I know.




柳生は物覚えの悪い人が苦手らしいが俺もその傾向にあり、何度説明しても解らないような奴には頭が痛くなる。


「違う、そこはDoesだ」
「だず?」


だが例外もある。赤也と三人称単数も解らないようなこの馬鹿、名前は何故だか可愛く面倒を見ている。因みに三人称単数は16分27秒前に教えた。更に言えば三人称単数は中学校1年生で習っているはずだ。おかしい。名前は現在高校2年生なのだが。しかも所謂お馬鹿な私立に通っているので習うことは中学校とほぼ同じ。実におかしい。


「お前に英語は無理だ。赤点を取らない程度に教えてやるから数学を勉強したほうがいい。数学は…、」
「数学はできるの」


ファイルの中から取り出された紙には100、97、99と書いてある。どうやら本当に得意らしい…が、これは数学というよりは算数に近い。果たしてこれを数学と呼んでいいものなのだろうか。英単語とにらめっこしている名前を見ながら思い出したことが一つある。小学生の時から兄のように慕われていて、俺もまた妹のように思っていた。姉もまた然り。
ある日名前の家にお邪魔したとき、夕飯を頂いた。献立は天ぷらに野菜。彼女の母親が作るものは油ものだろうとさっぱりしていてどれも美味しい。名前もそうだったのだがピーマンの天ぷらだけどうしても食べることができずに、ただただピーマンとにらめっこをした。と、いうのを思い出した。
時が経つのは早い。会った時はまだ小学生だったが俺は高校3年生、彼女は2年生になった。お互い、成長はしたが名前の頭はあまり成長しなかったようだ。名前の勉強を見れるのもこれが最後なのかもしれない。というのも大学が県外にあるので独り暮らしを始めるからだ。名前にそのことを告げると最初は泣きわめいて嫌だ、寂しい、と言っていたが最近では俺のお陰で自分の進路に大学進学が加わったと言っていた。勉強の嫌いな彼女から大学進学という言葉が聞けてとても嬉しかった。
もう会えないということはないが、今までみたいに易々とは会えなくなる。だとしたら誰が彼女の勉強を教えてやるのか、面倒をみるのか。誰であろうとその場所を譲る気はない。「名前、宿題だ。この意味が解ったら褒美をやろう。答えは誰にも聞いてはいけないし、それまでは勉強で解らないところがあれば俺に電話をしてこい。いいな?」
「わかったー!」


「Will you marry me?」


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