悪党が真相をしゃべる時
手下たちを蹴散らし、レズリーの協力で装備を取り戻したあたしたちは急いでコルネオの部屋へと向かった。
「おい!誰か来い!この女に礼儀を教えてやれ!!」
オーディションをやった部屋…つまりコルネオの部屋の手前まで来たとき、コルネオの怒鳴り声が聞こえた。
どうやらクラウドはコルネオに一発かましたようである。
そんな様子を察しつつ、あたしたちはバンッと勢いよくコルネオの部屋の扉を開いた。
「お生憎様、あなたの子分は誰も来ないみたい」
中に踏み込んでティファが言う。
するとコルネオはベットの上で「なにこれ?」と間抜けな顔をしていた。
踏み込んでみての第一の感想。
怪しげな照明に趣味の悪い大きなベッド…。
見ているだけでいかがわしいその空間。
それを見たらオーディションで聞いた「今日のお嫁ちゃん」の言葉が頭をよぎって物凄く気分が悪くなった。
こんなところでずっとコルネオとふたりきりだったクラウドにはいくら男といえどお疲れ様としか言いようがない。
「クラウド!服!」
エアリスはレズリーが包んでくれた服の入った風呂敷をクラウドに渡した。
それを受け取ったクラウドはその場で急いで着替えはじめる。
うわお…生着替え…。
とか思わずそんなこと考えたけど、クラウドがドレスを脱ぐその様子に「ほひっ…おほほほほ…」なんて鼻の下を伸ばすコルネオの姿を見てスンッ…とした。
ちょっと待って!あたし、こいつと思考回路似てるとか絶対嫌なんですけど!!?
でもそれは決して女の子の着替え風景では無い。
クラウドはテキパキと着替えていき、その姿は彼本来の…男の姿へ戻る。
「はい、クラウド」
「ああ」
そしてあたしは最後に彼の武器…バスターソードを手渡した。
クラウドはそれを受け取るとカチャンと背中に収める。
その様子を見たコルネオはショックを受け、あんぐりと口を開けていた。
「男じゃねーか!!!なにがどーなってる!?」
まあ…完全にそういう対象で見ていたであろう女の人が男だったとかそりゃそうなるのかもしれない。
でもコルネオがショックを受けようがどうしようがこちら的にはどうでもいい話だ。
「質問するのはこっち。七番街のスラムで手下に何を探らせたの?」
「はあ?何の話だ?」
ティファは早速本題に入った。
でもコルネオも流石にそう簡単に話すわけはなくシラを切りとぼけていた。
そんなコルネオの態度にティファは一歩一歩圧を掛けながら近づいた。
「しらばっくれても無駄!もう一度聞くね?手下に一体、何を探らせてたの?言わないと…」
「切り落とすぞ」
クラウドが剣に手を伸ばしながら加勢した。
うわ、カッコイイ。
いやでも一体何を切り…いや、やめよう。
それを聞いたコルネオはベットの上で内股になりビクリと怯えた。
「や、やめてくれ!ちゃんと話す!なんでも話す!頼まれて、片腕が銃の男のねぐら探った!」
「誰の依頼?」
「ほひ〜!喋ったら殺される!」
片腕が銃の男…つまりバレット…アバランチのアジトをコルネオは探す様依頼された。
でもその依頼者の名前を出すのでまた渋る。
ティファは再び圧を掛けた。
「言いなさい!言わないと…」
「ねじり切っちゃおうか」
次に脅しをかけたのはエアリスだった。
エアリス、なんだかちょっと楽しそう。可愛い顔で言ってること凄いけど。
するとコルネオは再び内股になり「ほひ〜〜」と悲鳴を上げていた。
「神羅のハイデッカーだ!治安維持部門統括ハイデッカー!」
吐き出したその名前にあたしたちは驚いた。
だって神羅の治安維持部門統括って…思いのほかビックネームだったから。
ティファも驚いたようですぐに質問を重ねた。
「神羅?神羅の目的は?」
「それだけは勘弁してくれ〜!」
そこでまた渋り出すコルネオ。
もうまた脅されるだけだとわかってるだろうに。
「言った方がいいんじゃないかなー。言わないと…」
「すりつぶすよ」
今度はエアリスが優しく前座を請け負い、ティファがダンッと勢いよくベッドに足を置いてコルネオを脅した。
皆なかなかの迫力だ。
コルネオはまた「ほひいいいい〜ぃ!」という情けない悲鳴を上げた。
けど、そこで少し雰囲気が変わる。
その口元には微かに笑みが浮かび、なんだか余裕が出た様な…。
なんだこのオッサンって散々思ったけど、やっぱり一応はドンということなのかもしれない。
「ねえちゃん本気だな。しかたねえから教えてやるよ。神羅は魔晄炉を爆破したアバランチとかいう一味をアジトもろとも潰すつもりなのさ。文字通り、潰しちまうんだ。プレートを支える柱を壊してよ」
少し雰囲気の変わったコルネオはパンッと手で押し潰すような動きをしながらそう言ってニヤリと笑った。
プレートを支える柱を、壊す…?
言ってる意味が分からなかった。
だって、そんなの途方も無さ過ぎて。
ティファも同じだっただろう。
あたしとティファはベッドに身を乗り出し、コルネオに聞き返した。
「ちょっと待って!なにそれ!?」
「どういうこと?」
「わかんねえか?プレートがヒューッ、ドガガガだ!六番プレートの事故と一緒さ。六番街スラムの瓦礫は見た事あるだろ?今度は七番街があれになるってわけだ」
「プレート事故って…」
「…そんな」
六番街のプレート事故…。
それがどういうことなのかは知ってる。此処に来る前だって通ってきた。
七番街が、潰れる…?
言葉を理解した時、ヒヤッ…と背筋に嫌な寒気を感じた気がした。
「ティファ、ナマエ、クラウド、行こう!」
だからエアリスがそう呼びかけてくれた声で我に返った。
そうだ。早く行かなきゃ。どうにかしなきゃ!
そんな事実知ったら、じっとなんてしていられない。
あたしたちは急いで部屋を出ようとした。
「ちょっと待った!」
だけどその時、コルネオが呼びかけてきた。
一瞬足を止める。
でももうここまで聞いたらコルネオになんか用はない。
クラウドとあたしはその声を一蹴した。
「黙れ!」
「そうだよオッサン!もうあんたなんかに用はないんだから!」
「すぐ終わるから聞いてくれ」
もう必要な情報は得られたと思う。
だってこうなったら爆破を阻止する、それ一択でしょ?
それなのにまだ何かあるって言うの?
そうして振り返って見たコルネオは、意味の分からない質問をあたしたちに投げかけてきた。
「俺たちみたいな悪党がこうやってべらべらと真相をしゃべるのはどんな時でしょ〜うか?」
まるでなぞなぞでも出してるみたい。
それを聞いてきたコルネオは笑っていて、しかもノリノリでベッドの上で軽く踊ってた。
…なんか、腹立つな。
なんだろ、このド突きたくなる感じ。
なんか無性にイラッとした。
だけど、コルネオみたいなのが真相をしゃべるとき…?
んなもん知るか!!!
そう思った。
そう言ってやろうとも思った。
でもとりあえずチラッと隣にいるクラウドを見た。
いやクラウドはわかるかなと思って…。
クラウドはコルネオを指差し、その答えを口にした。
「勝利を確信している時、だろうな」
勝利を確信している時…?
それを聞いてあたしはきょとんとした。
ああ、なるほど…。
確かにそれなら別に話したところで問題は無いってこと?
だけど、この状態から勝利の確信?
4対1で?
しかもあんなに皆の脅しに怯えていたのに?
「おお!当ったり〜!!!」
コルネオは楽しそうに声を上げた。
やはりその顔には笑みが浮かんでいる。
でもクラウドが正解して嬉しい…とかでは無いはず。
むしろその笑みは不敵だ。
そうしてコルネオはベッドの傍に取り付けてあったレバーを一気に引いた。
「アーンド、グッバ〜〜イ!」
その瞬間、ガクン!という衝撃と浮遊感を感じた。
えっ…!なんて気づいたときにはもう遅い。
突然、今立っていた足場が消えた。
「ひゃっ…!」
何の覚悟もなく襲い掛かってきた落下の感覚に情けない声が出た。
けど、どうする術もない。
突然すぎて、体が何も反応できない。
「っ…」
一瞬、心臓が止まったみたいに感じた。
視界は真っ黒。
それはあたしが目を閉じてるからか、落ちている先が暗いからか、それすら考える余裕が無い。
それに、そこから先の記憶も曖昧。
あたしはコルネオの罠にハマり落ちて行く中、一体どこからか…その意識を手放していた。
To be continued
prev next top