1

こんな可愛らしい天使が存在していたなんて。

興奮気味で、屈託なく笑うルークを陰から見つめ続けているのは、いい大人の五人。時々は、呆れかえっている他のメンバーによって強制的にクエストに連れて行かされることもしばしばで。もう日課となりつつあるストーカー行為(本人達にとっては観察らしい)のメンバーがたまに減ったり、入れ替わったりとすることはあるけど。基本的には五人でルークを追っかけている。はあはあと荒い息をしながら。

「何と可愛らしいのでしょう…!!ああ、あんなに可愛い笑顔を他の男に見せるなど!」

曇った眼鏡が何度も下がるのか。その度に指で押し上げているのはジェイドだ。何事にも飄々として頭脳派だったはずなのだが。残念ながら見る影もない。

「あいつらが惚れたらどうするんだ!?ただでさえライバルが多いというに!」

ハンカチを噛み締めながらルークと共にいるクレスやロイドを殺気こめながら睨みつけるのは、名目上ルークの使用人であるはずのガイ。爽やか系だった笑顔はどこへやら。もはやちょっとした小姑のようだ。

「いや、しかし惚れない方がおかしい!まさしく天使が舞い降りてきたんだ!!」

超真面目な顔をして言うのはピオニー。こんなんでもライマの国王陛下なのだけど。視界が涙で見えなくなるくらい悲しきかな、全くそんなオーラもない。

「天使、ねぇ?オレには小悪魔に見えっけどな。オレを振り回す天才の小悪魔だな。……食いてぇ」

かっこつけているつもりだが、息は荒くもう残念なイケメンとしか言いようがないのはユーリだ。頼れる兄貴は、もうこの世に存在しないのか。そうなのか。

「ルーク様に手を出すのは許さないよ、ユーリ!だいたい僕だってあの滑らかな吸いつくされる肌に触れたい…!!だが、あの清らかなルーク様を汚すことなど!!」

何を力説しているのか。鼻息を荒くしながら興奮して語りだしているのは他国の騎士であるはずのフレンだ。

もはや呆れやドン引きを通り越して、可哀想な子を見るようなレベルである。本人達は気にしていないのか、気にならないのか。仲間達の哀れな視線など構ってもいないけど。そんなストーカーに付き纏われているというのに、ちっとも気付いていないルークにはある意味尊敬の眼差しを向けるしかあるまい。彼らからの好意をことごとくスルーするのは、白なのか黒なのか。計り知れないものがある。どっちなのかは皆様の判断にお任せするとして。

「やっぱ、うまい方がいいよな!」

ルークの言葉を聞き逃してなるものか、と全神経を集中させる五人。その能力をもっと他に有効活用してほしいものだ。例えばクエストとか。国の大事なお仕事もある。だが、悲しいことにそれらに使われることはほとんどないというのが現状だ。

「どうせ初めてなら、うまくねーと」

え、何が?と期待に胸が膨らむ。下ネタか?下ネタなのだろうか。ルークからのまさかの言葉に鼻息が段々と荒くなっていく。すでに気持ち悪い光景だが、もう日常茶飯事となってしまった光景に誰も気に留める人はいなかった。それもどうなのか。

楽しそうにそう話すルークに、同意するように頷くロイドやクレス。最初が肝心だよな、と話していることから、益々そっちのことかと信憑性が増すと聞き耳を立てる。

「ジェイドは…やっぱこえーな。フレンは何か一か八かって感じだな。ピオニー陛下は色々な意味で問題外だろ。ガイは面白味が欠けてつまらねーし。やっぱ大罪人が一番うまそうだな」

悔しいけど、と言いながらもどこか楽しげに笑うルーク。そんな彼の言葉に、撃沈している四人と、圧勝した一人が思わずガッツポーズをしている。それもしたり顔で。どうでもいいが、興奮気味で鼻息が荒く、目が血走っているその姿は残念すぎる。

「そうだね、そんな感じがするよ」
「だよなー。やっぱユーリだよな」

うんうんとルークの言葉に頷くクレスとロイド。この二人までユーリの味方なのか、とさらに落ち込む四人だが、勝ち誇っているユーリに我慢の限界がきたのか。なだれ込むようにルークへと突進する。

「「「「ルーク(様)っ!!」」」」
「うおっ!?あ?何してんだ、お前ら?……って、陛下まで…」

急に自身の名を呼ばれ、ビクリと体を震わすルークだが、すぐにその正体を知ると何故そんなに焦っているのかと首を傾げている。ああそんな姿もかわいい、じゃなくてだ。鼻血を噴き出しそうになるのを堪えながら、先程の言葉を撤回しようと詰め寄っていく。

ただ一人、妙に機嫌がいいユーリはゆっくりと歩いていたけど。

「初めてなら、怖い思いなどさせません!」
「僕だって全力を出します!賭け事の心配など…!」
「問題外なんて言うなよ。最初から最後までたっぷりと、な?」
「ルークの好みは俺が一番知っている!!俺に任せておけ!」


[ 2/3 ]

[*prev] [next#]
[戻る]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -