ジタン
「うーん、ブリ虫から人に…か。シドさん、本当に戻るのかな?」
今、あたしはジタンと一緒にリンドブルムの城下町を歩きまわっている。
トット先生の話を聞いて、シド大公様をブリ虫から人間の姿に戻すために。
その薬の材料集めを勤しんでいるわけである。
「さあな」
「ふしぎな薬、おかしな薬、あやしい薬…そんなに珍しいものじゃないし」
「まあ、試してみる価値はあるだろ」
つい先程、シナから受け取ったふしぎな薬のビンを眺めながら思う。
ううん…だって、シナが持ってるくらいだし…。
やっぱりちょっと疑問が残る。
ジタンの言うとおり、やる価値はあるだろうけど。
「ねえ、シドさんって戻ったらどんな感じなのかな?ダガーいわく髭はご立派みたいだけど」
「うーん。俺も見たことないからなあ…。つーかもうブリ虫のイメージしかないし、本当に人間なのか?って気もしてくるよな」
「あはは!確かにね。うーん、だから尚の事どんな風なのか気になるよねえ」
楽しげに笑う。
すると、そんなあたしを見てジタンはどこか拗ねたような表情を見せた。
「ん?どしたの、ジタン」
「さっきからおっさんの話ばっかだなあ…と思ってさ」
「え?」
「せっかく2人っきりだってのに」
そう言われて、不覚にもドキッと心臓が鳴ったのがわかった。
照れ隠しで、突っぱねる様な台詞が出てくる。
「い、今、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
「わーってるって。でも、こんな状況だからこそさ。楽しい時間を大切にしようぜ。ほら」
「えっ?」
エアキャブ乗り場、差し出されたジタンの手。
「お手をどうぞ?」
「……。」
おまけにニッとした笑顔。
惚れた弱み。
差し出された手に、自分の手のひらを重ねた。
END
裏ではダガーが喋れなくなってる時期なんですが。(爆)
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