一緒にいたい



「…あっついー…死ぬうー…」





常夏のビーチ、コスタ・デル・ソル。
しばしの船旅を終えたあたしたちは、船の終着点であったその場所にてしばし休息を得ていた。





「……ナマエ、あまり暑い暑い騒ぐな…。余計に暑くなる…」

「…まあ、そんな毛皮背負ってりゃねえ…」

「ぜえ…ぜえ…」





照りつける日差しを少しでも免れるために、レッドXIIIと日陰に避難中。

彼は、本当に辛そうだ。
ま、尻尾に炎灯ってるくらいだし…うん、暑そうだ。

あたしと言えば、寒いのも苦手だが暑いのも大の苦手だ。
つまりは船の中でのユフィとはまた別の意味でグロッキー…。

いやいや、最初は元気だった。
なんたってここはコスタ・デル・ソル。

最高のリゾート地なのだ。
「海ー!ビーチー!」と大騒ぎしたもんである。

…最初っから飛ばしすぎた…。
わかりすく言うと電池切れ、みたいな…。

うう…。
自分のアホさになんだか凹んだ。





「海にでもダイブすればマシになるかなあー…あ、駄目だ…」

「…どうした」

「…いや、ナマエちゃんのある意味素敵なバディーを簡単には晒せないなあって…」

「は…?」





レッドXIIIさんに普通に「は…?」って言われてしまった。

いやさ、ティファみたいな完璧に素敵なバディーだったら喜んで晒すよ。
もう堂々と!ドバーンといっちゃうよ!?出し惜しみなんかしなくてよ!

……ああ、なんか…とてつもなく悲しくなってきた。

暑さの気だるさも重なって、よよよよ…と、項垂れた。





「…おい、お前達…大丈夫か?」





するとそんな時、我らのクラウドさんがお声を賭けに来てくれた。
彼は真面目です。こんなリゾートでも情報収集忘れてないから。

あたしはひらひらと手を振りながら答えた。





「ティファは羨ましいなあー…って話してただけですーぅ」

「…は?」





するとクラウドにまで「は?」って言われた。

ああああ…神様…。
本当にいるなら世の中公平に作ってくださいよ…ううう。

もうなんか…なにを考えても暑くてだめだ。
本当グロッキーだった…。









「……。」

「なあに、ナマエ?そんなにじっと見て」

「…ティファになりたいなー…って」

「え?私?」

「…いやいや、気にしないで。…はあ」





あれからしばらく。
そろそろ出発ということでコスタ・デル・ソルの出口に集合したあたしたち。

あたしは憧れのナイスバディー、ティファお姉さまとお話していた。

…最後の溜め息にティファは首傾げてたけども…。





「まあ…よくわからないけど…、それよりね、ビーチに宝条博士がいたのよ」

「え…?このリゾート地に?」

「ええ。相変わらず白衣着て。日光浴していたの」

「白衣で日光浴!?」




そしてトンデモ話を聞いた。

…は、白衣で日光浴…?

それってアリなの?ていうか何なの?
やっぱ科学者だし、頭良すぎる人ってやっぱりちょっとどっか普通とは何か違かったりするもんなの?





「…白衣で日光浴にそこまで食いつかなくて良い。重要なのはそこじゃないんだ」





グルグルしていた思考をクラウドに止められた。

ちなみに、あたしはさっきまで凹みに凹んでとにかく凹んでいたわけで。
それを見かねたらしいクラウドはコスタ・デル・ソル限定ジュースを買ってきてくれた。
それのおかげでちょっと復活!クラウドありがとう!

レッドXIIIは相変わらずゼーハーしてるけども。





「話を聞けば、宝条もセフィロスを追っているらしい。後半はよく聞き取れなかったが、ボソボソと西がどうとか呟いていた」

「西!?…それじゃ何だ、次は西に向かうってのか?」





クラウドの説明に何故かバレットは声を張り上げた。

ん?…今の、なんかそんな驚くような内容だったかな?
ちょっと不思議に思って聞いてみる。





「なにバレット。西に何かあるの?」

「…いや、こっから西に行くとあるのはコレルだ…」





コレル…。
なんか、気まずそうな顔して教えてくれた。

なんか変なところなのか…?

ミッドガルしか知らない、乏しい頭の情報を巡らせて考える。
うーん。確か、山があったような…?

