「エース、見て見て」

「ああ、歩けるようになったんだな」





まだ少し頼りないけど、一歩一歩前に進む雛チョコボ。
そんな小さな存在を見て、僕とナマエは笑った。

ナマエと出会って、どれくらいになったかな。

チョコボ牧場でナマエと過ごす時間は、いつの間にか、僕にとって当たり前の日常となっていた。

約束したわけでもないけど、だいたいいつも同じ時間に、相手が来るのを待っている。
それが、もうすっかりと生活の一部として馴染んでいるのだ。





「エース、授業どうだった?」

「ああ…少し眠かったかな」

「あはは、エースって良く寝るよね。クラサメ隊長可哀想。結構わかりやすく教えてくれるのに」

「ナマエ、隊長の授業受けた事あるのか?」

「んー、授業って言うか、冷気魔法でわからないとこがあってね。クリスタリウムで見かけたから教えてもらったんだ。格好いいし、当たりだよ、クラサメ隊長は」

「当たり…か。いざ隊長となると、面倒かもしれないぞ?厳しいしな。まあ…僕は他に隊長を知らないから比べられないんだけど」




ナマエとの会話は、すらすらと流れていく。
話題を無理矢理探すと言う事もないし、途切れたとしてもそこにある沈黙は別に居心地が悪いものではない。

ナマエといる時間は、居心地がいいって…多分僕は思っていたと思う。

0組を抜かして、他の誰かと過ごす時間で一番。
いや、抜かさなくても…かもしれない。

親しい誰かと聞かれれば、僕の頭には恐らく…ナマエの顔が浮かぶのだろう。





「あ、そう言えばね、この間0組の女の子達に混ぜてもらって一緒にリフレでお茶会したんだよ」

「お茶会?」

「うん。久々にレムとも話せたし、楽しかったよ」

「そうか…」

「うん!ほら、前に0組に突っ込んで以来、院内で会ったらちょくちょく話せるようになったから。この間なんてトレイの長話につかまっちゃって。皆に気をつけろって言われた意味、身にしみちゃったよ」

「ああ…、トレイの話は止まらないからな。早めに切り上げないと」

「ね!次からは気をつけようって心に誓いました」





…あれ。

なんだろう。
なんだか…そうナマエの話を聞いていた時、僕は少し変な感じがした。





「あとね、ナインとジャックがレポートの期限に追われてて、そしたらクイーンが来てねー」





笑うナマエからは、0組の皆の名前が出る事が増えた。
僕の知らない、皆との時間が増えていく。

それは…良い事なんだと思う。

だって、0組は他の組からは少し線を引かれてるというか…構えられてしまう存在だっていう自覚はあるから。

だからわざわざ0組に踏み込んでくるような事をしたナマエに皆が興味を持つのは無理のない話なんだろう。

でも…なんとなく。
僕は…、ナマエと一番仲が良いのは僕だって…どこかで思ってた。

だけど実際…今は、どうなんだろう。

ナマエと一番多くの時間を過ごしているのは僕。
前はそんな事を思って、それが変に、自分の中で…優越感って言うのかな。

そんな感覚が…、うん…しっくりくるかもしれない。





「エース、どうかした?」

「え?」

「なんかぼーっとしてる」





まだ眠いの?
…なんて、そう言って君は笑う。

僕は首をゆっくり横に振った。





「いや、そんなことないよ」

「そう?ふふふ、でもぼーっとした顔もなんか可愛いね」

「……可愛いって、何も嬉しくないぞ」

「あはは!でも、あたしは好きな人の可愛い顔を見れて得した気分です」

「………。」





相変わらず、ナマエは楽しそうに微笑んでる。

好きな人…か。
正直、まだ恋とか…そういうのはよくわからない。

でも、僕はナマエの好きな人なのだと。
どんな意味であれ、好きだと思ってもらえている事実は…少し、嬉しかった。




To be continued
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