新しい仲間



ルカの街外れ。

召喚士ユウナとガードたちはザナルカンドから来たと言う少年、ティーダについて話していた。

ティーダがルカに来たのはブリッツボールの大会を通して自分の知り合いを探すため。

大会が理由かどうかはともかく、知り合いには会えた。
伝説のガードと唄われるアーロン。

どういう経緯で知り合ったのかは謎だが、アーロンと言う知り合いを得たのだ。

ユウナはティーダにガードとして旅の同行を望んでいたが、それはティーダが決めること。

ここでお別れかもしれない。
しかし、このまま黙ってお別れは寂しい。

挨拶をしに街へ戻ろうか…、そうユウナは考えていた。
そんな時だった……らしい。あたし達がトボトボと、ユウナ達のもとにやってきたのは。





「あっ!アーロンさんも?…それと…」

「おお?さっきの!」

「さっきの?」

「ワッカさん知ってるの?」





ユウナ、ルールー、ワッカ、キマリ。

わあ…やっぱり、知ってるよー…。
ちょっと感動ー。…全然覚えてないけど。

そんな皆がこっちを見てきた。
う…何か注目されてる…。

先ほど一緒に戦ったワッカだけはあたしを見ての反応が違った。
ユウナとルールーは首を傾げていた。

でもワッカにも答えられない。
あたしが何者なのかは知らないのだから。

ユウナ達はアーロンにエボンのお祈りのポーズを、つまり頭を下げた。

そんなユウナにアーロンは言った。





「ユウナ」

「はいっ!」

「今この時より、お前のガードを務めたい」

「えっ?」

「マジですか!?」

「不都合か?」

「いいえ!」






わあ。なんかアーロンが偉そうだ。なんだこの人。

ユウナは不都合なわけが無いと言うように首を振る。

そんな様子にあたしは、なんか…アーロンの人望と言うか、知名度の高さに驚いていた。





「ね、みんないいよね!」

「当たり前っす!文句なんかあるわけないっす!」

「でも、なぜですか?」

「ブラスカとの約束だ」

「父が…そんなことを…。ありがとうございます、よろしくお願いします!」





ユウナはアーロンに改めて頭を下げた。

次にアーロンはティーダとあたしの腕を掴み、そのままユウナの前に放り出した。
こう…ポイッと。なんとも雑な扱い。

思わずよろけた。





「それから…こいつらも連れていく」

「おわっ…」

「わあっ、ちょ!アーロン!さっきからあたしの扱い雑だよ!」

「丁寧に扱う理由もあるまい。いいから前を向け」

「なん…!?」




文句を言おうと睨み付けると、サラッと流され、グイッとユウナたちに向き合わされる。
なんて雑な!なんだんだこの人は!

不満を持ちながらもティーダと共に、小さく会釈した。





「……ども。よろしく」

「…ハジメマシテ」





アーロンは経緯で説明し始めた。

まずはティーダから。ティーダの肩を叩きながら話し出す。





「こっちはジェクトとの約束だ」

「ジェクトさんはお元気なんですか?」

「知らん。10年前に別れたきりだからな」

「そう…ですか」

「そのうち会えるさ」

「はいっ!楽しみにしてます。それで…そちらの方は…」





すると、今度ユウナはあたしに目を向けた。

ちょっぴりドキっとした。
わあ、可愛い子だわ…。

暢気にそう思ったものの、ユウナだけならともかくワッカやルールーにも注目され、正直どうしていいかわからなくなった。

困惑して泳いだ目でアーロンに助けを求める。

するとアーロンはあたしの頭を叩きながら、今度はあたしの説明を始めてくれた。





「コイツの名はナマエ。これを聞いて何か思い当たらないか?」

「ナマエって…まさか!」

「あのナマエさんっすか!?」

「ナマエ、さん…!?」





ユウナたちは、なぜかあたしの名を聞いた瞬間に目を開いた。

しかもさん付け!?何事?!
再び意味がわからなすぎてアーロンを見た。

するとアーロンは小さく笑う。





「そう。コイツもブラスカのガードだった。そのナマエだ」

「マジすか!?伝説のガードがふたりも!?」

「あたしが…で、伝説…?!」





ワッカの発した言葉に驚愕。

あたしが伝説!?なんじゃそりゃ!?

でもそこで思い出す。
そういえば、スタジアムでワッカはアーロンの事を伝説のガードと言っていた気がする。

アーロンとあたしが…伝説のガード…!?

そんな事をぐるぐると考えていると、何か違和感を感じたらしいルールーが口にした。





「でも…旅は10年前ですよね?ナマエさんは確か、その頃の最年少で…歳は」





ルールーの問いかけは右耳から左耳にするーっと抜けていた。
ていうか考える事を頭が拒否しだしたと言うか…。

もうわけがわからない。

完全に混乱していた。
もう勝手にしてくれ!って投げたくなる感じだ。





「若すぎる、と言ったところだな」

「…え、ええ」

「確かに、その点については俺にもまだ説明は出来ん。しかし、確かにコイツはナマエだ。俺が保証しよう」





ぽんぽん、と頭を叩かれる。

アーロンの保証。

その言葉には、なんか…説得力があるなあ…と思った。
…相変わらずわけわかんないけど。

だけどユウナたちも頷いていた。
その妙な説得力を感じたのかもしれない。





「そうだな…、ひとつ言っておくとすればコイツはスピラの人間では無いと言うことだ」

「「「え!?」」」

「あ、アーロン!?」





説明を完全に任せきって居たため、ぼーっとしていた。

でも流石に、今のいきなりのアーロンのカミングアウトに驚いた。

ていうかユウナ達も目を丸くしている。

ティーダにカミングアウトしたのはまだわかる。

だってジェクトさんはスピラでは無い、ザナルカンドから来たと言っていた。
つまり息子であるティーダもザナルカンドから来たと言うことになる。

彼は同じような境遇。だからまだわかる。

しかし、ユウナたちはスピラの人間。
ティーダと驚き方は違ってくるわけで…。





「スピラの人間じゃねえって…」

「もしかして、貴女もザナルカンドから…?」

「えっ!?あっ、ううん!ザナルカンドからじゃないけど…、もっと別のところ。それは…本当です。…信じられるかはわからないけど…」

「ナマエが旅の途中で行方知れずになったのも有名な話だろう?それは元の世界に帰っていた、のだったな?」

「う、うん」

「今のところはそれが関係していると考えておくしかないだろうな。コイツにはスピラから元の世界に帰す方法を探させたい。以前の旅に同行させていた理由もそうだった。それまでは全力を尽くさせる。何、ポーションよりは役に立つだろう」

「ポーション!?比較するものおかしくない!?」





あたしに対してフッと鼻で笑うアーロン。
あ、なんかカチンときた。アーロンに言い返す。
そんなアーロンとあたしのやり取りに一同は呆然としていた。





「ファイガ機能付きのポーションなんてあるかっ!ええ?アーロンさんよ!」

「物の例えだ。いつまで経ってもファイガしか威張れるものが無かっただろう」

「なに言ってんの!ブリザドとサンダーとウォータと回復はケアルラだって使えるんだから!」

「……フッ」

「鼻で笑うなー!」





なんなんだ!この男は!
嫌味だな!もう!

しかし、そんなふうにプリプリしていたあたしにユウナだけは笑った。





「えっと、ナマエさん?」

「あ、呼び捨てでいいよ。あたし、伝説とかよくわからないし…ていうかそんな大層な人間じゃないもん」

「じゃあ、ナマエ?」

「うん」

「私、信じるよ?」

「え?」

「嘘ついてるみたいには見えない。それにアーロンさんやジェクトさんの他にもう一人父さんのガードが居たって噂で聞いた時からずっと会ってみたかったの!」

「あたしに?」

「うん!あと歳の近い女の子と接するの初めてなんだ。だから、ガードになってくれるなら凄く嬉しいな」

「え、あ、うん!どこまで役に立てるかわかんないけど、頑張るよ!」

「本当に!ありがとう!よろしくね!」





女のあたしから見ても、ユウナは魅力的な女の子だった。

眩しいくらいの笑顔。いい子だと、すぐにわかった。

うーん。なんか女神様みたい…!
ああ!さすが神様ブラスカさんの娘だわ!

…そういえばブラスカさんもよく娘の話をしてたっけ。ユウナの話を。

ユウナは召喚士…この子も、覚悟をしているのか…。

目の前で笑顔を見せているユウナ。
でも、そう考えるとすごく怖くなった。

ビサイドでブラスカさんに聞かされた話は、脳裏に深く焼き付いてる。

止めたいと願った。

でも自分はその結末も知らぬまま、元の世界に帰ってしまった。
それが気がかりで、元の世界に帰った直後はスピラに戻らなきゃと願っていた。

でも…違う、それだけじゃない。
もう少し違う理由が、何かあった気がするんだけど…。

でもそれは思い出せなかった。





「これからの予定を説明してくれ。次はどこの寺院だ」





アーロンがルールーに尋ねた。

ユウナたちはビサイド、キーリカの寺院は通過してきた。
次に目指すのはミヘン街道、キノコ街道を抜けた先にあるジョゼ寺院。

召喚士ユウナ一行の旅には新たに3人のガードが加わった。



To be continued

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