はじまりは雪の日
珍しく池袋に雪が降った日のことです。 平和島静雄は窓から見える淡雪をぼんやりと眺めながら、一人の男のことを考えておりました。
その男の名は折原臨也―――虫酸が走る程、静雄が憎んでいる相手です。そして、憎みながらも愛してしまっている相手でもあります。
相反する二つの感情に挟まれて、静雄はずっと悩んでいました。もう苦しくて苦しくて仕方なくて、最近では顔を合わせないよう、相手を避けるようになりました。
けれど、会わない寂しさが余計に思いを募らせていくのです。
しんしんと降り積もる雪のように溜まった想いは、やがて一つの願いになりました。
"気兼ねなく、何にも囚われることなく、甘えられる存在になりたい。愛してもらえる存在になりたい。"
誰に祈るでもない呟きは、強い強い言霊となって静雄に奇跡を起こしました。
次の日、目が覚めた彼は、なんと小さな子猫になっていたのです。 金色の毛並みに琥珀色の瞳の子猫は、偶々池袋に来ていた臨也に拾われ、新宿の折原家で一緒に暮らすことになりました。
これは、そんな子猫になった静雄と飼い主になった臨也の三日間の非日常なお話―――
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