うん。わかんないな。
多分考えてもこれ以上わからないだろうから早々にやめた。





「情報はそれくらいなんだ。次は西に向かいコレルを目指す」

「はーい」





目的を決めたクラウドに手を上げて賛成した。

そして、次に決めるのはメンバー。





「今回も二手に分かれて進もう。情報が少なすぎるのは否めない。それぞれ違う道を通りながら進んで行くぞ。メンバーは…」

「ナマエ!聞いてよー!」

「ぐふっ!」





クラウドの言葉を遮って、何かがウッ…とあたしを襲ってきた。

こ、この衝撃は…。
デジャヴとでも言おうか。前にも経験があった。





「やっぱりユフィか…!」





そう軽く睨みつけても、ユフィはまったく悪びれる様子なし。
ていうか、気にもしてなきゃ聞いてもいねえ。

…まあ、いいけどさ…。





「あのねーさっきさ、あたしマテリア屋でバイトしてたんだ」

「バイト?そんなことしてたの?」

「そ。んで、ちょっとくすねて来たから見せたげるよ!」

「く、くすね…!?何しちゃってるの!?あんた!」

「いーじゃん別に」

「いやいや!よくないでしょ!…でも何のマテリア?」

「んーとねー、あ!でも見せるだけだからね!」


「話を聞け!」





キャッキャッしていたらクラウドに怒られた。

クラウドは「まったくお前たちは…」と頭を抱えていた。

ちなみにユフィが仲間になってから…というかジュノンに着くまでの道中とか、ずっとあたしとユフィはこんな感じだったりする。

結構気のあう良いお友達です。





「今までと同じように、ナマエとレッドXIIIは俺と来てくれ。今のところはこれでバランスが取れてる。状況によってまた変えるが…ユフィ、お前は…」

「あたしもそっち?」

「…お前はティファ達と来い」

「ええ!なんでだよー!?」

「お前とナマエをくっつけるとうるさいからだ!」





ユフィがクラウドにブーブーとブーイングを送る。

いやでもちょっと待って。
あたしもうるさい?!そりゃないよクラウド!

そうクラウドに抗議しようかと思っていたら、その前にポン…と肩を叩かれた。





「ん?エアリス?」





叩かれた方を見れば、そこにあったのはエアリスの優しい笑顔。
エアリスは、あたしの耳元でそっと囁いた。





「ふふ、ナマエ人気者、だね?」

「え?」

「ずるいなあ。私もナマエと組みたいのに」

「エアリス…!」





きゅーん!!!

うっわ、うっわ、うっわ!
なに今の!何かよく分かんないけど、めちゃくちゃ感動した!

あたしが目をキラキラさせてる一方、エアリスは耳打ちを続けた。





「クラウドって、いっつもナマエのこと、取っちゃうんだもの」

「…は?」

「一緒に、いたいんじゃない?」

「は!?」





エアリスお姉さまの凄まじい発言に思わず声を上げてしまった。

相変わらず「ね?」とエアリスはニコニコしている…。

………いやいやいやいや。
もしも、もしも!そうだったりなんてしたら、そりゃあ無茶苦茶嬉しくて、あたし空飛べちゃうよ!?

でも…ないない!
だって、クラウドがあたしをメンバーしてくれるのは、多分動きやすさからだ。

本当…、モンスター退治やってて良かった…!
って心の底から思っちゃうよね!クラウドと一緒にいられるんだもの!

それに、レッドXIIIだっていっつも一緒だし?

うん。ないないない。
…って、なんかわかっちゃいるけど、凹むなコレ…。

でも…、やっぱり。





「…ないない」

「…そうかな…?それこそ、ない、だと…と思うけどな」





エアリスはそう言いながら、ちらりとクラウドに目を向けていた。


まあ結局、あたしは名残惜しくもユフィとは別々のパーティで出発することになった。

うーん…あたし的には非常に残念だ…。

にしても…なんのマテリアだったんだろ…聞いてくれば良かった…。
離れた途端、すんごい気になってきた…!

くすねて来たってのはアレだけど…。
次に会ったら絶対聞こう!…ってことで何とか踏ん切りをつける。

そして、ちょっと真面目な話をクラウドに振った。





「ねえ、クラウド。運搬船での事なんだけど」

「運搬船?」

「うん。機関室でセフィロスに会ったでしょ?でも、そこに落ちていたのはジェノバの腕…。セフィロスがジェノバを神羅から持ち出したってこと?レッドもどう思う?」





それは、運搬船での出来事。

うごめくようにおいていたジェノバの腕…。
思い出すとものすごく気持ち悪い…。

でも、確かにあったものはあったのだ。





「…神羅ビルではプレジデントが刺殺されていた。あの刀はセフィロスの物なのだろう?クラウド」

「ああ」





レッドXIIIが神羅ビルでの光景を思い出し、クラウドもそれに頷いた。

神羅ビルでは、あの首無しのジェノバはごっそりと消えていた。
その腕が落ちていたとなると…。





「プレジデントと刺殺した後、ジェノバを持ち出して、持ち歩いてる…って考えるのがしっくりくるかもな」

「やっぱそーだよねえ…。なーんであんなモノ持ち歩いてんだ…気色悪い」





うげえ…と顔を歪める。

クラウドの話を聞く限り、5年前の時点で相当いっちゃてる様に思えるけども。
そんなもん持ち歩いてる時点でもう、やっぱり可笑しいって言うか、ワケわかんないって言うか…。

いや、分かりたくも無いけど。
ていうか、失礼単語のオンパレードすぎてセフィロスにバレたら今度はあたしが刺されそうだ…。

はははは……。
って、笑いごとじゃねーよー。





「なんか、やっぱセフィロスっておっかないなあ…」





ぼそっ…と呟く。
その声はクラウドの耳に届いたみたいだ。





「…そう思うなら、危険を顧みずひとりで突っ走ったりするなよ」

「うっ。痛いこと言うなあー…」





小さな嫌味。

なんかちょっとトゲトゲしいね…。
うう、グッサーってきたよ、なんか!

あれはホントに反省してる。

ガクッ…肩が落ちた。





「何かあったのか?」

「うーん、まあちょっとねえ…」





聞いてきてくれたレッドXIIIに、頬を掻きながら「あはは」と苦笑いした。

でも、嫌味の裏には心配があることも見える。
こういう冗談の嫌味が言えるのも、なんか距離が縮まってる気がして嬉しく感じてた。

ああ、やっぱこの人、良い人だ。





「なんだよ?」

「んーん!別に!」





なーんて、改めて思ったりした。


To be continued


prev next top



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -