御縁結び



フィルター交換、最後の一件は武器屋さんだった。

だけど、最後の最後に厄介事。
武器屋のおじさんはフィルターに効果が無かったから料金は払わないと集金を突っぱねてきた。





「世の中ナメてるんじゃねえぞ!」

「払うよな?」





ティファじゃ埒が明かないから、怒鳴るおじさんにクラウドが一言、睨みを利かせて言い放つ。

わあ、カッコイイ。

そんなこと思ったあたしは多分暢気だ。

でも流石。やっぱり男の人が出ると正直少し違うっていうのはある。
武器屋のおじさんはチッと舌打ちし、クラウドにフィルター代を支払った。

これにてフィルター交換の集金任務はすべて完了だ。





「はー、これで終わったね!お疲れ様!」





あたしは手を叩き、終わりを喜んだ。
するとクラウドも「ああ…」と少し一息つくように頷いてくれた。





「バレットの集金はいつ終わるんだ?」





クラウドはバレットの方はどうなのかとティファに聞く。

クラウドの今回の報酬は2000だったらしい。
昨日支払われた分と今のフィルター交換でもまだ届かない。

残りは今バレットがかき集めてるらしいけど、それにはまだもう少し時間がかかるみたいだ。





「今晩の開店前には。それまでまだ時間があるけど、どうする?」

「そうだな…」





バレットが戻るのはセブンスヘブン開店前頃。

朝から集金してたわけだから、今はまだ全然日も高い時間だ。

持て余した時間をどうしようかと考えだすクラウド。

でもティファの方はバレットが戻る時間も集金が終わる時間もおおよそわかってたはずだ。
なら時間が余ったことも、きっと想定の範囲内。





「あのね、アイデアがあるんだけど聞く?」





だからティファはそうクラウドに尋ねた。
そして同時に、あたしにも笑みを向けてくる。

あ、どうやらあたしを呼んだ理由はこの辺にありそうな感じ。

ティファはクラウドにこんな提案を持ちかけた。





「本格的になんでも屋を始めるなら、まず、縁を作るべきだと思う。御縁はお金より大事だから」

「スラムの心得か」

「うん。縁が仕事を呼んで、いい仕事をすれば評判が立って、それがまた縁を呼ぶの」





ティファはそう言うとあたしの傍に駆け寄ってきて、トンと軽く肩に触れた。





「ナマエを連れてきたのはね、その辺のこと手伝って欲しいなって思ったからなんだ。ナマエとの縁が、まず一歩。って言っても、そこは作る前に自然と縁があったみたいだけどね。ふふ、ナマエとはもう打ち解けてるし、本当良かった」





打ち解けてる…。

そう言われてあたしはクラウドを見た。
するとクラウドの方もあたしを見てて目が合った。

まあ、あたしはクラウドと一緒にいることに気まずさとかは無いな。

むしろ楽しいし、それって良い縁があったって事なのかな。
そう考えると嬉しいかも。

だからあたしは目が合ったクラウドに「ふふー」と笑った。
するとクラウドはちょっと言葉に困ってるみたいに少しだけたじろいだ。

でも否定しないところを見るとクラウドの方も気まずさとかは無いんだろう。

うんうん、なんだかとっても嬉しいぞ!





「ん、まああたしが役立つならいくらでも協力するよ!うん、あたしに手伝えることあるなら喜んで!」

「ふふ、ありがと!ナマエにはわりとそう言う…今クラウドに必要な縁、あるんじゃないかなって思って」

「んー、まあ確かに、多少はあるかも?」





あたしは少し考えて、そして頷いた。
いや、そこまで大層なものじゃないけど、思い当たる節は何個かあるかもって。

するとクラウドは不思議そうにあたしを見てきた。





「ナマエに?」

「あー、んーとね、あたし腕にちょっと自信があるって言ったよね?だからわりとモンスター退治とか頼まれる事があるんだ。っていっても、顔馴染みの人からくらいだけど。元ソルジャーならクラウド強いんだよね?」

