教会からの脱出



神羅兵から逃げる為、教会の奥の方へと向かうことにしたあたしたち。
でも、そうして進んだ奥にも、あの幽霊たちは溢れていた。





「わっ、と…ちょ、邪魔!!!」

「ああ…何がしたいんだ?」

「道、塞いでるみたい」






奥にあった部屋に入ろうとしたら、ぶわっと幽霊たちに邪魔をされた。

何だお前!
通せんぼか!!

今朝も七番街スラムで道を塞がれたし、それと同じ感じ?
本当、一体何なんなんだとちょっとイラっとした。

ただ今回の場合は進ませないと言うよりは、進ませるけど道を選ばせないって言う感じに思えた。

道を変えれば、スムーズに進ませてくれる。

そうして奴らが導くのは上の方。
あたしたちは階段に誘導され、上へ上へと上らされていった。





「あそこ、屋根裏にあがれるよ」





エアリスがひとつ上の階にある梯子を指さした。
この教会は吹き抜けになっているから上の階や下の階の構造も見える。

クラウドとあたしも頷いた。





「ああ、穴から出られるな」

「じゃあ、誘導されてても上に行くのはとりあえず間違ってないんだね」





この教会の屋根には大きな穴が開いていた。
屋根裏まで行ければ、その穴から脱出出来るはずだ。





「キャッ!」





その時、エアリスが手を置いていた欄干が崩れ落ちた。
エアリスの体はぐらっと揺れ、吹き抜けの下に落ちそうになる。

あっ!

あたしとクラウドも慌てて手を伸ばした。
でもとても間に合わない…!

だけど、エアリスの体は落ちることは無かった。





「えっ…」





エアリス自身、戸惑いの声を零した。

彼女が落ちなかった理由。
それはあの幽霊みたいなものがエアリスの体を支え、体を元の位置に戻してくれたから。





「エアリス!大丈夫?」

「う、うん…助けて、くれた?」





あたしはエアリスに駆け寄って彼女の手に触れた。

エアリスはあたしに頷くと、助けてくれたその個体を見つめる。
あたしも同じようにそれを見た。

道を塞いだり、ドアを開かない様にしたり、エアリスを助けたり…。

やっぱりこれって偶然じゃなくて何か意図があってやってるのかな。
こいつらには、何か意思がある…?





「急ごう」





でもきっと考えたってわからない。
だからそう言って歩き出したクラウドを追い、あたしたちは屋根裏に続く梯子を目指した。

そうして進んでいると、その途中、細い板を一本だけ渡したような危なげな足場があった。

うわ、これはまたちょっと渡るの躊躇っちゃう感じ。
だけどいつ神羅兵が追ってくるかわからない今、そんなこと言ってる場合じゃ無い。





「クラウド、あたし先行くね」

「あ、おいっ…」





あたしはふたりより先にその細い足場を歩き出した。
クラウドが危険かもしれないって声を掛けてくれたけど、あたしは笑ってさっと先に進んだ。

確かに、もしかしたら崩れる危険はあったかもしれない。
でも、あたしが渡れれば人が通れる証明にはなる。

狙われてるのがエアリスなら、ギリギリまでクラウドが傍にいたほうが良いだろうし。

まあ別に綱渡りしろって言われてるわけじゃないし、高い所も別に平気だ。
だからあたしはさっさと進んでその足場を渡りきった。





「うん!大丈夫!さ、早く!」





無事に渡り切ったあたしは、くるっとふたりに振り返った。

うん、ひとりずつなら全然平気そう!
あたしがそう言えば「先に行く」とエアリスに声を掛け、次にクラウドが足場を渡った。

もちろんクラウドは難なく渡りきる。
そしてクラウドは振り返り、エアリスに向かって手を差し出した。





「大丈夫だ」





安心させるような、優しい声。

はー…やっぱクラウドカッコイイなあ…!

ちょっと頭が浮かれた。
いやだってカッコイイじゃん!!

でもその言葉は躊躇していたエアリスの勇気にも変わる。





「エアリス!大丈夫だよ!最悪最後の方とかこっち飛び込めば受け止めるし!」





あたしも声を掛けた。
むんっと両拳を握って笑顔を作って。

するとエアリスもふっと笑って頷いてくれた。

そしてゆっくり歩きだし、もう少しでクラウドの手に届きそうなところまで来る。

だけどその時、ガチャッと閉じられていたはずの扉が開いた。





「どこだ?」

「あそこだ!」





乱暴に開いた扉。
神羅兵たちが入ってきて、渡ろうとするエアリスが見つかった。

やば…!

