チョコボに乗って
あたたかな日差しに照らされる穏やかな緑。
そこにのびのびと佇んでいる黄色い羽根を持つ鳥たち。
「うっわー!!チョコボだー!!」
それを見た瞬間、例のごとく。
あたしは柵へと駆け寄ってウキウキと目を輝かせた。
カームを発ったあたしたちが次に辿りついたのは、カームに一番近い建物であるチョコボファームだ。
そこではあたしは初めてFF界において一番のマスコットともいえるチョコボの姿を遂に目の当たりにしました。
「相変わらず新しい場所に来るとテンションが高いな」
柵に手をついてへらへらとしていれば横からクラウドの声。
視線を向ければクラウドも柵に手をつきこちらの方を見ていた。
「んー、まあ今回は新しい場所っていうかチョコボだけどね」
「チョコボ?あんたの世界にもいるのか?」
「ううん。いないよ。だから物珍しさにキャッキャウフフしてるわけ!」
「チョコボもいないんだな」
クラウドはそう言いながら目の前にいるチョコボに目を向けた。
流石飼育されているだけあってここにいるチョコボたちは人に慣れているようだった。
向こうもこちらに興味があるのか、視線を向けたクラウドの元に一匹のチョコボが歩み寄ってくる。
「クエっ」
するとクラウドはそのチョコボに向かってそんな風に声真似をした。
その姿を見てあたしは思わず「おおっ」なんて声を出す。
クラウドはまたこちらに振り向いた。
「なんだ?」
「いや、クラウドのチョコボの声真似とか貴重じゃね?みたいな」
「…別に、こんなの普通だ」
「えー?そう?じゃあ録音するからちょっともう一回!」
「馬鹿」
馬鹿と言われてそっぽ向かれた。ちっ。
でもクラウドってノリ良いと言うか何と言うか、たまにそういうとこあるよな〜とは思う。
そういうところも結構ツボなんだけどね!あっは!みたいなのはまあ黙っておきましょう。
しかしだね、隣にこうしてクラウドがいて、そして目の前にはチョコボがいて。
そうするとやっぱり見ておきたいと言うか、まじまじと見比べてたい衝動みたいなのがふつふつと沸き上がってくるのを感じた。
「…なんだよ」
そっぽを見ていても凝視されれば視線は感じるのかクラウドがまた振り向いた。
あたしはニコリと笑い、その問いに答えた。
「いやあ、クラウドの頭、こう実際に見比べると本当にチョコボそっくりだな〜って!成る程、こればチョコボ頭!」
「………。」
此方の世界では散々チョコボ頭だと言われる彼である。
見比べた結果、本当にこりゃチョコボですぜ!
そんな感じで「あっはっは」笑ったら、クラウドに無言で睨まれた。怖い。
その視線から逃げる様に、あたしはちらっと足元にいるのに先ほどからちっとも喋ってないナナキに目を向けた。
「おーい、レッドXIIIくーん。なーに君はぼんやりとしているんだーい」
「…ん?ああ、ここは風がのどかで気持ちがいいなと」
そよそよと吹く風がレッドXIIIの毛を緩やかに撫でる。
彼はそれが気持ち良かったらしくひとりでこの穏やかな気候に浸っていたようだ。
まあ、あたしが言うのもなんだけどさ、これからセフィロスを追う旅しようってのにのんび〜りと呑気にしてるもんだよねえ。
でも確かにここはポカポカで風も心地よく気持ちがいいのはとってもわかる。
だからあたしも柵に肘をついてぼんやり目を閉じ浸りながらゲームの知識を思い出していた。
ミッドガルを出てからしばらくは、セフィロスの行方もわからないから近くの建物を辿る様に進んで行くことになる。
此処を出たら、次の街はジュノン。
でもその前に湿地帯を通ってミスリルマインを抜けて…。
……湿地帯。
それを思い出してあたしはハッと目を見開いた。
「あ!クラウド!今手持ちいくらくらい!?」
「なんだよ、突然」
「いや、ちょっと値が張るお買い物がだね…」
「は?」
カームで何にも考えずうっきうきと買い物しちゃってたわけだけど忘れてた。
ここでチョコボよせのマテリア買わないと先に進めないじゃん!
