仲間の手引き



エアリスから話を聞き、あたしたちも一緒にこれからのことを考えると約束した。

するとその瞬間、部屋に渦巻いていたフィーラー達は消えた。

フィーラー…運命の番人。
決まった流れを変えようとする者の行動を修正する存在。

じゃあ消えた理由は、運命が正しい流れになったから…とかなんだろうか。

難しいこと考えるの苦手。
でも、星が力尽きる未来に向かって歩いているのなら、今消えたことってなんだかちょっと不気味に感じた。

いや、いたらいたで落ち着かないんだけどね。
ああもう、なんだかグチャグチャだ。





「…あれ?」





そんな時だった。
突然、部屋にあったモニターがつく音がした。

あの独特のザーッという砂嵐の音が部屋中に響く。

何事だと皆で見ていれば、パッと画面が切り替わった。





『ようやく見つけたぞ。おい、何をする!』






切り替わった画面に映ったのはドミノ市長だった。

でもそれは一瞬。
誰かが市長からカメラを奪う。

そして代わりに映し出されたのは…。





『やっと会えたッス!』





その姿、声。
映ったその人物を見て、あたしとティファとバレットは声を上げた。





「ウェッジ!?」

「ウェッジ!」

「どうして?」





そこに映し出されたのはウェッジだった。

あたしたちが驚いたと同時にウェッジは笑ったから、どうやらこちらの様子も向こうに届いているらしい。

ウェッジは七番街で救出してからエルミナさんにお願いしていた。
全然目を覚まさなかったから、心のどこかでずっと引っかかってた。

でも市長といるってことは今このビルの中にいるって事…?





「お前、大丈夫なのか?」

『エルミナさんのご飯がおいしくて』





バレットが心配すればウェッジはそうお腹を撫でながら顔を綻ばせていた。

どうやら食事が出来るまでには回復してるらしい。

…なんかむしろむっちゃくちゃ食べてそうだけど。

まあうん、エルミナさんのご飯は確かに美味しいよね。
アレが出て来たらちょっと調子悪くてもペロッと食べられちゃいそうだとは思う。

でも本当、元気そうでよかった。





『って、そんな話してる場合じゃないッス!もうすぐっ…』





ウェッジは何か慌てているようだった。
まあ敵陣だしほのぼのしてる場合じゃないのは当たり前だけど。

だけどその理由はすぐに理解することになる。
直後、急にドンッという大きな音がして建物全体がグラッと揺れた。

それはまるで何かが爆発したような衝撃だった。





『本家アバランチの作戦ッス。混乱を起こしてプレジデントを狙うっていう…』

『間に合わなかったな。今の爆破で警戒態勢に移行した』





ウェッジと市長が今の衝撃の正体を教えてくれた。

本家アバランチ…。
え!まさかよりによって今作戦…?!

でもそこで気が付く。
あれ、警戒態勢ってことは…それはつまり。





「え!ちょ、待って!それつまり脱出出来なくなるってこと!?」

「と、閉じ込められた?」





あたしはティファと顔を合わせて「嘘!」と、うろたえた。

いや待って待って!
それマズいし!マズすぎる!

そんなあたしたちの様子を見た市長はやれやれと首を振る。
そしてまだ猶予があることを手短に教えてくれた。





『慌てるでない、小娘ども。見ろ、研究施設内はまだ移動可能だ』

『屋上まで行ってください!本家のヘリが待機してるッス!』





市長とウェッジはモニターに地図を表示してくれる。
この部屋から屋上までの脱出ルート。

屋上に、ヘリ?
それはこちら的にはかなり有難い話だ。

でも、本家のと聞いたバレットは顔をしかめた。






「本家のヘリだあ?奴らが俺らを乗せるはずねえだろうが!」

『頭下げたッス!何度も下げたッス!』





どうやらウェッジはあたしたちの脱出に手を貸してくれるよう、本家と交渉してくれたらしい。

まだ怪我も全快じゃないだろうに…。
ひとりでそこまで動いてくれてたんだ…。

あまり時間は無い。
ウェッジは必要な情報だけをあたしたちに伝えると『それじゃあまたあとで』とモニターを切った。





「ったく、あいつ、勝手に動きやがって」





バレットは少しだけ怒ってた。

本家に頭を下げた事とか、多分色々。
でも一番はきっと、万全じゃないのに無茶したこと。





「でも、助かった」

「うん。ウェッジ、やるね!」





クラウドは有難いと言った。
だからあたしもそれに頷いた。

何だか少し、空気が軽くなったような気がする。
ウェッジが目を覚ましてくれたこと、それはあたしたちにとって間違いなくプラスだ。

こうしてあたしたちは市長とウェッジの教えてくれたルート通り、急いで屋上を目指すことになった。





「とにかく屋上に向かえばいいんだよな」

「宝条が逃げたエレベーターが使えるようだ」

「エレベーターってこっちだったか?」

「そうだ。宝条のにおいがまだ残ってる」





先を歩くバレットが聞けば、レッドXIIIがスンスンと鼻を使って道を教えてくれる。

まさかの!
人のにおいとか追えるんですか、あなた。

それって無茶苦茶お手柄じゃないか。





「わ、レッド!鼻効くんだね!」

「まあな」





あたしは素直にすごいねと褒めた。

レッドは基本クールだ。
でも褒めたら、ちょっと得意気にも見えた。

とにかく彼のおかげで迷う事もなくあたしたちは簡易エレベーターまで辿りつくことが出来た。

でも、乗り込んで降りたその先のフロアは、なんだか異様な雰囲気がしていた。





「なにがあったんだ」





一番にエレベーターを降りたバレットが怪訝そうに言う。

簡易エレベーターで上がれるのはひとつ上の階の研究室まで。
今戻ってきたのは、最初にエアリスが捕まっていたあのフロアだ。

感じた異様さ。
嫌なにおいと、ポッドの中にいたサンプルたちがいない。

その理由は、ポッドも装置もあらゆるものが破壊されしまっていたから。

とりあえず止まっても仕方ないから、警戒しながらも進んでいく。
そしてまたレッドXIIIに宝条博士のにおいを辿って貰うと、今度は破壊された瓦礫で道を塞がれた階段にぶつかった。





「この奥だ」

「どうすんだよ」

「どかすしかない」





バレットとレッドXIIIが瓦礫に手を掛けどかし始める。

でもその時、あたしはふと変な音が聞こえた気がして振り返った。

何…?なんだろう。気のせい?
いや…やっぱり何か聞こえるような…。

じっと耳を澄ませ、一応、クラウドにも声を掛けた。





「クラウド…」

「ん?」

「何か聞こえない?」

「え?」





そう言えばクラウドも耳を澄ませてくれた。

聞えるのは、何かの叫びみたいなモノ…それに、足音?

やっぱり聞こえる。気のせいじゃない。
近づいてくる!

クラウドも気が付いたらしく、ふたりで身構えた。

すると直後、あの七番街の地下で見かけたモンスターが数体飛び出してきた。





「こいつらが暴れたようだな」

「なーるほど!」

「納得してる場合か!」





どうやら研究施設がぐっちゃぐちゃになっていたのはこいつらの仕業らしい。
クラウドと納得してたらバレットに突っ込まれた。

でも、邪魔するなら蹴散らすまで!
ティファとエアリスも一緒に武器を構えてくれる。




「こっちは任せろ!」

「その間、瓦礫ちゃちゃっとどかしてね!」





瓦礫の撤去はバレットとレッドXIIIが続行。
あたしはクラウドと一緒にふたりにそう声を掛け、4人でモンスターたちを迎え撃った。

でも、あの七番街の地下施設、神羅のモノみたいだったから予想はしてたけど…やっぱり宝条博士が絡んでたのか。

腑に落ちて、嫌悪が増して。
そんなことを考えながら、あたしは剣を振るってた。





「よっし!」

「お疲れ様、ナマエ、こっちおいで。ケアルしてあげる」

「あ、エアリスありがとー!」





全部片づけ終わると、エアリスが回復するよと手招きしてくれた。
あたしは「わーい」と駆け寄って、お言葉に甘えて回復魔法を受ける。

そうして癒してもらいながら瓦礫チームの方を見ると、向こうもちょうど瓦礫をどかし終えたところだった。

バレットが「やったな」なんてレッドXIIIに手を差し出せば、レッドXIIIはパシッと尻尾の先をバレットの手に当てていた。

あ、ハイタッチああやるんだ。
でもレッドXIIIの尻尾は何故か燃えてるから、なんかちょっと熱そうだった。





「あった!戻ってきた!さっきのエレベーターだ!」





そして階段を進めば、さっきクラウドが倒れた場所である宝条博士が乗ったエレベーターまで戻ってこれた。

スイッチを押せば、エレベーターはすぐにやってくる。
開いた扉に、あたしたちはさっと乗り込んだ。

ちなみにクラウドは自分が最後に乗り込む形になるよう気遣ってくれた。
わりと、こういうのサラッとやってくれるというか…こういうところも良いよなあなんて、この状況下でもきゅんとしてしまったのはもう仕方ないと諦めた。

まあ、脱出の目処も立ったから、ちょっとは気持ち的にも余裕はあったのかもね。





「行こう」

「うん」





ボタンの位置に立ってくれていたティファが上の階を押す。
こうしてあたしたちはまだ行ったことの無いフロア、更に上層階へと足を踏み入れたのだった。



To be continued


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