ホープ

グラン=パルスを移動し陽も落ちてきた頃、ちょうど近くに手頃な洞窟を見つけた。

こういうのを見つけた時はそれを利用しない手はない。
今日の寝床はそこに決まる。

交代で見張りをしながら、雑魚寝状態で体を休める。

ぽつぽつ聞こえていた声がだんだんと消えて、寝息だけの静寂に包まれていく。
あたしも知らぬ間に瞼を閉じていた。だけどふと、目が覚める。

ああ、どれくらい寝たんだろう。今何時くらい?
そんなことを思いながらゆっくりと目と開いてごろんと寝返りを打ってみる。

すると、ぱちっと視線がぶつかった。





「あれ、ホープ。まだ起きてたの?」





翡翠の綺麗な瞳に尋ねる。
目があったのはホープだった。

彼は寝そべったまま、小さくあたしに笑みを見せてふるふると首を横に振った。





「いえ。ふと目が覚めて」

「あ。一緒。ふふふ、息ピッタリだねえ」

「あはは。そうですね」





身体は疲れている。
睡眠時間は大切だ。だからあまりこうしているわけにもいかないけど。

話し相手を見つけてしまうと、ついついちょっとだけお喋りしたい欲も覗いてくる。

数分だけ。
そう心に決めて、あたしは少しホープと声を交わしていた。





「今日はいい洞窟見つかって良かったね〜。風とかしのげるのは大きいよね〜」

「そうですね。でも、なんか僕らも逞しくなったよなあって思いません?」

「ん?」

「だってほら、昔だったら洞窟で寝るとか考えられなく無かったですか?」

「あー…そうかも。ここで寝るの!?って思ってたかもね」

「ですよね」





軍人のライト、もともとパルス出身のヴァニラとファング。
そのあたりの皆様はこういう経験も無くはないのかなとか思ったりするけど、あたしとホープはこのメンバーの中でも本当に純粋なコクーン一般市民、一般ピープルなわけだ。

そう考えれば、最初の頃と比べて随分図太くなったもんだと思う。





「でもあたし、今の自分嫌いじゃないよ」

「え?」

「うーん、多少は…本当に多少はだけど、強くなった気はするからね。結構今の自分、好き」




そう言って笑みを零す。

そう。ルシとか本当御免だけど、その経験あってか色々強く慣れた気はするのだ。
そんな風に思えば、今の自分も悪くないなって思える。





「…ホープもさ、昔より今の方がずっといい顔してると思うよ。あたしは今のホープ、結構かっこいいと思う」

「え…」





そして、それが当てはまるのはホープにも。

本当に頼もしくなったねと、そう思うのは本音だ。
そう零してあたしはゆっくり目を閉じる。

ああ、眠気が戻ってきた。





「あ、あの…僕も、」





穏やかな眠りの波。
そんな中でホープの声が聞こえた気がする。

でも、そこでぷっつん。

その後の言葉は、夢の中に消えた。



END


雑魚寝万歳。
13は宿屋とか泊まる機会だろうから大変そうだわ。

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