いや、正確には買わなくても進める事は進めるよ。
でもあのでっかい蛇さん倒せるかはちょっとあれじゃないか。
確実に、安全に進むのであればチョコボは必須。
ていうかあたしが出来れば余計な戦闘避けたいしね!?
「ううん…折角買ってもらった杖だけど、最悪こいつをまた売っぱらうしか…」
「…話が全然見えない」
腕を組み「うーん」と悩むあたしと顔をしかめるクラウド。
そして相変わらずそよりそよりと風を感じてるレッドXIII。
とりあえず、いつまでもこうしていても仕方ないと言う事であたしたちはチョコボファームの建物の中へと入る事にした。
そしてそこでクラウドもやっとあたしの話を察してようだった。
「…チョコボよせ、か」
「イエス。それで野生のチョコボちゃんゲットだぜ」
「これからの事を考えればチョコボを使えるようになるのは悪くない話だ。だが、確かに値が張ったな」
クラウドは牧場で購入させられた独立マテリア…チョコボよせを手に小さくため息をついた。
まあ結果から言えば手持ちは大丈夫だった。
でも旅を続けていくうえでの貴重な資金にとってこれはなかなかの痛手に変わりはない。
「しかし、湿地帯にはヘビのバケモノがいるのだろう?となればやはりチョコボがいた方が君たちにとっては安全なのではないか?私はともかくだが」
牧場で聞いた話を思い出しながら、レッドXIIIがそう口にした。
クラウドはカチン、と防具にチョコボよせを装備しながらそれを聞き、あたしも頷いた。
「ミドガルズオルムね。もう超でっかいよ!」
「そんなにか…」
「そんなにそんなに!もうこーんな!」
ゲームでのあの巨体を思いだし、ばっと手を広げてあたしはクラウドとレッドXIIIに説明をした。
これくらいの知識のお披露目は良いだろう。
別に物語にそう関わってくることじゃないしね。
声も消えることなく、ちゃんと音になってくれてるし。
いやでもあれは本当にでかいよね…。
実際に目の前に現れることをちょっと想像する。
あ、結構やばいかも…。真面目にちょっと身震いした。
あれにこれから追いかけられるのか…。
「くっそう…チョコボに会えて折角上がってたテンションがまだ見ぬ蛇のせいで台無しだ…」
「それは助かったかもな。チョコボ見かけるたびに叫ばれてたらマテリアの効果も台無しだ」
「おうおう酷い言いぐさね!?流石にそこまでアッホじゃないよ!?」
野生のチョコボが騒いだら逃げていくであろう事くらいは流石にわかりますともよ!
こちとらゲームで何度チョコボとっ捕まえてきた事か!
…といいつつ、攻撃したら物凄い勢いで反撃してくるくらいだから案外肝座ってんじゃないのって気もするけどね。
「さて、じゃあそろそろチョコボを捕まえに行ってみたらどうだ、クラウド」
「ああ。そうだな。ナマエ、行くぞ。俺とあんたの分、二匹捕まえるからな」
「はーい!あ、でもそうだよね。チョコボに乗れるんだよね。それは結構楽しみかも!」
「ころころ機嫌が変わる奴だな…」
「うふふー。いっちょよろしく!でも見たらわかるけどあの蛇マジでやばいよ。でっかい尻尾でばしいっとか吹っ飛ばされる危険アリだからね!」
「…肝に銘じておく」
そんなこんなでチョコボを捕まえるべくチョコボファームを後にする。
その後、無事に湿地帯を越えてミスリルマインに辿りつくわけだけど…。
実際に目にした蛇はやっぱりヤバいのなんのって本当にヤバくて。
「うわああ!?ほら見ろ言っただろ!ほらほらほらー!!やばいでしょ!?」
「いいからとにかく走れッ!!!」
焦るクラウドとレッドXIIIの顔を見てだから言っただろうと得意げになりつつ実際にはおっかなすぎてもう何が何だかわからなくなってたり…。
まあ出来ればもう二度と御免だって心の底から思いました。
To be continued
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