あろうことか神羅兵たちはエアリスに向かって発砲してきた。





「おい、撃つな!」





さっきの負傷で兵士のひとりに支えられている赤髪がそう怒鳴った。

いや馬鹿!遅いし!!

撃たれた弾はエアリスには当たらなかった。

けど、それは足場に命中し、板にひびが入る。
そんなもの、人が乗っていれば簡単に割れてしまう。





「あっ、きゃあ!!!」

「ッ!」

「エアリスッ!!?」





あたしは名前を叫んだ。
でもそんなものはまったくの無意味だ。

ちょッ!!!?

崩れた足場に為す術はない。
エアリスはそのまま下の方へと落下してしまった。





「いたたたた…」





落ちた先からエアリスの声がした。

たまたま瓦礫が滑り台のようになったのが不幸中の幸い?
いや全然幸いじゃない!!!





「おいっ、大丈夫か!?」

「エアリス!!」

「平気!」





クラウドとあたしは慌てて声を掛ける。
すると瓦礫の隙間から見えたエアリスはこちらに振り返り返事をしてくれた。

けど。





「…じゃないかも」





周りを見渡し、自分の置かれた状況を見て、平気と言ったその声はしぼんだ。

エアリスの周りにはあの幽霊みたいなものがうようよとうろついていた。
そしてその先には、銃を構えた神羅兵。

うっわ、これはちょっと…絶体絶命のピンチ!?





「…っ、ちょ、うわああ!!?ばっ、ちょ!こら!神羅!おいこら!そこの赤髪スーツ!!女の子に何すんだコラ!!」

「俺が撃ったわけじゃねえっての…。…つーかそのあだ名は何だぞ、と」





あまりの事態にあたしはパニック気味にわーわー叫んだ。

なんか赤髪スーツはぶつくさ言い返してきてたけど。
いやいやアンタのお仲間が撃ったんだからね!?

ともかくこれは非常にピンチだ。
足場は崩れちゃったし、これじゃエアリスを助けにいけない!





「怪我なんかさせてみろ、お前、終わるぞ」

「はっ!」

「目的は、保護」





ひとりになったエアリスに近づいてくる神羅兵。

やばい、捕まっちゃう!?
そう焦ったけど、でもエアリスがすぐに捕まることはなかった。





「え?」

「なんだ?」





神羅兵や赤髪が狼狽えた。

それは神羅がエアリスに近づくことが出来なかったから。

エアリスの周りはあの幽霊たちが囲っていた。
まるで壁でも作るみたいに。

だから近づけば、神羅兵の体は跳ね返される。

しかもどうやら神羅兵や赤髪スーツにはあの幽霊たちの姿は見えていないようだった。
だからどうしてエアリスに近づけないのかって困惑してるみたいだ。





「逃げろ!!」





その隙をつくように、クラウドはエアリスに叫んだ。
声を聞いたエアリスはハッとその場から走り出そうとする。

けどそれを見た神羅兵のひとりがエアリスの足元に向かい発砲した。





「動くな!」

「だから撃つなって」

「しかし…!」





銃を向けられたエアリス。
赤髪スーツは撃つなと言うけど、これじゃとても逃げるなんて出来ない…。

幽霊たちのお陰ですぐに捕まると言う事は無いけど、逃げられないんじゃ意味ないよ…。





「クラウド、どうしよう…!?」

「くっ…、」





あたしは焦ってクラウドの腕をゆすった。
クラウドも苦い顔をする。

クラウドは辺りを見渡した。

すると打開策を見つけたのか、ハッと天井を指さした。





「ナマエ、あれだ」

「えっ…?」





そう言われあたしも天井を見上げた。

クラウドが見つけた、あれ。
それは天井からぶらさがるシャンデリアだった。





「あれを落とせば!」

「そっか…!うん!じゃあ、早く!」





シャンデリアの真下にはちょうど神羅兵がいた。
なるほど、落とせばエアリスが逃げるくらいの隙は作れるかもしれない。

そうと決まれば急げ!

クラウドは天井にあった格子を上手く使い、雲梯のようにしてシャンデリアに近付いていった。

あたしはそれを見つつ、エアリスが逃げて来たらすぐに合流出来る様に彼女が走ってくるであろうルートを探してそこで待った。

シャンデリアの前まで来たクラウドはそこで背中から剣を取り、勢いよく振って天井から下がる鎖を斬り断った。

落下するシャンデリア。
ガシャンッと音を立て、勢いよく床に叩きつけられて壊れた。





「今だ!」

「エアリス!」

「うん!」





落ちてきたシャンデリアに神羅兵は飛び退いた。
その隙をついてエアリスはその場から一気に駆け出す。





「エアリス!こっちだよ!」

「ナマエ!」





あたしはエアリスにこっちこっちと手を振った。
そして手を繋いで一緒に走り出し、クラウドとも無事に合流する。





「クラウド、ナマエ、ありがとう」

「さっさと出るぞ」

「早く行こう!」





そこからすぐ、あたしたちは目的だった梯子へと辿りついた。

さっさと登ってしまえ!
下の方で「待て!」とか声が聞こえた気がするけど待てと言われて待つ奴がいるかってんだ!

そんなもんは無視してさっさと登りきる。

こうして、あたしたちはやっと屋根裏へと上がることが出来た。





「はあー…やっと来れた〜…って、うげ…!」





屋根裏についてほっと一息…とはいかず。
そこにあった景色にあたしは顔をひきつらせた。

その理由は簡単だ。

何故なら屋根裏にもあの幽霊みたいな奴らがうようよとうろついていたから。





「ここにもいるのか」





それを見たクラウドも顔をしかめていた。

ああもう。
ホントなんなんだこれ…。

こいつらの得体が知れなさすぎて、胸のざわざわが消えない。





「こっち、来ませんように」





エアリスは両手を組んで、祈るみたいにそう言った。
あ、なんかそれ可愛い。

そう思っていると、そこにクラウドが一言。





「俺から離れるな」

「わ、かっこいい」





うん…今のはかっこいい。
エアリスの言葉に思わずコクリと頷いてしまう。

クラウドも悪い気はしないのか、ふっと小さく笑ってた。

まあともかく外に出なければ。此処まで来れたならもう少し。
あたしたちは屋根裏を進み、屋根に空いている穴に向かった。

その途中、撤退していく神羅の姿も見えてもう追われる心配はなさそうだとちょっと安心した。

そして同時に、あの幽霊たちもふっと姿を消した。





「消えた…?」

「うん、消えた」

「え、な、なんで…?いや別に消えてくれていいけど」





見えなくなったそれに歩きながら首を傾げる。
今回は助けてくれたのかなって思える部分もあったけど、でもやっぱり得体が知れなくていい気分のするものじゃない。





「なんだったんだ?」

「きっと…、…やっぱり、わからない。早く行こ」





何か言い掛けたエアリス。でも彼女はすぐに首を横に振った。

きっと…なんだろう?

確信をもって言えることでは無いのかな?
いやわかんないけどさ。

そういえばエアリスもあいつら見たの初めてじゃなさそうだった。
だからあたしは聞いてみることにした。





「ねえ、エアリスもあいつら見た事あるんだね?」

「うん。クラウドと初めて会った時、襲われたしね」

「えっ、そうなの??」

「ああ…」





エアリスがクラウドに話を振ればクラウドもまた頷いた。

ああ、そういえばクラウド、今朝も前に見た事があるって言ってたよね。
エアリスと会った時に見た事があったのか。

なんだか繋がって納得した。





「そっか…。まあでも、今あれこれ何か考えてもわかんなそ。考えるのやーめた」

「軽いな」

「だってわかんないこと悩んでも仕方ないもん。また触れる機会があったらその時考えるよ〜。案外もう出ないかもしれないし。いいの、今はそんなもんよりエアリスと会えた喜びに浸るの〜」

「わあ。ナマエ、喜んでくれてるの?」

「もっちろん!」

「ふふっ!嬉しいなあ!うん、私もナマエに会えて嬉しい!」





わからんことより楽しい事を考えた方がいいでしょうと。
そんな風にエアリスときゃっきゃする。

クラウドはちょっと呆れたように溜息ついてたけど。

まあ、もう穴はすぐそこだ。
とりあえず皆無事に外に出られたから、今はそれを喜ぼうと思った。



To be continued


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