きみへの想い | ナノ

▽ デビルロードを抜けて


「あたし、デビルロードって初めて通るよ」

「そっか。ここを通ればバロンまであっという間だからね」





試練の山でパラディンの力を授かったあたしたちは、もう一度ミシディアにへと戻り、長老さんにセシルの意思を認めて貰って、デビルロードの封印を解いてもらえる事になった。

これでやーっと、バロンの戻ることが出来る!

善は急げ、っということで。
ローザやカインのことも気になって仕方ないし、あたしたちは休むことなくすぐにデビルロードを通る事に決めた。

でもセシルとあたしの後ろには、3つの影があった。





「これでアンナの仇を討つ事が出来る…!奴だけはわしがメテオで倒す!」





ひとりはテラさん。

セシルがパラディンになった時、それと同時に究極の黒魔法メテオの封印も解けた。
その力を手に入れたテラさんは拳を握りしめ、強く意気込んでいた。

心強い、といえば心強いけど…。
なんて言うか…少し、怖くも感じた。





「セシル…。テラさん…大丈夫なのかな?」

「……娘さんを失った悲しみは、大きいだろうからね…」

「そうなんだけどさ…」

「…怖い?」

「ちょっとだけ」





こそ、とセシルに耳打ちすると、セシルも眉を下げた。

ミシディアの長老さんが言っていた。

憎しみはその身を滅ぼすだけだと。
…テラさんもそれをきっとわかっている…。
だけど、その憎しみをどうすることも出来ないのかもしれない。

自分の命に代えてもゴルベーザを…倒す。
アンナさんの仇を討つために…。

そして、そんなテラさんの他に残るふたつ…。





「で、ポロムとパロムは本当によかったの?」





くるっ、と振り返った。
視線の先は小さな頭ふたつ。





「なんだよ、ねーちゃん!おいら達の力知ってるだろ!」

「そう言う事ですわ!」





踏ん反り返った双子の魔道士。
あたしはそんな彼らの前にしゃがみ、にやっと笑った。





「とか何とか言って、冒険したかっただけじゃないのー?」

「は、はしゃいでるのはパロムだけです!」

「…パロム、ヒャッホーとか言ってたもんね…」

「な、なんだよ!文句あんのかよ!」





セシルの見張りだったふたりは、セシルがパラディンになれた時点で役目は終了だった。

でも、ふたりはこの先にもついてきてくれた。
長老さん曰く、試練の山がポロムとパロムを受け入れたのは運命かもしれないから。

だからあたしたちに手を貸してくれることを約束してくれた。





「それにしても…この剣に刻まれている文章も気になるし…、色々課題も増えたね」

「ああ、ミシディアの言い伝えだっけ?」





セシルがパラディンになった時、同時に授けられた剣があった。
彼がかざしたそれを、あたしはひょこっと覗き込んだ。

その剣には、とある文章が刻まれていた。





竜の口より生まれし者
天高く舞い上がり
闇と光を掲げ眠りの地にさらなる約束をもたらさん
月は果てしなき光に包まれ
母なる大地に大いなる恵みと
慈悲を与えん





正直な感想を言っちゃうと、なんのこっちゃ…って話。
あたしにはさっぱりだ。

でもこの文とまったく同じ内容の物がミシディアにも言い伝えとして伝わっているらしい。

ミシディアの長老さんもその言い伝えが何を示しているのかはわからないらしいけど。
だからそんなもん、あたしなんぞがわかるわけがないっていうね。

だけどミシディアの民は代々その言い伝えの為に祈れと言われているらしい。
そして聖なる輝きを持つ者を信ぜよ、と。

聖なる輝きを持つ者。
恐らくそれはセシルの事だろうからって。

セシルがコレを授けられた以上、そこには何か意味があるのかもしれない。





「ま!ナマエねーちゃんの言ってた竜騎士ってのがどれほど腕の立つ奴なのかってのも気になるしな!」

「ふふ、期待してなよ〜?」





へん、と鼻を鳴らしながらそう言ったパロム。

今度は口を滑らせない様に、きちんと気をつけてくれたみたいだ。

うんうん、よしよし。いい子だ。
あたしはそんな意味を込めてトン、とパロムの頭を小突いた。

するとそれを聞いたセシルはあたしに優しく微笑んだ。





「カインかい?」

「もっちろん!」

「ははっ、本当にナマエはカイン贔屓だなあ」

「うふふ、とーぜん!」

「でも、うん。そうだね。カインは強いよ?」





同意してくれたセシル。
それを聞くとパロムとそしてポロムも「ふーん」と妙に納得したみたいだった。





「そのカインさんと、そしてローザさんと言う方を助け出すために、私たちも出来る限りのことしますから!ね、パロム?」

「へっ、まあそういうこと!」

「ああ、頼りにしているよ。ね、ナマエ」

「うん!そうだね」





セシルの言葉と、頷いたあたしに双子は笑った。

事実、まだまだ小さいふたりだけど魔法の腕は確か。
お世辞もなにもなく、本当の意味で頼りになるから。





「案ずるな。わしもついておる」





そして、それに重ねる様にテラさんも。

うん。きっと大丈夫だよね。
だって、こんなにも力を貸してくれるという人がいるのだから。





「さあ、バロンに向かおう」





こうしてあたしたち5人はデビルロードにへと足を踏み入れた。
目指すは、あたしたちの故郷バロンへ。



To be continued

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