眠る君の傍らで



「よし、じゃあここでクラウドの回復、待とう?」

「うん、ありがと、エアリス」





ベッドに横たわらせたクラウド。
ひとまず休ませてあげられる場所を見つけて、あたしはほっと息をつく。

あたしたちは今、エアリスの案内の元、エアリスが子供のころ過ごしていたという一室に身を寄せていた。





「ねえ、エアリス。あのらくがきって、エアリスが描いたの?」

「うん。そうだよ。懐かしいなあ。結構センスあるでしょ?」

「うん!やるなちびエアリス!めっちゃ大作じゃん!」

「ふふっ、まあね!」






小さな部屋。
あたしは壁にあったらくがきを見上げ、エアリスと話をした。

それは当時、幼い日のエアリスが描いたものだという。

そうしたものから伺える、誰かが過ごしたあと。
ここは昔、エアリスと…エアリスの本当のお母さんが過ごした部屋だった。





「ねえ、それよりナマエ。私、ナマエに確認したいこと、あるんだけど?」

「え?」





絵を何気なく指でなぞると、エアリスはちょっと真剣な顔でそう言ってきた。

え、なんだろ。
心当たりがなくて、首を捻り「なに?」と聞く。

するとエアリスはずいっと顔を近づけて聞いてきた。





「ナマエとクラウド、くっついたの!?いつの間に!?」

「へっ!?」





思わず声が裏返った。

え!?そういう話!?
そんな真剣な顔で!?

しかも逃がすかと言わんばかりに肩を掴まれる。

なななな…。

それにとどまらず、状況は更に悪化。
その声は部屋にいる皆にも聞こえてるから、一気に注目が集まってしまった。





「あっ、それ!私も詳しく聞きたいって思ってたの!」

「ティファ!?」

「ま、確かに、あのソルジャー様とどういう経緯でってのは興味あるわな」

「だよねだよねー!!」





ふふっ、と笑いながらこちらに駆け寄ってきたティファ。
壁際ではバレットもこちらを見てにやにやしている。

なんでみんなそんな興味深々だ!!?
あたしがそっち側ならそんなに興味深々には…っ、…なるかもしれないけど…!!

でも自分がそういう中心になるのはなんか凄く恥ずかしい!!

あたしは逃げ場を探す様に視線を泳がせ、床に寝そべるレッドへと助けを求める。
するとレッドは顔を上げ、こくりと頷きこう一言。





「そうか。やはりそういう関係だったのだな」

「やはりとは!?」





お前もそっちか!!
ていうかやはりって何!まだアナタと出会ってそんな時間経ってませんけど!!

まるで四面楚歌。

目の前にはにっこり微笑むエアリスの顔。

あたしは顔を両手で覆い、ううう…と項垂れた。





「もう、顔隠さないの。恋人になったっていうのは、そうなんだよね?」





もしもーし、とエアリスは顔を覆ったあたしの手を指で突きながら言う。

…まあ、そこは隠しても仕方ない…というか隠す部分でもないよね…。
あたしはそっと手を下ろすと、こくっと小さく頷いた。





「…うん」

「わあっ!」





ティファとバレットは知ってるけど、エアリスにちゃんと伝えたのははじめて。
あたしが頷くと、エアリスはパアッと顔を明るくさせた。





「やっぱりそうなんだ!そっか!よかったね、ナマエ!おめでとう!」

「エアリス…」





きゃーっ、とあたしの手を握りながら喜んでくれるエアリス。
隣ではティファもうんうんと頷いている。

こんなに喜んでくれるのか…。

ちょっと胸の奥がきゅーっとした。





「えー!いつからいつから?列車墓場とかの時は…違うよね?」

「えっ!ち、違う違う!それはない!」

「エアリスと別れた後、私たちエアリスのお家でお世話になったんだけど、その日の夜でしょ?」

「うう…」





ほぼほぼバレてるティファにより時期は特定される。
エアリスは「へーっ!」とかニコニコしてる。





「ティファ、ティファ!その時どんな感じだったの?」

「ふふっ、朝ね、なんだかふたりしてそわそわしてるから、どうしたのかと思っちゃって!」

「え〜っ!そうなんだー!ナマエ!どんな風に?どんな話、したの?」

「どんなって…、ちょっと風に当たりたくなって、でもやっぱ色々あったから…そしたらクラウドが様子見に来て話聞いてくれたってだけだよ…」

「「へ〜!」」





さっきからニコニコが絶えないエアリスとティファ。

いやもう、本当…なんの辱めだこれ…!!

ていうかクラウドだってあまり話されたくはないだろう。
自分が気を失ってるうちにペラペラ話されてたとか最悪か…!!!





「も、もう勘弁してください…!」





するっ…と逃げる。
そしてあたしは寝そべっていたレッドの首元にガバッと抱き着いた。

その時「何故抱き着く」とかレッドに言われたけど、嫌がられなかったので良しとする。

さっきからそのモフモフに触りたいと思ってたんだわよ。
もう、このモフモフで辱めに耐えたあたしを存分に癒してくださいまし!!





「ナマエ」

「…ん?」





しばらくモフモフ撫でているとレッドが軽く身じろぎながらあたしの名前を呼んだ。

それはいい加減にしろとかそういうのではなく、彼は何かに気が付きそれをあたしに教えてくれたのだ。
くいっと動いた彼の鼻の先にあたしは視線を向ける。

それはベッドに横になるクラウドを示していた。





「あっ」





あたしも気が付き立ち上がった。
そしてベッドに近づきクラウドの顔を覗き込む。





「うっ…」

「クラウド!起きた!」





眉をしかめ、呻いたクラウド。

気がついた!

ゆっくり開かれていくクラウドの瞼。
ぼんやりとした瞳と目が合う。

それを見てあたしが表情を明るくさせると、クラウドは掠れた声で囁いた。





「ああ、…また、会えた…な」

「…へ?」





会え、た…?
言われた言葉にきょとんとする。

ぼんやりとした瞳。
でもその表情は柔らかく、とても穏やかで優しい。

そんな顔に思わず心臓がドキリと跳ねた。

え、あっ、え…と…。
でも、また会えた…とは…。

そうして少し困惑していると、クラウドも意識がはっきりしてきたのか、ハッとしたよう目を大きく開いた。





「っ、…ナマエ…」

「クラウド?」





名前を呼ばれ、大丈夫?と尋ねるように首を傾げる。

これは…どうやら寝ぼけてたらしい。
クラウドも寝ぼけることがあるのかあ…なんて、ちょっときゅんとしたのは内緒だ。

でも、何か夢でも見てたのかな。





「クラウド」

「よかった、目覚めた」





そうしているとティファやエアリスもクラウドに声を掛ける。
バレットやレッドも一安心だと息をついていた。

あたしはクラウドに、簡単にここまでの経緯を説明した。





「クラウド倒れちゃったから、エアリスの案内で一旦ここに運んだんだ。大丈夫?」

「あ、ああ…悪い。……俺、ナマエにもたれて倒れた気がするんだが…」

「ん?ああ、うん、そうだったね」

「…平気だったか?」

「うん、ぜーんぜん!むしろ寄りかかってくれて良かったよ!バターンッとかいかなくてさ!」

「そうか…」





あたしだてに剣振ってませんから!
ぱしぱしと自分の腕を叩きながらへらっと笑って見せる。

するとクラウドもほっとしたように表情を和らげてくれた。





「ここは?」

「子供の頃、ここで暮らしたの」





クラウドが辺りを見渡すと、エアリスが答えた。
クラウドはベッドから起き上がる。





「お母さんとふたりで、ここで眠ったんだよ。部屋、あの頃のまま。毎朝お母さんだけが連れて行かれて、よくひとりで泣いてた」





エアリスはこの部屋の過去を口にする。

それは懐かしく、でもきっと…辛い記憶。

クラウドが目を覚ましたなら、当初の目的通り脱出の方法を探ることになる。
だけど、その前に…。





「エアリス。脱出の前に話してくれ。色々あるはずだ」





エアリスに歩み寄ったクラウドはそう口にする。
そして、その場の視線がエアリスに集まる。

エアリスは少し俯いた。

でも、ゆっくりと顔を上げて…あたしたちに話し始めてくれた。





「私は、古代種の生き残り。それは、もういいよね?あ、古代種って言うのは、神羅が付けた名前ね。本当は、セトラって言うの」





それは、エアリスがどうして神羅から狙われるのか…。
それだけじゃなくて、神羅、古代種、星、そして…本当の敵。

そんないくつもの運命が絡み合った…はじめての話だった。




To be continued

prev next top



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -