出会いは不法侵入



珍しく池袋に雪が積もった翌朝、折原臨也は、のんびり一人で街を歩いていました。会社へ向かうサラリーマンはせかせかと、登校途中の来良高校の生徒達は笑いながら、彼を追い越していきます。

時折、"あの"折原臨也だと気付いた人もいるのでしょう。ぎょっとしたような顔をして、彼から遠ざかろうと早足になります。


そんな朝の風景に、臨也は偶には早起きもいいものだ、と考えていました。通勤や通学は彼が愛すべき人間達の観察に適しているからです。

いつもならば仕事は昼過ぎからなのですが、今日はなぜか早く目が覚めてしまいました。そのまま家でのんびりしていても良かったのですが、雪のせいでしょうか。
楽しい、愉しいことが起きそうな予感がして早くに家を出てしまったのです。


鼻歌でも歌い出しそうな浮き浮きとした気持ちに包まれている臨也は、唐突に最愛の人に会いたくなりました。自分の思い通りに全くならない厄介な、けれど世界で一番愛おしい相手―――平和島静雄にです。


幸いにも、臨也は静雄の家の合い鍵は持っています。もちろん無断で作ったものですが。
無防備な彼は、よくテーブルの上に荷物を置いたまま、共通の友人―――新羅の家で居眠りをしています。そのチャンスを逃さずに、臨也はしっかりと合い鍵を製作したのです。

これまで何回か不法侵入を果たしていますが、寝ている時の静雄は全く臨也に気づきませんでした。
時折寝言を言うほど熟睡していて、いくら池袋最強でも心配になります。


「今日も可愛い寝顔をいっぱい堪能しようっと」

そんな不埒なことを言いながら、玄関の鍵を開け、臨也は土足のまま上がり込みました。靴を履いたままなのは、万が一、家主に見つかった時の用心です。

お邪魔します、などと呟きながら寝室の扉を開けた臨也は、そのまま、ピシリと固まりました。いつもなら愛おしい彼が寝ている布団が薄くなっているのです。

やばい、起きているのか?気付かれる―――臨也の頭の中で警鐘が鳴り響きます。
物音を立てないように廊下を後退しようとした臨也でしたが、枕の横に何かあるのが目に入り、好奇心に負け、そちらへ近寄りました。


そっと掛け布団を捲れば、そこには、金色の毛並みの小さな小さな子猫が丸くなって眠っていたのでした。




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