高みの見物



ティファとエアリスは無事に第三研究室のサンプルテストを終えた。

出てきたふたりが制御盤…あの壁から横に飛び出すポッドを操作してくれて、中央端末から第二研究室までの通路が繋がった。
そうとなれば次はあたしたちの番。

クラウドは02のスイッチを操作する。
そして流れた「輸液確認、サンプルテストを開始します」のアナウンス。

こうしてあたし、クラウド、バレット、レッドは第二研究室へと向かったのだった。





「におうな」





足を踏み入れると、レッドがそう鼻を鳴らした。

におう…。
それってきっと、実験体の…ってことだよね。

奥に進んでいくと、運動場のような広さの場所に出た。
すると扉が閉まり、アナウンスとブザーが流れ始めた。





『テストを開始します。整備班は退避してください』





ブザーが合図のよう。
のっそりと奥の方にいたモンスターたちが立ち上がりだす。

よっし、ちゃっちゃっとやるよ…!!

あたしたちは全員戦闘態勢を整え、襲い来るモンスターに向かっていった。





「楽しんでいただけているかな」





フロアにいたモンスターを全部片づけると、上の方から声がした。
そこにはガラス張りの部屋からこちらを見下ろす宝条博士の姿があった。





「野郎、引きずり降ろしてやる」





バレットは腕の銃を構え、宝条博士に向かって撃った。
だけど、ガラスはビクともしない。

その向こうで宝条博士は薄く笑う。





「おっと、当然、強化ガラスだ」





…でしょうね。
そうじゃなかったら、こんなところで高みの見物なんかするはずないもの。

宝条博士は涼しい顔で、何やらデータをチェックしている様子。





「接触後も特に変化はなしか…」





一体何を見に来たんだろう。
その一言だけ残すと、宝条博士は部屋の奥の方に歩いて行ってしまった。





「おい、待ちやがれ!」

「そんなこと言ったって止まりっこないよ、バレット」

「ああ、行くしかないようだ」





怒鳴るバレットをレッドと一緒になだめる。

宝条博士が去ると、さっき閉じてしまった扉が再び開いた。
此処ですることはもうないから、奥に来いって誘導されてる感じ。

でも乗るしかない。

あたしたちは再び通路を進み、また先程と似たような作りの広い部屋に辿り着いた。





『テストを開始します。整備班は退避してください』





また同じアナウンスが流れる。

次は機械型。
多分、第一研究室でバレットと合流したときに戦ったのと同じタイプだろう。

一度倒したやつなら負けるわけない!
メンバーも同じだし、さっきので要領を得てる。

分担もしっかりし、今度も無事に破壊することが出来た。





「自慢のオモチャがガラクタになる気分はどうよ!」

「オモチャが壊れる様子は何度見ても飽きないね。まあ、こんなものか。次はあれだな」





バレットの挑発にも全く乗らない。

さっきの繰り返し。
今日ガラスの部屋でこちらを見ていた宝条博士はまた部屋の奥に消え、あたしたちも開いた扉の向こうに進む。

何回これを繰り返すんだろう。

そう思いながらまた次のフロアに進んだ時、今度はちょっと転機があった。





「おい!考えてるとこ悪いがよ!!」





次のフロアの強化ガラスの部屋にいた宝条博士。
なにやら難しい顔をしているところにバレットが銃を撃ちこむ。

でもやっぱり、強化ガラスに跳ね返される。

ただ、まだアナウンスが流れる前。

本来、整備班が退避するための出口。
宝条博士がいる部屋に繋がっているであろう扉がまだ開いてる。





『テストを開始します。整備班は退避してください』





宝条博士がパネルを操作し、アナウンスが流れる。
でもその直前に、レッドが扉に向かって駆け出した。

間に合う…!?

徐々に閉じていく扉。
でも、それを見たクラウドが機転を利かせ、ガラクタを剣で弾いて扉の間に挟んだ。

おかげでレッドは扉を抜ける。
そして宝条博士がいる強化ガラスの部屋へと辿り着くことが出来た。

レッド凄い!!





「ガウッ…!!」





宝条博士の前に立ったレッドは、そのまま博士に飛びつこうとした。
だけど、宝条博士の顔に焦りはない。

なぜなら、飛び掛かる直前、空中でレッドの体が硬直してしまったから。





「…!」

「レッド…!?」

「なっ!なにがどうなってやがる!」





レッドを空中で硬直させたまま、宝条博士は部屋を去っていく。

なに!?どういうこと!?
でもとにかく、早くレッドを助けに行かないと…!

そうあたしたちも部屋に向かおうとしたけど、始まってしまったサンプルテストがそれを許さない。





「っ、なにこれ!今度は何!」

「ナマエ、悪い!背中を見てくれ!その代わり、あんたの背は俺が守る!バレット、あんたは」

「俺は壁に背ぇ向けてっから気にすんな。援護は任せろ!」





今度の敵は、空間を歪ませてワープする厄介な敵だった。

見失って背中を取られたらまずい。
だから今回はクラウドと背中を合わせて戦った。

厄介だけど、早く片付けてレッドを助けないと…!

戦ったことのない敵だから、ちょっと苦戦する。
でもなんとか倒して、あたしたちは急いでレッドの元に向かった。





「クラウド!あれ!」

「っ」

「退いてろ!」





レッドの元に駆けつけると、硬直する彼の傍に何やら変な兵器が浮遊していたことに気が付いた。

多分、あれが動けない原因!

クラウドが破壊しようと剣に手を伸ばしたけど、その前にバレットが銃撃を浴びせてくれた。
その衝撃で、兵器は後方に下がっていく。

レッドの拘束も解け、彼はタン…と、やっと地面に足をつけた。





「レッド!大丈夫!?」

「宝条は?」

「すまない…逃げられた」

「いいよ、レッドが無事なら!」





あたしは彼の背に手を触れてそっと撫でる。
クラウドも頷き、「脱出に専念しよう」と言ってくれた。

テストする側ではなく研究員側の方に来たけど、そこからも出口はあるだろう。





「ねえ、クラウド。1回体勢整えよう?皆にケアルガ掛けるよ」

「ああ、助かる。やってくれ」

「うん!任せてー!」





あたしは一度、回復と範囲化のマテリアを組みにし、全員にケアルガを唱えた。

結構戦闘が続いてる。
この先も多分まだ戦うことになるだろうから、体制を整えてから進んだ方がいい。

そうして先を見る。

扉の先は暗い…。
一体何が待っているのか…。





「よし、行こう」





クラウドの声に頷き、あたしたちは進み始めた。



To be continued

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