「あ、ルーク!!こっちです」

ホールに着くと、手をブンブンと振り回しているエステルと、よっと片手を上げるユーリの姿があった。その隣には、ルークとフレンの後ろの状況を見て呆れ果てているアンジュの姿がある

「これで揃ったわね。じゃあ、ユーリさん、フレンさん、ルーク君、エステル。気を付けていってらっしゃい」
「ちょい待ち!!これは何のクエストなのよ、アンジュちゃん」

アンジュが後ろの連中を無視して、四人を送ろうとしているのをゼロスが止める。多分だけど、ユーリとルークが一緒に行くのが気に食わないのだろう

「あら、そんなにルーク君を追いかけているわりには、何も知らないのね」

グサリ、とくるような言葉をニッコリと笑ってアンジュは言う。ジェイドはどうか知らないが、その他連中は傷ついたようだ

「ふふふ、冗談よ。四人には、買い出しをお願いしているの。ロックスは他のことで手がいっぱいだから。買い出しだったら、ルーク君にお供は必要ないでしょ?だから、あなた達は他の仕事をしてもらうから、安心してちょうだい」
「い、いや。俺様もルーク様と買い出しに……」
「あら、そんなにゼロスさんは仕事をしたかったの?それは知らなかったわ。なら、これなんてどう?魔物退治1000匹。やりがいがあると思うわ。同行者は……そうね。傍にいるジェイドさんとレイヴンさんとガイさんにお願いしようかな。ゼロスさんとレイヴンさんは治癒術もっているから、大丈夫でしょ?」

ニコニコと笑ってはいるが、目が笑っていないアンジュ。呆然と見ていると、肩をポンと叩かれた

「今のうちに行くぞ、ルーク」

連中の意識がアンジュに向いている今こそチャンスだと、ユーリはルークの手を握って、外へと出た。彼らは追ってくる気配はなく、アンジュが足止めをしているのだろう

楽しげなエステルと話すフレン。ルークの手を握ったままのユーリ。二人きりでないことに落胆するが、贅沢はいってられない。あの連中よりはエステルやフレンの方が断然マシだし、何よりユーリがいるのだから。でも

(二人だけの……デートだと思ったのにな……)

何か、どんどん乙女思考になるようで自分で自分が嫌になる。素直にはなれないが、本当に楽しみにしていたのだ

「じゃあ、ユーリ、ルーク、楽しんで来て下さいね」
「帰宅時間は守ってくれよ、ユーリ。ルーク様をあまり困らせないように。それと……」
「あー、はいはい。分かった、分かった」

街に到着すると同時に、エステルとフレンとユーリのそんな会話が始まった。何がなにやらさっぱりなルークはただ黙って聞いていた

「全く、君という奴は。ルーク様、二日間楽しんできて下さいね。明日、またここでお会いしましょう」
「へ?あ、あぁ……?」
「おー、じゃーな。助かった、サンキュ。そっちも楽しんでこいよ」

そう言うとユーリはルークを引っ張って、二人とは反対方向へと歩いていく。エステルとフレンは驚きもしないで見送っていた

「え?は?どういうことだよ?」
「どうもこうも、あっちもオレらもデートだよ。まさかお前、このまま一緒に行動するかと思ったのか?」

うっ、と言葉を詰まらせるとユーリは盛大に溜め息を吐いた。だって四人で買い出しだと思っていたから、とアンジュの言葉を疑いもしなかったのだ

「何で初デートにあいつらと行かなきゃいけねーんだよ。向こうだって最近付き合い始めたんだから、二人っきりになりたいだろーしな」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」

とんでもない発言を聞いて、ルークは人通りがあるというのに叫んでしまった。ジロジロと視線が集まるが、それどころではない

「そりゃ、知らねーだろうな。ギルドの中ではオレとリタとジュディとおっさん、アンジュと後は恋の話が好きな奴らぐらいじゃねーの、知ってんの」

全然気付かなかった。鈍感と周りからはよく言われるが、本当にそうなんだと初めて自覚するような気がする

「つーか、よく買い出しなんてアンジュがOKしたな」

しかもこのメンバーだなんて、よくも快く送り出してくれたものだ。そんな疑問に、ユーリはさらりと答える

「あぁ、これオレからの依頼になってるしな」
「……は?」
「買い出しは本当だぜ?ロックスにもう少しで足りなくなるものをピックアップしてもらったから、それを買っていけば、依頼完了。それはフレン達と山分けだから、大した量じゃねーよ。明日帰りに買っていけばいいことだしな。アンジュなら大丈夫。ヘルシーなお菓子を後で作るってことで、足止めも買ってくれたからな」

この男は、よくもまぁこんなことを思いつくものである。ルークはお返しを用意することで頭がいっぱいで、こんな状況になると予想していなかったのに。やっぱり年の差なのか、それとも経験の差なのか

「せっかくのお前と二人きりなのに、邪魔をされたくねーから」
「……っ!」

ふっ、と笑うユーリに、ルークはバカじゃねーのと返した。顔を俯かせて、真っ赤になっている頬を隠そうとした。はいはい、と返事をするユーリにはバレバレなんだろうけど


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