大切な人に会えますように



怪物を倒したあたしたちは、すぐさまコルネオが逃げ、レズリーが飛ばされた扉の向こうへ向かった。

もう、コルネオの姿はない。
部屋の中にあったのは、倒れこんだレズリーの姿だけ。





「大丈夫か」





クラウドが倒れこんだレズリーの肩に触れ、声を掛けた。

その声に気が付いたレズリーは目を覚ます。
そして体を起こすと、はっとしたように聞いてきた。





「コルネオは!?」

「すまねえ、逃がしちまった」

「…そうか」





バレットが謝ると、レズリーは首を横に振った。
自分も何もできなかったと、その表情には悔しさも滲んでいる気がした。





「また探すさ。どうせ他にやることもない」





そう言って、レズリーは立ち上がった。
でもその時、部屋の隅で何かを拾い上げたティファが言う。





「探すのは、コルネオでいいの?」





その言葉に、その場の視線がティファに集まった。

ティファはレズリーに近づくと、今拾い上げた何かをレズリーに握らせる。
それは先ほどレズリーが見せてくれたあのネックレスだった。

どうやら飛ばされた時に落ちてしまったらしい。





「大事な人なんでしょ?」





その言葉は、すとんと心に落ちる。

そうだね…。
探すのなら、それはコルネオじゃなくて。





「いなくなってから気が付くんだよなあ…お前はまだ間に合うだろ?」





バレットも同意する。
あたしも頷いた。

レズリーの話では、彼女はコルネオに選ばれた後に消えた。

ならきっと、どこかで無事でいるんじゃないだろうか。





「花言葉…どういう意味だったんだろうな」





レズリーは手の中にあるネックレスを見つめる。
花がモチーフの、可愛らしいデザイン。

彼女は別れ際、花言葉…と言いかけた。

あたしも何気なくその手の中の花を見た。

そしてふと…それが見覚えのある花だったことに気が付いた。





「あ…」





だから、思わず口から漏れた。
その声に皆が振り向く。

あっ、えっと。

注目されてちょっとたじたじ。
いやただ、エアリスのところで見た黄色い花と同じだなあって気が付いただけで。

すると、ティファがくすっと笑いながら傍にやってきた。





「ナマエ、あの花の花言葉、知ってる?」

「え、あっ、うん、多分わかる。あ、もしかしてティファも知ってる?あれ、お店に飾ってあったもんね」

「うん。あれ、エアリスがくれたお花だったんだね」

「あ、そうそう!そうなんだよね!」

「ふふ!お花なんて珍しいから、私もなんとなく調べたんだ」

「そっかー、あたしもエアリスに聞いたよ!」





ふたりで笑い合う。
そしてあたしたちはレズリーを見た。

さて、じゃあ本題の花言葉。

「せーの」とふたりで声を揃え、あたしとティファはその花言葉を伝えた。





「「再会」」





エアリスが教えてくれた、黄色いあの花の花言葉。
それは再会だった。

それを知れば、レズリーの彼女は何を思い、そのネックレスを返したのか…その答えも見えてくるんじゃないだろうか。





「…あいつを探すのが先だな。ありがとう」





レズリーはそう言って穏やかに微笑んだ。

花言葉。
彼女がそう言いかけたなら、きっとそれが願いだよね。





「おっと、約束忘れてねえだろうな」

「わかってる。あった、地上に出よう。上へ行く方法を教える」





とりあえず、事は一段落だろう。
バレットが少し冗談めいたようにこう言えば、レズリーは勿論と頷いてくれた。

そして彼はその部屋の隅に大きな麻袋を手にし、地上へ戻ろうと言った。





「こっちだ」





地上に戻ると、レズリーは出口のすぐ近くにあったフェンスの扉を開けた。

奥は開発地区かな。
人気はなく、建設の資材、機器などで溢れている。

レズリーはそこで、先ほど持ってきた麻袋を開いた。

そして中から取り出したのは、銃のような形をした機械だった。





「ワイヤーガンだ。撃ちだしたワイヤーを引っ掛けて上昇することが出来る。あの壁を越えれば七番街だ。ワイヤーがあれば、壁も瓦礫の山も昇って行けるはずだ。あくまでも上昇用だ。一度昇れば戻れないと思っておいた方がいい」





ワイヤーガン。
レズリーはそれをひとりひとりに手渡してくれた。

この地区の壁の向こうは七番街。
これを使えば、壁の向こうへ…そしてその瓦礫の山を登り、プレートの上に行ける。

ふむ。なかなか荒っぽい手段だ。
でもこれなら確かに上の街に行くことが出来る。

なんだかちょっと面白そうだし。

レズリーは、きちんと約束を果たしてくれた。





「上に行く前に、やりたいことは済ませておくんだな」





上に行ったら戻ってくることは出来ない。
そんな注意を聞きつつ、あたしたちは各々ワイヤーガンを腰のあたりにセットした。





「ありがとう」

「うん、ありがと、レズリー」

「俺たちもな、人を探しに行くんだ」

「そうか。会えると良いな」

「あんたもな」





そして、最後にそんな会話を交わす。

お互い、探している人がいる。
どちらも会えますようにと。

そんな願いを交わし、あたしたちはレズリーと別れた。





「行くか」





レズリーの背中を見送った後、バレットはそう言って壁を見た。

でもクラウドは頷かず、顎のあたりに手を当て少し考え事。
そんな様子を見たあたしはクラウドに尋ねた。





「クラウド、どうする?なにかやり残しある?一回、街に戻る?」

「ああ…一度買い出しに行こう。上に行ったら戻れない。装備は万全にしておきたい」

「それもそーだな」





クラウドの声を聞き、壁を見ていたバレットも引き返す。
確かに、神羅の本部に突っ込むなら準備は抜かりなく、だよね。

そこからもう一度、改めてやり残したことがないかを話し合った。





「ワイマーのとこにも一度顔を出しておくか。なにか情報があるかもしれねえ。こういう時、情報も武器だろ」

「あ、そうだね。それなら公園か…マーレさんの様子も見に行こうかな。バレット、私もついていく」

「おう。なら、クラウド。おめーはナマエと買い出ししてこい」

「ああ、わかった」

「ナマエ、買い物頼んでも良い?今メモに書くから」

「おっけー!任せて!マーレさんによろしく言っといてね」





やり残しを片付けるため、あたしたちは2班に分かれる事になった。

ワイマーさん達の所を見に行くバレットとティファ。
買い出しを任されたクラウドとあたし。

買い出しリストを渡された際、ティファにこっそり「ふたりの時間、少し楽しんでおいで」なんて耳打ちされた。

う、ううん…なんか気恥ずかしいぞ。

でもそうか…クラウドとふたりで買い物か…。
そう考えると、なんだか少し嬉しい気もした。

いやほんと、全然浮かれてる場合じゃねえんですけどね。





「ナマエ、行こうか」

「うん」





開発地区を出てバレットとティファと別れると、クラウドは少し微笑んでそう言ってくれた。

う…ぐ…。
もうやだ好きですうわぁああああん…!!





「ナマエ?」

「…う、ううん!なんでも!じゃあ行こ、クラウド!」





ぎゅうううううって締め上げられた心臓。
いやもうほんと…!ほんと!!

まあとにかく買い出しはしっかりやらねば。

そんなこんなで、あたしはクラウドと共に昼間のウォールマーケットを歩き出したのだった。



To be continued

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