無事に安値の宿に泊まることが出来た。部屋にある姿見に映る自分の姿に、未だに慣れることが出来なかった。服装は黒を統一したものだが、それは別にいい。問題は、瞳の色は変わっていないのに、髪の色が黒くなったことだ。これだけで随分と人は印象が変わるものだと最初は驚いた

アッシュとの大爆発(ビック・バン)を回避するために、ローレライがしたことだ。今のルークとアッシュは、完全同位体ではない。アッシュとローレライは同じ音素振動数だが、ルークは違う。第一から第六までの音素を持つアッシュから少しずつ分けてもらって、音素振動数でも別人になれたのだ

変わったのは髪の色だけなのだから、みんなに会いに行けないことはない。きっとガイなら、気付いてくれるような気がする。でも、会いにいけなかった。また、拒絶されるのが怖い。異質な目で見られるのではないかと思ったら、会いにいくことが出来なかった

そして同時にジェイドと会うのが辛かった。旅の最中から、ずっと好きだった。何度、伝えようとしていたかなんて分からない。でも伝えたら余計苦しめるだけだから、何も言えずにいた。男が男から告白なんてされても嬉しくはない。なのに、きっと今会ってしまえば溢れだしそうなこの想いを伝えてしまいそうになるだろう。それも、恐怖の一つなのだ。気持ち悪いと背を向けられてしまったら、きっと自分は壊れてしまう。だから、誰一人とも会わずに一人で姿を消すことを選んだ。だけど

「……会いたいなぁ、ジェイド……」

今、何をしているのだろう。勝手な思いだけど、これぐらいは許してほしい


そして、英雄ルークが公の場に立つ日、ルークはフードを被り民衆の中に潜り込んだ。様々な人がいる広場の後ろにいたから、あまり目立つことはない

遠くに見えるアッシュの隣にはナタリアが。その少し離れた両サイドに、懐かしい顔ぶれがあった。その中には、少し痩せたように思えるジェイドの姿もあった。マルクト代表として来たのか、軍服ではあったけど関係者席というよりは民衆に近いところで辺りを見渡している。もしかしたらレジスタンスを警戒しているのかもしれない

前髪を下ろしたアッシュが、一歩前に出る。演説でも始まるのかと思った、その時であった

「な……っ!?」
「これは……っ!?」

突然彼らの下に譜陣が現れ、光に包まれた。民衆がパニックになる中、肩を震わせながら現れた複数の人間達がアッシュらの前に向かった

「あーはははは!気付かなかっただろ?これは、我がレジスタンスが考案した新たな譜陣だ!!そう簡単には見破れまい!さて、取引といこうかキムラスカの陛下、殿下、そして英雄ルーク!命が惜しいだろ?死にたくはないだろ?なら、許しを乞え!そして、預言を復活させるのだ!!もし、我々の要求を拒否するのならば、我々と共に滅べ!我々は命を惜しむことはしない!なぜなら、預言が絶対の理だからだ!!預言を否定する者など、滅ぶがいい!!」

これが、レジスタンスか。噂でしか聞いたことがなかったが、彼らがそうなのか。リーダーではないようだが、それなりの幹部なのかもしれない

「おい、ジェイド。これどうにかなんないのか?」
「どうにか出来るなら、とっくにしていますね」
「……恐らく、あの譜陣が鍵だわ」

民衆の隙間をかいくぐって、どうにか回り道をしながら彼らに近付いたルークの耳に、ガイとジェイド、ティアの会話が聞こえた

「そうですね。ここからでは動けませんが、どうも四隅に繋がっているあの音機関みたいものを一つでも壊せば、この譜陣は消えると思います。とはいっても、身体だけでなく譜術も封じられているようで身動きがとれませんから、違う方法をとるしかありません」
「違う方法って?」
「説得ですかねぇ」
「説得で奴らが納得するわけないだろ!真面目にやってくれ」

私はいつでも真面目なんですけどね、とこんな状況だというのに呑気なことを言うジェイドに、相変わらずだなと苦笑してしまいそうだ。ルークは、レジスタンスに気付かれないように慎重に回り道をしながら一つの音機関に辿り着いた。周りはまだパニック状態であり、多くの民間人が残っていた。ルーク一人が動いても、気付かれることはない

どう壊せばいいか分からないので、内心で音機関好きな友に謝罪してから剣を突き刺す。ブスブスと壊れる音がして、譜陣は見事に綺麗サッパリ消えてしまった

「な、何……!?」
「譜陣が消えただと!?」

動揺しているレジスタンス全員を、仲間達が捕まえていた。あの状態では逃げられることはないだろう。次々とキムラスカ兵が近付いてきたし、もう安心だろうとルークもまた民衆に紛れて逃げ出そうとした

「一体、誰が……」

そんなジェイドの呟きが聞こえた気がして、思わず振り向いてしまった。さっさと逃げれば良かったと後悔したのは

「―――――っ!?」

目を見開いて驚くジェイドと、視線が重なった瞬間であった

[ 4/18 ]

[*prev] [next#]
[戻る]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -