無茶はするな


「へえ〜。そのプリシラちゃんって子を助けたからこの部屋貸して貰えたのね」

「大変だったね。でも皆無事で良かった」





アンダージュノンのとある一軒家。
海岸にてモンスターに襲われた少女プリシラを助けたクラウド一行はそのお礼にと部屋を提供して貰えることになった。

その経緯を聞き、頷いているのはティファとエアリス。

部屋を提供してもらえることになってわりとすぐ、別行動をしていたバレット、ティファ、エアリスも無事にジュノンへと到着した。





「ま、人助けはするもんって事だね!」

「わ〜、ユフィがそれ言う〜」

「ナマエうっさーい!」





そしてそれを教えていたのはユフィとあたし。

今、あたしたちはベットの上に座って女の子だけで集まり会話に花を咲かせていた。
まあいわばガールズトークってやつだ。

ティファとエアリスとユフィとガールズトークとかどんな贅沢…!!!

正直この状況、テンションぐんぐん上がりまくりだ。





「ナマエ楽しそう、だね?」

「何ニヤついてんの?きっもちわーる」

「うん、ユフィもうっさーいと言いたいところだけど機嫌良いから許す!」

「なんだそれ…」





指摘されるくらい顔にも出てるらしい。
まあそりゃ無理も無いでしょう!って開き直ってるけどね!





「でも、新しい仲間、増えててビックリしちゃった」





きゃっきゃと盛り上がる中、ふとエアリスがユフィを見て笑った。
その言葉にあたしとユフィは顔を合わせた。





「ああ、うん。森で拾ってさあ」

「はあ?どーしてもついて来てほしいって言うからついてきてやったんじゃんか!」

「あーうんうん、そうだねー」

「てっきとー!!腹立つー!!」

「ひゃー!!あはははっ!!」





飛び掛かる様な勢いで肩を掴んでくるユフィ。
そのままベッドに倒れ込んで、きゃっきゃとじゃれ合って笑った。





「ふふ、もうすっかり仲良し、だね?」

「本当。結構ナマエって打ち解けるの早いのよね」





その様子を見て、ティファやエアリスも笑ってた。

打ち解けるのが早いと言うよりは、皆の素性をそこそこ知ってるから話題に困らない…っていうのが正解な気がするけどね。

するとその時、ユフィが何かを思い出したように「あっ」と声を上げてティファとエアリスのふたりを見た。





「そういえばさ、ティファとエアリスも信じてるわけ?ナマエが異世界から来たって話」





尋ねたのはあたしのことだった。
突然の質問にふたりは目を瞬かせる。

でもきっと誰もが疑問を抱くところではあるから然程驚きはしていなかった。





「あ。ユフィにもしたのね、その話」

「うん。したよ〜。基本的に一緒に旅する仲間には言おうと思って」





そう答えれば聞いてきたティファは「ふーん」なんて頷いてた。

で、二人がどう思ってるか。
ティファとエアリスはそう悩むことも無くすぐにさらっと答えを言った。





「うーん、でも最近私、自分で結構信じてるんだなあって思う事増えたな。ナマエが注意してくれることとか素直に聞いてたりね」

「私はこの話聞いた時からしっくり来てる、かな。不思議だなって思ったこと、ナマエが違う世界の人だって聞いたら、全部納得出来たから、ね」





ふたりは答えは、信じているだった。

あたしは寝転んでいたベットから上半身を起こす。
そしてユフィの顔を見ればユフィはクラウドたちにこの質問をした時と同じ顔をしていた。





「ふーん…クラウドたちと同じかあ」

「ユフィ、クラウドたちにも聞いたの?」

「うん。変な奴らだな〜って言った」

「あら、ふふっ…でもユフィも、ナマエと戦った、よね?そしたらそうなのかも…って思うこと、あったんじゃない?」

「…んー。変なこと知ってるなぁって感じはしたけどさ」

「ね!」





エアリスに微笑まれれば、ユフィもそんな事を言っていた。

そこまで話したところで、あたしはベットを立ち上がった。
皆の視線が自然とこちらに集まる。





「ナマエ、どこか行くの?」

「ん、ちょっとお手洗い〜。あとついでに何か買ってくるよ」





ティファにそう答え、3人にひらりと手を振りあたしは一度部屋を出た。

まぁあれですよ。話もまだまだ盛り上がりそうだしカームみたいについでにつまめる物でも…なんて。
なんかこうしてみるとすげー食いしん坊みたいだな、あたし。

まぁちゃちゃーっと外に出てクラウドに分けて貰ったなけなしのお小遣いでお菓子を買ってささっと道を戻る。

でもその途中、とある声に呼び止められた。





「ナマエ?」

「ん?」





くるりと振り返る。
するとそこにいた金髪ツンツンお兄さん。

まぁ声でわかったけど。

あたしは軽い足で彼に駆け寄った。





「おークラウドー」

「何してるんだ…なんだそれ、菓子?」

「うん!ガールズトークにちょっとした差し入れですよ!」

「…ガールズ…ああ、まだ話してるのか」

「うふー。盛り上がってるよ〜。ユフィも打ち解けてるし。いいきっかけになったんじゃないかな」

「そうか」





へら〜っと笑う。

あたしたちが部屋を占拠しちゃってるのもあるけど、男性諸君はそれぞれ街をぶらついているみたいだった。
情報収集に買い物に、まあその辺も本当にそれぞれ。

あとは、そう。海岸で助けた女の子…プリシラの容体も気になる所か。

気を失ってるだけだからゆっくり休めばそのうち目は覚めるはずだけど。
ああ、でもそれもクラウドによる懸命な救護活動によるところもあるのかもしれない。





「いや〜それにしても本当ね!クラウドはあの子にとってもうまじ王子様だよね!!」

「おい…」





モンスターを倒した後の出来事を思い出し、にへら〜と笑ってそう言ってみたらジロっと軽く睨まれた。あらやだ、おっかない。

いやいやでもさ、やっぱりファンとしてはあのイベントは見逃せなかったっていうか!
正直さっき皆と話してた時も頭のどっかしらで浮かんだままだったよね。

だってさ、FF7をプレイした事がある人ならまず印象に残るでしょうあの展開だ。

アンダージュノンのイベントと言えば、そう!

幼女とクラウドのキッ…いやいやクラウドの人工呼吸イベントですよ!!!!





「いや〜…はっはっは、お疲れ様でした!」

「…なんなんだ、そのニヤニヤした顔は」

「いやいや…あれはなかなか〜…でしょ!」

「…何を言ってるんだ」

「でもさ、凝視しちゃうと思わない!?」

「ぎょ…知るか!」





ゲームの通り、モンスターを倒した後おじいさんがやってきてプリシラに人工呼吸をしろとクラウドに迫った。

クラウドは勿論戸惑った。
女の子だし、それはちょっと…と。

でもそこにある空気は有無も言わさず、だ。
おじいさんは急かして来る。仲間たちも。ましてや命に関わる問題。

クラウドは意を決してプリシラに人工呼吸をした。

勿論ゲームにあるからこうなることは知っていた。
それに、ええ、ええ、立派な人命救助ですよ!

でもやっぱりこう…おお!…みたいになるのはしゃーない話よね!っていう。

…まぁ、あたしがもしプリシラを止めてたら、とか…そういうのを考えると思うことが無いとは言わないけどね。





「そういえば、怪我とかはしてないのか?」

「ん?ああ、さっきの戦闘?あたしは大丈夫だよ。離れたところで魔法撃ってただけだもん。敵の意識もどっちかっていうと前線で戦ってたクラウドたちに向いてたし」

「そうか。まぁ、なんともないなら良いんだが」

「ん、お気になさらず〜」





あたしはプリシラを見てたわけだし、そう無茶をする位置にはいなかった。
魔法だって、動きを封じちゃうあの水球を壊すことに使ってたのがメイン。特別狙われるような理由はなかった。





「いや、気になることがひとつ…だな」

「う?」





だけど、なぜだかクラウドはそう言ってあたしをじっと見て来た。
そんな顔されても、こっちはきょとんとするしかない。





「あの時、俺に注意を促した。モンスターが来ること知ってたんだろ?」

「ああ、うん、まあね」





気になる事、と尋ねられたのはそんな話だった。

あの時、あたしはクラウドに注意するよう呼びかけた。
それは事実だから素直に頷いた。





「プリシラを助けに行く時の反応も早かった」

「あー…」





言われて、その時のことを振り返った。
それで、ちらっとプリシラの家を見上げた。

いや、まあ…クラウド達よりは反応早かったかもしれないけどね。

でも、本当ならもう少し早く助けてあげられたのかもしれない。

まあ、過ぎた事にもしかしたら…なんて言ってもしょうがない事なんだけど。

プリシラに警戒もされてたし、あたしもモンスターを見て一瞬足が竦んだし、間に合ったかとかはわからない。
ふたりして巻き込まれて、あたしまで倒れてたかもしれない。

これはゲーム通りだ。
あたしが基本的に尊重するのはその流れ。

基本的にあたしはテキトーだからこれ以上、どこまでって基準は無い。

でもあたしが納得出来て、手が届くところならやってみたい事もある。
あたしがいる時点で色々おかしいわけだし。

クラウドたちの手を無い所に届かせるのは、抵抗あるけどね。





「…あんたが走り出した瞬間、驚いたんだ」

「え?」





そう考えているとクラウドはそうぽつりとつぶやいた。

驚いた、とな。
あたしは視線をプリシラの家からクラウドに移した。

クラウドはこちらを見ていた。
そして小さく息を吐いた。





「…あまり無茶、するなよ」





それは純粋な気遣いだった。
そう言ってくれるクラウドはやっぱりいい奴だと思う。





「おお!クラウド、いい男だねえ…」

「…あのなあ」





うふ、と笑う。
するとクラウドは頭を抱えた。

それはいつも通りのやりとり。

でも…無茶、か。
ただ少し、その言葉は耳に残った気がした。



To be continued

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