「まあ、そうだな」

「お、クラウドも自信あり、だね!うん、だったら腕に覚えがある人ってわりと重宝されるし、そう言う人たちに紹介したりとかなら、ちょっとは手伝えることはあるかも」





最初は小さな縁からでいいのだろう。
それが少しずつ少しずつ広がって、評判を呼んでいく。

モンスター退治の依頼が来たとき、元ソルジャーなんて単語を出せば、わりと興味は持ってもらえるのかもしれない。

でも今は特に頼まれごともないし…。
あたしはうーん、と考えた。





「んー、こっちから動くんで一番手っ取り早そうなのは自警団で話を聞く…とかかな?」





考えた結果、ぱっと思い浮かんだのは自警団の存在。
するとティファも似たようなことを考えていたらしく「だよね!」と賛同してくれた。





「うん、私も自警団で縁繋がらないかなって思ってたんだ。自警団の仕事を肩代わり。ナマエもたまにやってるし…ほぼボランティアだけど、縁は繋がるよ」

「…やってみよう」





クラウドはあたしたちの提案に乗ってくれた。
うん、ならこっちもお手伝いしよう。そうしてあたしとティファも頷く。





「ナマエ、詰所はさっき誰もいなかったよね」

「うん。じゃあ、上?」

「だね。行ってみよう」

「クラウド、こっち!」





こうしてあたしたちはクラウドを自警団に紹介すべく、彼を案内した。

武器屋の2階。
そこには今日の自警団の当番がいる。

さてさて今日の当番は…。
そうスペースを覗けば、そこにはクラウドも知っているであろう顔がふたつあった。





「あ、ビッグスとウェッジだ〜」

「おう、ナマエ」

「ナマエちゃん!どうしたッスか?」





迎えてくれたのはアバランチのメンバーで自警団でもあるビッグスとウェッジのふたり。
あたしに続いてティファとクラウドも入ってくる。

となれば、ふたりの興味も自然とクラウドに向いた。





「もしかしてクラウドさん、入団希望ッスか?」

「場合によってはな。自警団は何をするんだ?」

「あー、色々あるけどまず、居住区に紛れ込むモンスターを退治したり、住民に自衛法を教えたり、それがメインだ」

「自分の身は自分で守る。これ、スラムの心得ッス!」





ふたりは簡潔に自衛団の仕事内容をクラウドに説明してくれた。





「ナマエもたまに手伝ってくれてる。こいつの腕っぷしときたら…悲しかな、俺らより全然頼りになるからな」

「ナマエちゃんに護身術教わりたいって女の子も多いッスよ」

「…本当にそうなのか」

「あー!!疑ってるー!!」





褒めてくれたビッグスとウェッジの言葉を聞き、信じられない目でこっちを見てくるクラウド。酷い!!
うーん、ここに来るまでティファやマーレさんも肯定してくれてるのになあ。

まあ実際クラウドの前で戦ってないからアレなんだけど。

そんなやり取りにティファはくすくす笑ってた。





「クラウドには実績が必要なの。良い評判、良い御縁。それを自警団で作れないかなと思って」





ティファはビッグスとウェッジに本題を持ちかけた。

そうだ。こういう系の話なら、ビッグスとウェッジがいたのはかなりラッキーな気がする。
現に早速、ふたりは話に食いついてくれた。





「もってこいの話があるッス!」

「俺たちじゃ、お手上げのモンスターだ。ナマエに相談するってハナシも出てたんだが…やっぱ気ィ引ける部分もあるしなあ」

「えー!なにが?」

「お前なあ…自分より年下の嬢ちゃんにモンスター退治依頼するんだぞ!?万が一、大怪我して帰ってきたらなんて思うとこっちは気が気じゃねえの!」

「えー…ひとりで無理そうって思ったら別に無茶しないよー?そこまで馬鹿じゃないもーん」

「わーってる、わーってるよ、そんなもん!」





ビッグスにガシリと肩を掴まれてなんか凄い言われる。

ビッグスは心配性だよなあと思う。
そんなんだから考えすぎて熱出すんだ。

まあいいお兄ちゃんみたいなもの、なんだけどね。





「でもそう言いながら結局ナマエちゃんに頼っちゃう部分多いんスけどね。男としては立つ瀬も無いッス」

「そこに来て元ソルジャー様なら、ってワケだな。あんたが強いのはよくわかってるし、ナマエについてくれるってだけでもこっちの気持ちが違う。金は出せないが、俺らなりの礼はする」





そう言いながらビッグスはクラウドをまじまじと見始めた。
いや、正確にはクラウドが背負っている剣…かな?





