。
いやまあ、クラウド骨抜きにされてたもんなあ…アレ。





「行くぞ。各自、注意してくれ」





クラウドは誤魔化す様に先に進みだした。

あーあ…。
どうやらあまり言いたくはないらしい。

まあここでいつまでも止まってるわけにもいかないか。

あたしたちもクラウドを追い、ミスリルマインの中を進んでいく事にした。





「ここは元々、ミスリルを採ってたんだ。お前ら、ミスリルはわかるか?」





バレットはミスリルマインについて知識があるのか、歩きながらあたしたちにそう聞いてくる。

ミスリル…。
武器に使われてたり、そういうのは見たことあったはず。

でもそこまで馴染みのあるモノじゃないよね。





「う〜ん、聞いたことはあるかな」





現にティファはそういうレベルだった。

一方で、ちょっと知識があったのがこの二名。





「とても硬い」

「そして美しい」





答えたのはクラウドとレッドXIII。
まあ軍人だったクラウドと、レッドXIIIは流石の物知りみたいな?





「ふたりとも正解だ。しかもとんでもなく貴重だった。ここ以外で採れたって話は聞いたことがねえ」

「なんかバレット、妙に詳しいね」

「おう。まあな。俺は昔、鉱山で働いてたからよ。この業界はちーっとばかり詳しいぜ」

「ふーん」





聞いてみたらそう教えてくれた。
そういえば炭鉱で働いてたって聞いた事あった気がする。





「じゃあ、ミスリル探す?」

「あ。見つけたら、がっぽりお金持ち?旅の資金も潤っちゃう?」





エアリスとふたり、探すかと盛り上がる。
でもそんなあたしたちに対し、バレットは微妙な反応を示した。





「あんまりオススメじゃあねえな。神羅の技術で似たようなモノを作れるようになったんだ。とてつもなく硬くて、キラキラしたモノをよ」

「マテリア精製の応用だろうな」





クラウドが補足する。

マテリア精製の応用…。
確かにマテリアも、硬くてキラキラ?





「へえ〜、そうなんだ」

「クラウドもそういうの詳しいんだね〜」





エアリスと一緒にクラウドにも感心。
この辺はやっぱり流石の知識だよね〜って。





「たぶん」





でも最後に付け加えた一言にズッコケた。





「適当!?」





思わず突っ込む。
いやだってそんなもっともらしく言ったくせにそんな!?

クラウドたまにそう言うとこある…。

いや良いと思うけど。
そういうところも大好きですけど!!

まあでも、こうして皆で会話しながら進むのは嫌いじゃなくて。
むしろこういう時間があたしは好きで。

そうして歩いていると、前方に黒マントの人たちの集団が見えた。





「追うぞ」





クラウドが追いつくように駆け出したので、あたしたちも追う。

だけどその時、黒マントたちの足場が崩れ落ちた。





「あっ!」

「おいおいおい!!」





抜け落ちてしまった地面。
あたしたちは慌てて駆け寄り、その先を見た。

砂埃が舞う。
でも、それを抜きにしても、暗くて深くて全然底が見えない。





「無事だと良いな…」

「ああ」





胸の上で手を握り締め、黒マントたちを心配したティファ。
クラウドはその気持ちには寄り添うように頷く。

でも、彼は冷静だった。





「でも、深入りしない方が良い」

「うん…」





クラウドの忠告にティファも頷いた。

深入り…。
あんまり心配して、入れ込むのは良くない…。

それは確かにそうなのかもしれない。

だってそれはきっと、自分の身を危険に晒すことなのだから。

クラウドは前を見て、先に歩いていく。
あたしは、ついて行こうとして、でも振り向いてティファの表情を見た。

…目の前で人が落ちたら、そりゃ気になる、よね。

頷きこそしたけど、ティファの表情は晴れていない。

そんな横顔に、バレットも気が付いていた。





「だよな。気になるよな」





ティファに共感するように、穴を覗き込むバレット。
その声でクラウドの足も止まる。





「よし、俺が行く!」

「うん、私も行くね」





バレットが胸をドンと叩くと、ティファも同意する。
でもバレットはそんなティファを止めた。





「いや、こういう場所の歩き方にはちょっとしたコツがいる。素人は、悪いが足手まといだ」

「私も行こう。多少心得がある」





代わりにバレットに同行すると言ったのはレッドXIIIだった。
確かにレッドなら、こういう足場でもひょいひょいと歩いて行けそう。

ティファは不安げに、申し訳なさげにバレットを見る。

バレットはニッと笑っていた。





「じゃあ、お願い。ごめんね。ううん、ありがとう」





ティファはバレットにお礼を言った。
バレットはそれを受け取ると、穴に降りる前にクラウドに一声かける。





「他の黒マント、見失うなよ」





クラウドは了解した。
それを見ると、バレットとレッドXIIIは穴の中に降りていく。





「気を付けてね〜!」

「いってらっしゃーい!」





エアリスとあたしは手を振って、穴の中にそう叫んだ。

さて、じゃああたしたちも進まないと。
他の、落ちなかった黒マントさんたちを追いかけないとね。





「じゃ、行こっか、クラウド」

「ああ」






こうしてあたしたちは二手に分かれ、ミスリルマインを進むのだった。



To be continued


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