最後の仲間


「ケッ!最初は飛空艇、次はロケット。今度はタイニー・ブロンコか。神羅カンパニーは俺様から宇宙を奪っただけでは足りずに今度は空まで奪う気だな!」

「おやおや…今まで、君が空を飛べたのは神羅カンパニーのおかげだ。それを忘れないでくれたまえ」

「なんだと!」





扉を開けるとシドとルーファウスの言い争っている声がした。
まあ争ってるっつーよりかはシドが怒鳴ってルーファウスがやれやれって感じだけど。

あたしはその様子を陰から伺っているクラウドの肩を叩き、腕を引いて艇長邸の中に引き入れた。





「んふふ、わかった?ルーファウスの目的」

「ああ…」





扉を閉めて尋ねればクラウドは頷いた。

つまり、ルーファウスの目的は宇宙開発の再開じゃない。
この家の裏にある、タイニー・ブロンコだったってハナシだ。

それがわかったところで、あたしは家の奥を指さした。





「パルマーが持ってくってさ、クラウド。どうする?」

「…行くぞ」

「がってん!」





話を聞いたクラウドは裏庭に向かっていく。
あたしたちもそれを追いかけ、タイニー・ブロンコの調整をしているパルマーの背中を見つけた。





「うひょ…なんでわしがこんなこと…わし、宇宙開発部門総括…」

「そのタイニー・ブロンコは俺たちがもらう」





クラウドが声を掛けると、パルマーは振り返った。
そしてまじまじとこちらを見て来る。





「お前らどこかで見たな……そうだ!神羅ビル!プレジデント神羅が殺されたときだ!うひょ!」





さっき家の中ではちっとも気が付かなかったけど、ここでやっと気が付いたらしい。

いやー、すっとぼけてますねえ。
ま、別にそんなのどーでもいいんだけど。

パルマーは「警備兵!」と叫びながら魔晄銃を取り出した。

でもクラウドは早い。
撃たれる前に一気に距離を詰め、ぶんっと大きく大剣を振るった。





「うひょー!!!」





間一髪で避けたパルマーはどすん、ぐるん、と転がった。





「おー、クラウド、すごいすごい、はやーい」

「ナマエ、呑気ね」





流石の戦闘スキル。流石の早業にあたしはぱちぱちと拍手した。
隣でティファに苦笑いしてたけど。

さてさてここからどうするか。

そう思ったその時、ぶんっとその場に風が巻き起こった。





「あ」





風が吹いてきた方を見上げる。
その原因はタイニーブロンコが動き出したからだった。

さっきパルマーがいじってたからね。

ゆっくりと回り始める機体。

クラウドも少しそちらに気を取られると、その隙を狙ってパルマーは魔晄銃を放った。
まあクラウドもそこまで油断してないから剣でしっかり防いでたけど。

でもそこでパルマーは立ち上がり、その場から逃げかえっていった。

ただ…。





「あー…前方要注意ー」

「え?」





ぽつっと呟くと、隣のティファが聞き返してきた。

でもその理由はすぐにわかる。





「うげっ!!」





響いた悲鳴。

急に道路に飛び出したパルマーは、神羅のトラックに跳ね飛ばされた。

つっても死ぬわけじゃない。
ゴロンゴロンと転がって、パタッと気を失った。

「統括ー!!?」なんて神羅兵が慌てて救護に向かったし、まあ大丈夫大丈夫。
いやそれにしたってトラックに轢かれて頑丈だな?とは思うけどね。

ま、なんにせよ、こっちもそちらさんをあまり気にしている暇はない。





「よっ、と」

「えっ、ナマエ!?」

「なにしてるの!?それ、止まらないよ!?」

「うん!止まらないね!ほら、ふたりも早く早く!」





あたしは動いてるタイニー・ブランコに手を掛け一足先に乗り込んだ。
下でティファとエアリスに心配されたけど、これね、早めに乗っちゃうが吉だから!

すると直後、クラウドも身軽に飛び乗ってきた。





「おー、クラウド身軽じゃーん」

「馬鹿。ちゃんと捕まっておけ」





やるぅ〜♪みたいな感じで言ったらそう返された。

まあ確かに。
落ちたらえらいこっちゃなので言われた通りに捕まっておく。

そしてクラウドは皆にも叫んだ。






「構うな!乗り込め!」





その声を聞き、戸惑っていた皆もタイニー・ブロンコに飛び乗った。

旋回する。浮かび上がる。
そしてグンッ…と風に乗って進みだした。





「んがッ…!?」





裏庭から飛び出すと、驚いて目を見開いたシドの顔が見えた。

でも、シドの判断力っていうか、行動力って結構すごいよね。
その瞬間、シドは駆け出し、持ち前のジャンプ力でいとも簡単にタイニー・ブロンコに乗り込んでくる。





「あっは!シド流石ー!!」

「お前ら…!」





あたしは思わずニカッと笑った。
そんな顔を見て、というか、乗っていたあたしたちを見てお前らの仕業か的な顔をするシド。

でも今の状況的に、その辺話してる場合でもないんだよね。

直後、ルーファウスの指示のもと、こちらに向かって神羅兵が銃を撃ち始めた。

いや、うん。
おっかなそうだなとは思ってたけど、やっぱおっかねえな?!

ただまあ、皆に当たらないことは知っていた。
あくまで皆には、だけど。

そう思った瞬間、ガンッという変な音がした。
それはタイニー・ブロンコに銃弾が当たってしまった音だ。





「シィィーット!!尾翼がやられてるじゃねえか!」





尾翼を見たシドがショックそうに叫ぶ。

もう銃撃は届かない。下は海。
不時着待ったなし!





「さあ、でっけぇ衝撃がくるぜ。チビらねえようにパンツをしっかりおさえてな!」





うん!下品!
でもあたしはこういうシドが大好きである。

むしろ名台詞だよね、これ?





「きゃー!!!」

「…なんで嬉しそうなんだ」





悲鳴を上げる。
でもそれは不時着の恐怖に対するものではなく、いやっふー!みたいな。
そんなもんだから隣のクラウドに凄く変な顔された。

ま、落ちるのはどうあっても定めだし。

タイニー・ブロンコはザパーンッ!と、大きな波を立てて海の上に落ちた。





「こいつはもう飛べねえな」





海に落ちると、シドは尾翼の状態を見始めた。
でももう、直る見込み無し。「はーあ…」とデカい溜め息とともに肩を落とす。

するとそこに、そんなショックに寄り添わない男クラウド・ストライフ。





「ボートのかわりに使えるんじゃないか?」

「ケッ!好きにいろい!」





シドはもうどうにでもなれ!って感じだった。

こうしてあたしたちは海を移動する手段を手に入れることが出来た。
うんうん、まさにゲームの流れの通りだね。





「シド、あんたはこれからどうするんだ?」





それから、クラウドはシドに今後の事を尋ねた。

その言葉を聞き、パシャパシャと手で水を跳ねさせていたあたしも振り返った。
いや尾翼の修理とかはよくわからんかったけど、こっからの会話はきちっと参加したいし!

勢いでタイニー・ブロンコに飛び乗り、一緒に村を出てきてしまったシド。

シドはまた小さく息をついた。





「さあな。神羅とはきれちまったし、村は飽きちまった」

「奥さんは?シエラはいいのか?」

「奥さん?笑わせるない!シエラが女房だなんて鳥肌が立つぜ!」





シドがゲーッと顔を歪ませた。
…随分と失礼な反応だな、おい。

クラウドはその返しが意外だったのか、目を丸くしてあたしを見てきた。
そうだったのか、みたいな顔。

あたしはこくりと頷いた。
ま、別にその辺隠すことでもなかったけど。

ていうかあくまで今、の話であって、未来ではそうなるしね。





「お前らはどうすんだ?」





そしてシドはこちらの事を聞いてきた。
ぶっちゃけこの辺でシドはクラウドに同行することも視野に入れてたんじゃないかなって思う。

クラウドは簡潔に自分たちの目的を説明した。





「セフィロスという男を追っている。神羅のルーファウスもいつか倒さなくちゃならない」





セフィロスを負い、神羅とも対立している。
神羅と対立とか、普通に生きてる分にはあんまり首突っ込みたくないよね、たぶん。

でもシドという男はその辺結構アバウトなのです。





「なんだかわからねえが……面白そうじゃねえか!俺様も仲間に入れろ!」

「皆、どうだ?」





加入を希望したシド。
クラウドは皆に意見を仰ぐ。

その瞬間、あたしはシュバッと手を上げた。





「はいはいはい!賛成賛成!大賛成ー!!!」





両手を上げて、ぶんぶんぶん。
するとクラウドに怪訝そうな顔された。





「…なんだ、そのテンションの高さは」

「うっふ!だって歓迎なんだもーん。てっか、あたしのテンション高いとかいつものことじゃんー!」

「……。」





まあそれもそうだ、みたいな顔のクラウド。
いや本当、彼も慣れたもんである。

実際、クラウド自身も別にシドの加入は反対ではないんだろうし。
そうじゃなかったら皆に意見仰ぐ前に、自分が拒否しただろうから。

つーか、あたしは絶対反対しないし!!
そんなこと誰がするかってんだ!!

ウェルカムシド!!あんたをずっと待ってました!!って待望の瞬間なんだからな!!





「へっ!そこまで歓迎されるたぁ意外だが、悪い気はしねえなぁ」

「うん!大歓迎さ!あたしはずーっとずーっと、シドに会えるの楽しみにしてたからね!」

「あん?楽しみにしてただぁ…?」





シドが顔をしかめた。

でもシドにもあたしのことは話すつもりだし。
これはその一歩に過ぎない。





「…ロケットで会った時も変な奴だとは思ったが、前にどっかで会ったことあったか?」

「ううん。正真正銘、今日がはじめましてだよ。あとでちゃんと話すよ。信じる信じないは別問題かもだけど」

「はあ?」





シドは更に顔をしかめる。

そんな顔されてもねえ。
でもなーんにも嘘とかついてないし。





「なんだかよくわからねえが…ま、よろしくな、クソッタレさんたちよ」





こうして待望、このゲームにおいて最後の仲間であるシドが加入したのでした。



To be continued

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