「そうだな…まずは、その剣。改造してないだろ?」

「ああ。小細工なんていらない」





なんか、ちょっとキリッとした顔でそう言ったクラウド。

なんで今そこカッコつけたんだろう。
なんかちょっと面白かった。

でも、確かに改造はして無さそうだ。





「それ何かの誓いか?改造すれば、あんたもっと強くなるぜ。おせっかいだろうけど、手順を教えるな」





とりあえず聞くだけは聞こうと思ったのか、クラウドはしぶしぶ背中から剣を外した。

とても大きな剣。
実は、ちょっとよく見てみたいなってずっと思ってたり。

だからあたしはちょろっとクラウドの傍に寄った。





「わあ、やっぱおっきいね!実はさ、クラウドに最初に会った時からじっくり見てみたいって思ってたんだ」

「この剣をか?」

「うん。あたし、武器とか見るの結構好きだよ。だから改造もね。悪くないよ?どうしたら強くしてあげられるかな、もっとうまく使ってあげられるかなって考えるって事だもん」

「……。」





そうしてビッグスの改造指導にあたしも混ぜて貰ってふたりで色々クラウドに教えた。
で、一通り教え終わったところで次がメイン。

クラウドのなんでも屋御縁結びだ。





「それから、俺らなりの礼その2。なんでも屋の宣伝だ」

「ウェッジがいれば、すぐにスラムに知れ渡るよ」

「クラウドさんの為なら、腹ペコでも街中を練り歩くッス!」





ビッグス、ティファ、ウェッジの順。
これで大丈夫、大船に乗ったつもりで任せておけって感じで各々クラウドに笑い掛けた。





「で、モンスターはどこにいる」





そしてクラウドはモンスターの居所を尋ねた。
お、やる気満々。





「ガレキ通りだ。頼んだぞ」





ビッグスはクラウドに場所を伝えた。

ああ、ガレキ通りか…なるほど。
それを聞いてあたしはなんとなく納得した。

なんというか、やっぱりあそこかーって感じかな。





「クラウド、一緒に行くね」

「はい!あたしも一緒に行く!」





ティファとあたしは同行するとクラウドに手を上げた。





「ひとりで十分だ」





でもクラウドはそうバッサリ。
ひとりで十分、確かにモンスター退治に関してはそうなのかも。

だけど…。





「でも、道知らないでしょ?」

「…頼む」





ティファの一言で撃沈。
クラウドは少し顔を逸らしながら小さな声でそう言った。





「ふふ、任せて。スラムで一番のガイドよ!」





ティファは少しだけ笑って、快くクラウドのガイドを引き受けた。
で、一方であたしは…。





「ふっ…、あははははっ!!」

「っ…だから、あんたは笑いすぎだ」

「わー!ごめんて!あはっ、でも、だってだって!!」





またも結構ツボに入って笑ってたらクラウドに睨まれた。

いやいやだって面白いじゃんか!!
はー…もう。なんだろ、クラウドって年上だしとってもカッコイイけど…なんか可愛いなあとかも思える気がする。

とか言ったらまた絶対睨まれるだろうから言わないけどね!





「ふふふ…でも、あたしも手伝うよ。もともとあたしに来てた依頼っぽいし、それに、クラウドの強さがどんなもんか、あたし知らないもんね〜?」

「…言ってくれるな」

「へへ、さっきのお返し!で、あたしがどれくらい戦えるかもクラウドに見て欲しいな!元ソルジャーさんのお眼鏡に適いたいです!ってね」

「…わかったよ。じゃあ、行くか」

「やった!」





クラウドから同行のお許しを貰った。よっしゃ!
てなわけで、いざガレキ通りへ!

こうしてあたしはクラウドとティファと一緒に、モンスター退治へと向かった。



To be continued


prev next top



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -