私が気を失ってから、綱手と自来也は大蛇丸と闘ったらしい。
三忍2人で戦うのだ。
勝った、と勝利を確信していたが、大蛇丸は結局殺せなかった…。
自来也がそう残念がっていた。


『……私も悔しいです
…カブトさんに負けてしまいました』


正直、大蛇丸がどれほど恐ろしい力を持っている人なのか、知らない。
けれど、十年に一人の逸材と聞くし、相当な能力者なのだろう。
そうだ、三代目を殺した男だ。
三忍、二人でも殺せなかった男だ。
初めて会った時の、背筋の凍るような寒さ。
光る瞳。
……そう、あの人は恐ろしい。
私はあの人の強さを知っているではないか。


「悔しくなんかない!
姫が生きてるんだ、それだけで私は十分だよ」

『でも、私、綱手様を…守れませんでした』

「…いいや、私が悪かった。
ごめん、姫」


強引に頭を押されて、気づけば綱手の胸の中だった。
そうだ、大蛇丸様がなんだ。
カブトさんがなんだ。
私には綱手様がいる。
綱手様が無事だったんだ。
それだけでいいじゃないか。


「…よし…。
木の葉に帰るか!」

『…はい?』

「木の葉に帰るか、っていったんだよ」

『…』


綱手の言葉の意味がわからなくて、自来也に助けを求める。
にこにこと笑っている。
…なんか隠してるな。


「今日から私は五代目火影だ。
姫、しっかり仕事に励んでくれよ!」

『…!
綱手様…!
はい、私、頑張ります』

「姫、綱手を頼んだぞ。
こいつは何かと酒を飲んだり、ギャンブルに…」

『それは私が一番知ってますから。
綱手様のことは任せてください』


自来也は一つ満足そうにうなずいて、親指を立てて、笑った。
姫もそれにこたえる。


「木の葉を頼むぞ」

「あぁ…わかってる」

「じゃあな」


自来也は手をひらひらと振って、のっそりと歩きだした。
姫は自来也の大きな背中が見えなくなるまで見送った。

ありがとうございました、自来也のおじ様。

そう心の中で呟いて。
綱手もじっと遠くを見つめていた。
それは自来也の背中だったのだ、それとも夕日だったのか。
とにかく、柔らかい笑顔で、ずっと遠くを見つめていた。

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