青い瞳



「………。」

「………なんだ」





元ソルジャーとして反神羅アバランチに雇われているクラウド。

カウンターに座り、ティファが作ったキツい一杯とやらを飲んでいるその隣に座って、彼の顔をジーっと見ていたあたし。

するとクラウドに怪訝そうな目を向けられた。





「いや…似てるなあって」

「俺はアンタの英雄とやらじゃない」

「うん…いや、わかってはいるんだけど」





良く似てる。でも違う。
瞳の色が違う。

でも似てる。

そんな螺旋がグルグルグルグルと頭に回ってるもんだから仕方がない。





「瞳の色、違うから。別人なんだってのはわかる」

「瞳?ソルジャーの瞳はみんなこの色だ」

「え?なんで?青い目しかソルジャーになれないの?」

「違う。ソルジャーは魔晄を浴びた人間。その時に瞳の色が変わる」

「え!じゃあじゃあ!」

「……でもアンタの英雄じゃない。そもそもそいつと会ったのは5年前なんだろ。俺はその時すでにソルジャーだった。さっきから言ってるだろ」

「………うー」





クラウドはそう言いながらグイッとカクテルを飲み干した。

あたしはカウンターに、ぐでんと項垂れる。

あのお兄さんは今は何してるんだろう。
思い出したあの日の記憶が懐かしくて、ぼーっと考える。

でもこんな、神羅に関係ある人と話せる機会なんてそうそう無いもんね!

思い立ったら即行動。

あたしは再びクラウドに聞いた。





「じゃあさー、兵士さんの中に自分に似てるなーみたいな人いなかった?」

「さあな。聞いたこともない」

「ぬー。げきちーん」





収穫ゼロ。

もう一回くらい会いたいなー、なんて思いながら、あたしもティファが入れてくれたオレンジジュースをちゅーっと飲んだ。

するとだった。
今度はクラウドがあたしに尋ねてきた。





「そもそもあんたは何だ?アバランチなのか?」

「え?あたしはアバランチじゃないけど、たまにねティファやマリンに会いに来るんだ。まぁ神羅って会社は好きじゃないけど」

「あんたの英雄とやらは神羅兵じゃないのか」

「だーかーら会社。神羅の全てが嫌ってわけじゃないから。あたし、昔はプレートの上に住んでたんだー!」





そう。あたしは今はスラム暮らしだけど、昔はプレートの上に住んでた。クラウド似のヒーローに出会ったときも然り。





「お父さんが神羅のサラリーマンでね?まあ、事故で死んじゃったんだけど。お父さん、帰ってくるといつも疲れた顔してたし、神羅って悪い噂多いでしょ?だから関係あったねかなーとかね」

「……そうか」

「で、お父さんが事故に会った後、スラムに来たの。今は、うーん…簡単な魔物退治とかしてるんだ。ちょっと自信ありだよ!」





腕をパンパンと叩きながら、にししと笑う。

あたしの腰のホルダーにはショートソードが収まってる。軽くて使いやすい剣。装飾もわりと気に入ってる。
…クラウドが持ってる大剣は持っただけで肩がイカれそうだな。

まあ…そのショートソードに空く穴には回復と雷のマテリア。
実は魔法で戦う方が好みだ。ほら、魔法って格好いいでしょ!
…まあ、乱射はしてらんないけど。


ま、ともかく。そんじょそこらのモンスターには負ける気はしない。
それくらいの自信は持ってた。





「そーいえばさ、明日も作戦出るの?」





変わらずちゅーっとジュースを飲みながら尋ねてみる。

明日も作戦があるって聞いた気がするから。
確か、伍番魔晄炉だったかな?




「どうしてそんなこと聞くんだ?」

「んー?人手不足って聞いたから」

「……らしいな」

「やらないの?」

「…報酬次第だな」

「お金かよ、おにーさん」

「俺は星の命もアバランチの活動にも興味はない」

「ふーん」





気のない返事を返す。

でも、確かティファは手伝って欲しそうな顔してたような。

「お願い!」とクラウドに懇願していたティファを思い出す。

幼馴染みって言ってたもんな。
幼馴染みの再会か…。なんか良いなあ、そーゆーの。

なんかニヤけた。
無意識だったから、クラウドがあたしを見て何か怪訝そうに眉を潜めてるのを見て気がついたんだけど。

……なんか傷つくな、その顔。





「…そんな引いた顔しないでよ」

「あまりにも不気味だったからな」

「ひどっ!」





なんか、無口なフリしてハッキリ言いますね!?このお方!

不気味て…不気味て言われた…。
ズン…と気分が落ちた。





「そこまで落ち込むか?」

「ふーんだ」

「ああ…、そうだ。あんた、花好きか?」

「……花?」





落ち込むあたしを無視、したのかは知らないがクラウドは急に話題を変えてきた。

……花?
ミッドガルではまず種にもならないような話題だな。
咲かないもんな、花なんて。





「まあ、好き、かな。一応女の子ですから」

「なら、いるか?」

「へ?」





クラウドの発言にきょとんとした。

言葉の通り、あたしにクラウドは花を差し出してきた。

ちょっと困惑。





「………え?」

「花、好きなんだろ」

「あー…うん。……え?」





完全に困惑中である。
すると、そんな様子のあたしを見てクラウドは呆れまじりの溜め息をついた。





「…深い意味はない。街で花売りに会ったんだ。珍しいから買ってみたが…持ち腐れだからな」

「あ、そーなの?って深い意味無いとか別に言わなくていいのに!それはそれで虚しいよ」

「あんたが困惑してるからだろ。ほら」

「…ありがと。おー、綺麗だね」





クラウドから受け取った一輪の可愛らしい花。
しばらく嗅いでいなかった優しい匂いだ。

ちょっと嬉しかった。


これが、クラウドとの出会い。



To be continued


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